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6 それが本当ならば

「求婚……!」


 ルーラは顔色を変えざるを得なかった。

 もしそれが本当なら、今もっとも力を持つ国であるカルサンドラを出し抜いて、エルマルがレティシアを西に嫁がせようとしていることになる。

 

「西が今回の国交を結ぶことに全面的に支持したのは、エルマルとつながったことでカルサンドラから怒りを買う可能性は低いと判断したんだろう?」


「え、ええ、そうよ。カルサンドラとエルマルは隣接していないし、特別深いやりとりもないと……だからエルマルとの国交を結んでも、カルサンドラと戦争になるとは思えなかった。なにより、まさかカルサンドラが西全土を敵に回そうとするなんて思わないし……」


 そうだ。そうなのだ。だから大丈夫のはずだ。

 そう落ち着き始めたルーラだったが、楽師はそのように楽観的には考えていないらしい。顔色は楽師もあまりよくない。


「カルサンドラの国王は欲したものを得るためには手段を選ばない独裁者としても有名だよ。そして、エルマルの王女にご執心だ」

「そ、そんなに?」

「うん。何度も手紙で求婚していると聞いているよ。結婚は秒読みじゃないかなんて話も街ではされていた」

「まさか、そんな」


 ルーラはもはや真っ青になっていた。

 後ろに控えるマリーの顔色も青い。


「事実かどうかは、君のほうで調べてみておくれ。でも僕は、この国を気に入っているからね、カルサンドラと揉めてほしくはない。だからこれは僕が見た事実だと言っておこう」

「ええ、ええ。疑うわけではないわ。ありがとう」


 ルーラは震える声でなんとか礼を言う。

 こうしてはいられない。すぐにでも事実確認を行わなければならないだろう。

 このことを陛下は知っているのだろうか。そしてグレン様は?

 

「ごめんなさい楽師さん。私ちょっと用事を思い出したわ」

「ああ。そうかい。それじゃあ、またねお嬢さん」

「ええ。本当にありがとう」


 ルーラは急いできた道を戻る。後ろをマリーがついてくるのが気配でわかった。

 小走りになりながらルーラは自分がどうすべきか考えていた。

 王に知らせて調査してもらう? いいや、もし事実でなかった場合、エルマルとの交渉に問題が発生するかもしれない。同じ理由でグレンにも話せない。

 父は今日会議があるから夜遅くなる。もしかしたら城に泊まるかもしれない。そうなれば話はできない。父の部下を無断で借りるしかない。そして調べてもらうしかない。いや。それすらも危険だ。どこから話がもれて、公爵が国益をさまたげようとしているなどという話が生まれるかわからない。

 本当はカルサンドラに向かうべきだ。しかしそんな時間はないのだ。どうしたらいいのだろう。


 その時、ルーラはジョエルの存在を思い出した。

 東へ留学したことがある。その留学先はカルサンドラだったはずだ。

 ルーラは急いで屋敷に戻ると、ジョエルへ手紙を書いた。今すぐに会いたいという内容だ。本当の内容は誰にも知られてはいけない。万が一読まれた時のために真実はかけない。内密に。そう記入して、手紙をマリーに預けた。急ぎできたことが分かれば、すぐに話ができると思ったのだ。


 


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