1。「ロボライブ」
1。「ロボライブ」
特に何も無い、分かれ道すらもない1本の道を、1台の車が走っている。
「俺ハ運び屋。さっき出た国ニ荷物ヲ届け終わって、次の国二帰るとこ。」
夜、月明かりに照らされながら走っている車は、全面赤色、側面に1本の茶色い横線が入っていて、埃まみれでくすんでいる。荷台が着いているが、今は何も乗せていない。
「俺ハ、人間二作られた運搬用の、ロボットだ。」
車の運転手であるロボットは、助手席に置いてある、高さ座席半分くらいのカゴの中にいる小さな生物に話しかけるが、生物はじっと壁を見つめている。方向的には前方だが、背格好的にどうやってもフロントガラスを拝めないので、ただひたすらに壁を見つめている。
「ちなみに名前ハ-ニヲハ-だ。どうでもいいことだけどな。って、聞いてる?返事くらいして欲しいよ俺。」
「クエエエ」
どの言葉に反応したのか、急に小さな生物は、立派なくちばしを上に向け、ついでに羽もばんざいの形にして反応する。
「じゃあ、まずは名前ヲつけてやろう。」
「...」
「え、つけて欲しくないのか?」
「クエエ」
「そうかそうか、つけて欲しいか!じゃあ、お前の名前ハ今日から-トーリ-だ。」
「クエ」
「やっぱりお互いヲ知るにハ自己紹介が一番いいと思うんだ。そうだろ?だから、まずハ俺から。」
「...」
トーリと名ずけられた小さな生物と、運搬用ロボットを乗せ、車はまだ何も無い道を走り続ける。
「俺たちロボットハ人間ベースに作られてるんだ。なにか不調が起こると俺たちハ働きたくない。と感じるし、そう発する。燃料切れが近づくと、お腹がすいたと感じるし、危機管理の面かららしいが、死二たくないとも思う。好き嫌いもある。間違った燃料ヲ飲まないようと、お前ヲ飼うためだってさ。」
「...」
「そうかいそうかい、いいぜ、これハお前と俺の勝負だ。次、口ヲ開けた方が負け。いいな?って、おいおいおい」
ガシャガシャガシャ
今まで壁を傍観していた檻の中のトーリが動き出す。そのくちばしは檻の柵を啄むが、檻に影響はない。しかし、ガシャガシャという音は隣に座るロボットには効果てきめんであった。
「あー、そういえばな二か言ってたな、なんだっけか。あ、そうだこれだ。」
檻の中から何かを訴えるトーリの意図を察して、ロボットは右手を使って人で言う鼻の位置にあるスイッチを押す。
かしゃ、ウィーン
ハンドルを握っていた左手の手の甲が開き、中からお魚の形をしたクッキーを持った小さな手が出てくる。手はそのままどんどん伸びていき、隣にいるトーリの、空いたクチバシへと持ってかれた。
「クエクエクエ」
「もし、彼らが何かヲ訴えて来たらそれハ空腹です。お魚クッキーヲ上げましょう。か。まぁクッキーひとつでこの退屈な道の話し相手がいるならいいのか。」
話し合えているかどうかは定かではないが、ロボットの調子は良く見える。
そしてクッキーを食したトーリももちろん満足気である。
「クッキーひとつ。か、まぁ俺もお前のこと言えないんだけどね。俺の楽しみもひとつだし。ひとつで充分。」
「さ、着くぞ、お前ハ車の中でお留守番だ。いい子二しろよ。」
「...」
特に何も無い、分かれ道すらもない1本の道を、1台の車が走っていると、道沿いに、窓の1つ付いた、やたら天井の高い1軒の建物が見えてくる。
ニヲハは駐車場に車を停め、看板にBARと書かれた建物入っていった。
「マスター、3日ぶり!」