第731話 隠忍
時間遡行が2つ?
いったい、どうして?
何があったんだ?
他の項目も急いで確認を。
有馬 功己
レベル 9
20歳 男 人間
HP 243(+32)
MP 299(+33)
STR 348(+28)
AGI 248(+25)
INT 372(+27)
<クエスト>
1、 人助け 済
2、 人助け 済
3、 魔物討伐 済
4、 少数民族救済 済
5、 貴族令嬢救出 済
6、 兇神討伐 済
7、 神山守護 済
8、 貴族令嬢救命 済
9、 領主令嬢救命 済
10、邪神討伐 済
<ギフト>
異世界間移動 基礎魔法 鑑定改 多言語理解 アイテム収納
時間遡行(2刻)2
<露見>
地球 1/3 、 5(点滅)/3
エストラル 1/3 、 2(点滅)/3
レベルも各種ステータスも以前のまま。
相当数の異形を討伐したばかりなのに変化がない。
つまり、こっちの世界での行動はまったく反映されないと?
いや……そうとも限らないな。
だったら。
と、そこはまた後日にでも考えるとして。
次はクエスト欄だ。
1から順番に……。
なっ、10だ。
クエスト10が気づかぬうちに追加されてる。
しかも、達成済み?
討伐クエストが達成済みになってるぞ。
けど、どこで?
いつ達成したんだ?
邪神なんてまったく覚えがないのに?
まさか!
窪地での異形討伐?
あの群れの中に邪神が潜んでいたのか?
それを討伐してしまったのか?
「……」
いや、でも、どれもこれも取るに足りない相手だった。
兇神エビルズマリスに比べたら格下もいいところだった。
あの中に邪神なんて存在がいたとは思えない。
が、他に思い当たることも……。
待てよ。
そもそも、こっちの世界を対象としたクエストなんて課されるものなのか?
1~9のクエストは全てあちらの世界のものだったのに?
10番目でいきなり世界を変えてきた?
2けただから?
なら、ひょっとして、2つの世界には深い関係があるのでは?
「……」
分かるわけないよな。
けどまあ、悪くない。
それどころか、今の状況で時間遡行が2つ使えるなんて最高じゃないか。
と考えながらも、どうしても目がいってしまう。
露見欄に。
増加した数値、点滅する5という数字に。
「……」
断ち切ったはずの邪念が再び浮かび……っ!
だめだ、だめだ。
今考えることじゃない。
まずは武上。
露見はあとでゆっくり考えればいい。
それに、あれだ。
いまだ確定0だってことを喜ぶべきだろ。
「……ふぅぅぅ、ふぅぅぅ」
深呼吸をひとつ、ふたつ。
これで露見を頭から消し去って……。
「ため息なんかついて、どうしたの?」
「有馬くん、まだ探し始めたばかりだよ」
幸奈、里村。
「……大丈夫。問題ない」
「ほんと?」
「ああ、気分を変えたかっただけだからな」
「ならいいけど」
ということで、捜索に集中しよ……。
「っ! 幸奈、里村、さがれ!」
「「えっ!」」
「古野白さんもこっちへ!」
「来るの!?」
「かもしれません」
確定じゃない。
けど、この感じには覚えがある。
「武上くんも?」
口を開こうとした俺の前方。
5メートル先の空間が裂けていく。
そして……。
「ほう」
姿を現したのは銀髪じゃなく黒髪。
「揃ってるな」
その右手に武上の頭髪を掴んだ空間異能者だ。
「……」
俺の隣には古野白さん。
数歩後方に、幸奈と里村。
そして、前方には武上と空間異能者。
「「「武上くん!」」」
髪を掴まれた武上の目は閉じられ、その全身は弛緩状態。
されるがままに引きずられている。
「返事して、武上くん!」
一歩前に出た古野白さんに対する武上は無言。
まったく反応がない。
意識が戻る気配もない。
「心配か?」
当たり前だ。
「当然でしょ」
「ふっ」
ここから見る限りでは、武上の五体は無事。
大きな外傷は見られないし出血の痕跡もなし。
それなのに……。
胸騒ぎが止まらない。
「嗤ってないで、その汚い手を離しなさい!」
さらに詰め寄る古野白さん。
俺も不安を抑えて前へ。
「今すぐ武上くんを返して!」
「ふふ、返してほしいなら」
口の端を歪めた空間異能者が武上の頭髪を引っぱり持ち上げていく。
「ちょっと!」
「返してやろう」
そのまま古野白さんに向かって投げつけてきた。
「っ!」
地面すれすれで古野白さんが抱きとめるも、バランスを崩し片膝をついてしまう。俺はそんな2人を護れるよう体勢を整える。
が、空間異能者は動かない。
仕掛けてこない。
ただ嫌らしい笑みを浮かべるだけ。
こいつ、何を企んでる?
「古野白さん、武上を連れて後ろへ」
空間異能者の狙いは分からない。
それでも、2人が離れるべきだってことは分かる。
「早く!」
古野白さんも分かっているはず。
なのに、なぜ動かない。
「っ! 武上くん?」
何だ?
「武上くん、武上くん!!」
どうした?
「……嘘」
まさか!
「嘘よ、嘘でしょ」
「「武上くん!」」
距離を取っていた里村と幸奈が近づいて来る。
古野白さんは動かない。
「そんな……」
「武上くん……」
俺は空間異能者と対峙したまま。
振り返れない。
振り返りたくない。
「返事して! 返事しなさいよ!」
「「……」」
駄目だ。
そんなこと!
「武上くん……どうして……」
「「……」」
けど、もう……。
「おまえ、あの地を脱することができたんだな」
すすり泣く声が聞こえる。
「やはりただ者じゃない、か」
抑えきれない嗚咽が耳に入ってくる。
「どうした? ショックで言葉も出てこないか?」
俺も……。
「気にすることはない。あの世ですぐに会えるんだからな」
「……」
「おい、おい、いつまで無視するつもりだ?」
「……」
「無言で逝くのはおすすめしないぞ」
うるさいやつだ。
「……おまえがやったのか? それとも、異形か?」
「やっと口を開いたと思えば、そんなことか」
「答えろ」
「それを聞いてどうする?」
「仇を討つ相手を知りたいんだよ」
腹の奥底から込み上げてくる赤黒い感情。
こいつを吐き出す先を知らなきゃならないんだ。





