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第729話 推測



「のぼれた! のぼれたよ!」


 それはまあ、階段を造ったんだからな。

 のぼることはできるだろ。


「やっぱり魔法はすごいなぁ、何でもできるんだもん」


「……何でもじゃないぞ」


「そうかなぁ。他の魔法使いと違って功己なら大抵のことはできると思うんだけど?」


 確かに、詠唱頼りの受動的魔法使いに比べれば俺の方が自由度は高い。

 ただ、そうは言っても明確な限度は存在する。何でもできるわけじゃない。

 と、こんな話よりまずはストーンウォールを全て消し去らないとだ。




「魔法の痕跡も消せたし、あとは走るだけだね」


 その通り。


「幸奈、こっちへ」


「うん……えっ!」


 近づいてきた幸奈を片手で抱き上げる。


「ちょっ、功己!」


 右手で強く固定して。


「わたし平気だから」


「時間がもったいない。このまま皆のもとまで走るぞ」


「嘘……」


 戸惑う幸奈を胸に白砂を蹴る。

 まずは、すぐそこに見える2つ目の砂壁だ。

 こいつを越えなきゃ話にならない。


 2メートル強か。

 この高さなら。


「ストーンウォール!」


 幸奈を抱えていても石段1つと強化脚で何とかなるだろう。


「しっかり掴まっとけよ」


「えっ、ええぇ!?」


 左足踏切で跳躍。

 続いて石段に着地した右足で。


 ダンッ!


 再跳躍。


「……飛び越えちゃった」


 この先に砂壁はもう存在しない。

 砂浜を走り抜け道路に出れば、そこに皆がいる。



「ね、ねえ……こんなに急ぐってことは危ないの?」


「……」


「古野白さんたち、無事なんだよね?」


「……ああ」


 現時点の感知ではまだ平気だ。

 が、敵はあの異形。

 古野白さんと武上より高いステータスを誇り、複数のスキルを持つ邪狼狗相手の戦闘が一筋縄でいくわけがない。


 このまま戦い続ければ……ん?

 2人の位置がずれてる?

 もっと、エントランス寄りにいたんじゃ?


「……」


 今さら位置なんてどうでもいいことだな。

 2人が無事なら何の問題もない。

 だから、頼むぞ。

 俺が着くまで無理してくれるなよ。



 よし。

 もう砂浜を抜ける。

 そこを曲がれば2人の姿も目視できるはず。


 ……なっ!?


「きゃあ!」


 どういうことだ?


「功己、急に止まると危ないよ」


「……消えた」


「えっ?」


「武上が消えたんだ!」


「そんな! さっきまでいたんだよね?」


「ああ、感知上では間違いない」


「古野白さんは?」


「そこにいる、古野白さんも里村も消えてない」


「武上くんだけ消えたの?」


「……そういうことになる」


「消えたのは武上くんとあの異形なんだよね?」


「ああ」


「ということは……」


 邪狼狗は転移などの空間系スキルを持っていないはず。

 ならば。


「異形になる前の空間異能者の力を使ったのかもしれない」


「異形が異能者の力を?」


「はっきりとは分からないが、現時点ではその可能性が高いだろうな」


「両方使えるなんて、そんなの卑怯だわ」


「あくまでも可能性の話だぞ」


 当然断定なんてできない。


「そうだけど……」


「まっ、ここで話していてもどうにもならないな」


 驚きで思わず立ち止まってしまったが。


「まずは、古野白さんたちのもとまで急ごうか」


「うん、そうだね」


 幸奈を抱えたまま砂浜を抜け舗装された道路を走る。

 感知を続けながら、対策を考えながら駆ける。


「「……」」


 時間にするとわずかなもの。

 なのに、焦りが時間感覚を増幅してしまう。





 ようやく見えてきた。


「ねえ、功己、そろそろ」


「……ああ」


 幸奈を下ろしたところで。


「有馬くん!」


「幸奈さん!」


 こっちに気づいた古野白さんと里村が向かってくる。

 感知通り、2人とも無事だ。

 武上の姿は……ない。


「どうしてここに?」


「あの砂壁をのぼったの?」


「まあ……」


 砂壁の件は軽く流して。


「それより何があったんです? 武上は?」


 今は状況を確認したい。

 俺が感知で知り得たことは口に出せないから、邪狼狗との遭遇以降のすべてだ。


「それが……」




 古野白さんが語った内容はほぼ想像通り。

 感知内容とも合致していた。


「状況は概ね理解しました。それで、その異能者は」


「和見家の地下に位相空間を造り出したあの空間異能者よ」


 古野白さんも認識できたんだな。


「多分……武上くんは位相空間に連れ去られたんだと思う」


「「……」」


「ただあいつ、空間異能者の姿に戻る前の姿は別物だった。銀髪紅眼だったけど顔が違ったの」


 そっちは問題じゃない。

 あれは俺の知る邪狼狗自身の顔だったし、何より今回は鑑定で個体名も表示されたんだ。どう考えても同一の異形としか思えない。


「彼の中身が別の異形だとしたら……」


「いいえ、その可能性は薄いと思います」


「どうして?」


「さっきは古野白さんの説明にあった認識阻害の影響があったのではないでしょうか。それに、以前の位相空間内でも認識を邪魔されていたかもしれませんし」


「私の勘違いってこと?」


「勘違いというより認識不全では?」


「……」


「そもそも、空間異能者が同一人物で中に宿す異形だけが違うなんて可能性は限りなく低いはずですよ」


 と説明したものの、実のところ容貌が異なっているのはおかしいことじゃない。

 俺たちがあの位相空間内で見た姿は邪狼狗を中途半端に宿している状態だったのだから。


「……そうね」


 ところで、今さらだとは思うんだが。

 邪狼狗については以前古野白さんに説明していなかっただろうか?

 あの位相空間で軽く話したような……?

 それとも、過去並行世界の古野白少女たちと混同してるだけ?


「……」


 駄目だな。

 どうにも上手く思い出せない。



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