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第724話 捜索



<古野白楓季視点>




「しっかしよぉ、有馬は単独であの数の異形を倒したってのに、こっちは里村捜しに2人がかりっつうのもなぁ」


「しょうがないでしょ、彼は特別なのだから」


「特別って、こっちは異能持ちであいつは普通人なんだぞ」


「……」


「まっ、オレは怪しいと思ってっけどよ」


 武上くんが疑うのも当然。

 今回もこれまでも有馬くんは私たちにその力量を嫌というほど見せつけてきたのだから。


「なあ、古野白、ほんとはおまえも疑ってんだろ?」


「……かもしれないわね」


「なんだ、はっきりしねえなぁ」


「当たり前よ、何の証拠もないのだから」


 有馬くんが異能者でないことは、まず間違いない。

 けれど、特別な力の持ち主であることも確か。

 問題は、その力が何なのか?


「んなもん、オレたちが見てきた有馬の実戦で充分だわ」


「それは証拠とは言えないの」


「相変わらず古野白は頭が固えよな」


 あなたが緩いだけでしょ。


「で、ほんとのところどうなんだ? 研究所はどう考えてる?」


「……さあ」


「聞いてんじゃねえのか?」


「それこそ、はっきりとは聞いてないわね」


「ってことは、研究所も有馬をつかみ切れてねえか、あるいは秘匿」


「……」


「そんなら、ここで1つオレが断言しといてやるぜ。有馬は間違いなく普通じゃねえ。あいつは異能を隠し持ってる、ってな」


 だから何度も言ってるように、異能だけはないのよ。

 ただ……。


「もし異能者でないとしたら?」


「そりゃ、漫画に出てくるあれしかねえわ」


「あれって?」


「超能力者とか、魔法使いとか?」


「……」


「異星人とか、異世界人とか? そんな感じじゃねえの」


「武上くん、それ本気?」


「おうよ。つっても、オレは異能者だと思ってるぜ」


「……」


 有馬くん。

 ほんと、あなたは何者なの?





「って、ここにもいねえ」


「……」


「こっちもだ。ちっ、里村のやろう、どこ行きやがった?」


 外装内装、さらには各室の設えまで特別なこの施設。

 決して捜索に向いているわけじゃない。

 それでも、私と武上くんが本気を出せば数分で1階すべてを見回ることもできる。


「1階はもうそこだけか」


 残っているのは奥の保管庫のみ。

 その中に里村くんがいない場合は……。


 ガチャッ。


「里村、いんのか? いるなら返事しろぉ」


 返事はない。


「里村ぁ」


「……」


「駄目だな、ここにもいねえ」


「そうみたいね」


「しゃあねえ、地下も調べっぞ」


 この施設の客室は2階以上、1階の半分と地階は倉庫や保管庫それに関係者の休憩所や管理室として使われている。だから、1階以外で里村くんがいる可能性が高いのは地階になるのだけれど。


「行き違いになってるかもしれないわ。一度エントランスに戻りましょ。地階はそれからよ」


「里村と行き違いになんてなってねえだろ」


「いいから、さあ」


「押すな、おい、古野白……ん? まさかあれか? 異形に続いて人の気配も分かるようになったのか?」


「残念ながら、それはできないわ。そもそも今のわたしは異形の感知すらあやしいものなのよ」


「そうかぁ?」


「そうなの」


 有馬くんにコツを教えてもらったおかげで以前より異形を感じやすくはなったけれど、いまだ彼の精度の足もとにも及んでいない。対象が人となると、さらに酷いもの。稀に微かにほのかに感じとれる程度なのだから。


 ただ、今はちょっとエントランス方向に……。


「とにかく、先にエントランスに向かうわよ」


「わあったよ」


 と言いつつ足が重いままの武上くんを押して保管庫をあとにする。


「……」


 足早に進む廊下はさっきと同じ。

 里村くんどころか、施設関係者の姿ひとつ見えない。

 異形が突然現れる感じもしないし、もちろん野良の異能者もいない。

 静寂に包まれた廊下に響くのは武上くんとわたしの足音だけ。


 あれ?

 ここまで静かだったかしら?

 今朝や昨日は?


 何だか嫌な感じがする。




「それにしても、あれだなぁ」


 武上くん?


「ちっと静かすぎんだろ」


 あなたも違和感を覚えてるのね。


「って、従業員がいねえからじゃねえか。あいつらサボってばかりかよ」


 違和感じゃなかったの?


「そう思わねえか、古野白?」


「……サボりではないし、従業員でもないわ。彼らはこの島に派遣されている研究所員よ」


「同じこった」


「違うわよ。彼らは一時的にここにいるだけ。そのついでに私たちのサポートをしてくれてるだけなの。だから、食事の用意と清掃以外はすべて彼らの時間なの。それを私たちが奪っちゃいけないわ」


「これはサボりじゃなく、そいつらの権利だっつうのか?」


「ええ」


「なら、今は権利を行使して2階で休憩中かよ?」


「休憩中かもしれないし、訓練中かもしれない。あるいは研究中かもしれないわね」


「何でもありじゃねえか」


「何でもじゃないでしょ、って、エントランスが見えてきたわ」


 嫌な予感は?

 里村くんの気配は?


「……」


 大きなガラス越しに微かに感じる。

 これは多分、異形じゃない。

 だったら、人?

 里村くん?


 分からない。

 でも、もう数歩距離を縮めれば……。


 ん?

 その気配がこちらに近づいて来る。

 私たちに気づいたの?


 自動扉を隔てたそこに、もう。

 

「おっ、いるじゃねえか」


「武上くん、気をつけて!」


「あ? 気をつけるも何も、ありゃ里村だろ」


 武上くんの言葉通り、私たちの視界に入ってきたのは。


「……武上くん、古野白さん?」


「里村ぁ、おまえどこ行ってたんだ?」




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