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第723話 砂壁の上



 異形たちを圧倒すること数分。

 残る個体数は既に10を切っている。

 つまり今はもう、すぐにでも討伐完了できる状況ってことだ。


 もちろん、後ろの石箱は無事。

 幸奈も万全そのもの。

 何の問題もない。


 ダンッ!

 ガッ!


「「ァァァ……」」


 シュッ!

 ダシュッ!


「「ギャアァ……」」


 問題ないどころじゃないか。

 こいつら、手応えがなさすぎる。

 最終盤のこの局面で一段と動きが鈍くなるとはな。


「「「ァァァ……」」」


 連係など、もう影も形もない。

 さらには気配まで弱まっている始末。

 正直、哀れに思えてしまうくらいだ。

 まっ、だからといって手を緩めるつもりもないが。


 ドガッ!

 シュッ!


 これで残るは3体。

 蜘蛛型、鬼型、獣型のみ。

 さあ、次で終わりにしよう。


「「「……」」」


 歩を進める俺から距離を取ろうと後退する異形たち。

 3体の目には恐怖が浮かんでいる。

 その目を後方に向け、救いを求めるように壁上に視線を……。


 待て!

 邪狼狗の気配が消えてるぞ!?


 どういうことだ?

 どこに行った?


 即座に感知を展開。

 壁上の浜を隈なく感知の網で覆ってやる。

 そのまま宿方面へと網を這わせ、っと!


 いた!

 宿のエントランス付近だ。

 古野白さんと武上の気配もすぐ近くに。


 これは、戦闘が始まってる?

 いや、まだなのか?


「功己?」


 邪狼狗も古野白さんも武上も、誰も動いていない。

 ということは、戦闘直前の状態?


「どうしたの? どうして止まってるの?」


「……幸奈」


 ああ、そうだよな。

 ここで手を止めるのはおかしいよな。


「邪狼狗が壁上から消えた。今は古野白さんたちと対峙している」


「えっ!?」


「まだやり合っていないと思う、が、すぐにでも戦闘状態に入るだろう」


「じゃあ、里村くんは?」


「距離をとってるようだ」


「なら、大丈夫だよね?」


「ああ」


 古野白さんと武上が倒されない限りは。


「2人は? 勝てる?」


「……」


 さっきも考えたあの2人と邪狼狗との戦い。

 実際の戦闘直前ともなると、勝利のイメージなんて湧いてこない。


「勝てるよね?」


「……分からない」


 こっちには操炎と身体強化の異能者が2人いる。

 当然、かなりの戦力だ。

 ただ、邪狼狗も前回とは違う。

 AGI値なんかは大幅に向上している。

 未知のスキルも増えた。

 そんな相手にあの2人で……。


「だったら、助けに行かなきゃ」


「……だな」


「あっ、でも、壁が」


「砂の壁、か」


「うん」


「問題ない」


 事ここに至っては、やむを得ないだろう。

 古野白さんと武上は見捨てていい相手じゃないのだから。


「あれは土魔法で階段を作って上る」


「……」


「露見については気にしなくていい」


「けど!」


「大丈夫だ。その石箱同様、発動の瞬間を目撃されなければ即確定まではしない」


 これまでの経験上、魔法の痕跡を見られただけなら点滅で留まってくれるはず。

 それにそもそも、今点滅している数の中には古野白さんと武上が含まれているはず。だったら……。


「ほんとに?」


「ああ」


 今もステータス表示の中で不気味に点滅を続ける露見数。

 既に限度数は超過状態。

 なら、もう、そこは気にしても意味がないだろ。

 注意すべきは、この点滅を露見確定にしないこと。

 それだけだ。


 とはいえ点滅と確定の仕様なんて分からないし、この点滅過剰状態が異世界間移動にどう影響するのかも確認できていないんだが……。



「ねえ、功己。石箱と同じに考えていいなら、その階段も消しちゃおうよ」


 壁上から階段を消す?


「石箱も階段も消えちゃえば魔法なんて疑いようないんだからさ」


「どうやって壁を上ったと説明するんだ?」


「それ、ごまかしちゃだめ?」


「……」


 土魔法の階段を消し去った上で、全てをごまかす。

 不審に思われようが、手足だけでのぼったと言い張る。

 無理やり押し通し、あとは何もかも曖昧にしてしまう。


 確かに、ありかもしれない。

 ありかもしれないが……。



「あっ、異形が壁を?」


「ギギギッ」

「グルルゥ」


 幸奈と俺が話をしている隙に後退を続け砂壁に至った異形たち。

 今にも壁に手を掛けようとしている。

 まさかこいつら、のぼれるのか?

 丸穴から這い出てきた要領で?


「……」

 

 まっ、砂壁をのぼる技量があったとしても問題などない。

 のぼる前に討てばいいだけだからな。




**************************


<古野白楓季視点>




「宿の中も何も変わってねえのな」


 武上くんと2人で戻ってきた施設の1階。

 目に映る眺めは今朝から何も変化していない。


「ええ」


 門の前もエントランスも全て同じだった。

 ということは、やっぱり。


「こっちは揺れてないんだわ」


「浜の揺れと沈下は異形の仕業ってことか?」


「まだ確定はできないけれど、現時点ではその可能性が高いでしょうね。って、それより今は里村くんよ」


「だな。じゃ、オレはこっちを探すから古野白はそっちを頼む」


「何言ってるの? 一緒に行動するんでしょ」


「一緒だと無駄に時間がかかんだろ」


「無駄じゃないわ、もしもに備えるのだから」


「もしもって異形のことか?」


「異形以外何があるの?」


「……野良やろう」


 野良の異能者が宿の中に?


「ないこともねえぞ」


 いいえ。


「今この島にいるのは私たちと施設の数人だけ。野良の異能者なんているわけない」


「んなもん、隠れてるに決まってらあ」


「何のため? まさか、私たちを襲うためとでも言うつもり?」


「……」


「私たちの予定は数日前に決まったばかりだし、日程についても研究所とこの施設の数名しか知らないわ。それなのに野良の異能者が情報を掴んだと? そして今日この時を選んで襲ってくると? そもそも野良が私たちを襲うなら、この島じゃなくてもいいわよね」


 こんなことわざわざ口にしなくても武上くんなら分かってるはず。

 でも、さっきから少し様子がおかしいから。

 だから。


「異形を警戒しながら、一緒に里村くんを探すわよ」


 私は武上くんのことも注視しなくちゃならない。





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