第722話 連係
ガンッ!
ダッ!
ダンッ!
蜘蛛型に入れようとした蹴りの方向を変え、蟷螂の刃を弾く。
さらに右の手のひらと左の肘で狐面2体の動きを止めてやる。
ザッ!
蜘蛛、蟷螂、狐面の連撃に対応したところで、ひとまずは反撃を中断。
一度大きく回避して態勢を整える。
「「ギギィィ」」
「「……」」
4体の追撃はない。
足を止め、無機質な眼でこちらを眺めたまま。
「功己?」
距離をとった俺に不安を覚えたのか、石箱の中から声が上がる。
「……心配ない」
「ほんとに?」
「ああ」
幸奈に返した言葉に嘘はない。
ただ、あいつらの動きは。
「「「「……」」」」
さっきの連撃も、今の様子見も、これまでの異形たちには見られなかったもの。
明らかに前回とは違う。
まさか、この4体。
連係する知能があるのか?
いや、そんなわけない。
前回とほぼ同種、同レベル帯の異形がいきなり連係なんてできるとは思えない。
だったら、単なる偶然?
「……」
とりあえず、次の攻防だな。
それで事実が見えてくるだろう。
「「「ギャギャ」」」
「「「グルル」」」
ん?
「「「ギャギャギャギャ」」」
嗤ってる?
俺を見て嗤ってる?
「……」
やはり、前回とは違うようだな。
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<和見幸奈視点>
暗い。
狭い。
それに、この石の匂い。
なぜだか、屋敷の地下浴槽を思い出してしまう。
「……」
けど、今はあの時と違うの。
だから、もう怖くない。
不安もない。
だって、そこに功己が見えるから。
功己が護ってくれるから。
だから、わたしは大丈夫。
「でも、功己は……」
こちらの世界では決して使うことのなかった魔法でこんな石の箱を造り出すなんて。
功己は平気だと言ってたけど、どう考えても問題があるとしか思えない。古野白さんや武上くんがこれを見て不審に思わないわけがない。もちろん、2人が目にする前に功己が石箱を消しちゃえばいいんだけど……。
でも、どうして?
どうして露見のリスクを負ってまで土魔法を使ったの?
「……」
分かってる。
自分の身すら護れないわたしのためだってことはよく分かってる。
それでも、功己が子供の頃から渇望し続けてきた異世界に行けなくなっちゃうかもしれないんだよ。
なのに、どうして?
これまではずっと異世界のことを優先してきたのに?
今はわたしを?
功己……。
えっ!
功己が下がってる?
押されてる?
「功己?」
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「ギギギィ!」
「シャア!」
正面から蜘蛛の突進。
右からは蟷螂の刃。
左は狐面2体。
4体同時の仕掛けだ。
迎え撃つこっちは回避から反撃に出てやる。
ガンッ!
ドガッ!
ダッ!
ガッ!
振るった拳と脚はすべて敵を捉えたものの、1撃は芯は外れてしまった。
結果、3体はその場で動きを止め。
残りは再攻撃に。
「ァァァァ……」
もちろん、単体相手など苦でもない。
軽く一蹴し、蹲る3体にも。
ザンッ、シュッ、ザシュッ!
とどめを刺して、討伐完了。
が、しかし……。
今の攻撃も間違いなく連動していたぞ。
1度ならず2度までもとなると、やはり、こいつら連係できるのか?
INT値的には、かなりの低知能だというのに?
「「ギギギギッ」」
「「「グルルルゥ」」」
もちろん、そうと分かっていれば対処はできる。
若干手を焼くだろうが、古野白さんたちの目を気にしないでいいなら討伐もそこまで難しいわけじゃない。
ただ、残るすべての異形が連係し、さらには幸奈に襲い掛かったら。
邪狼狗が参戦したら。
あのストーンウォールで耐えきれるだろうか?
「……」
剣か魔法を使うべきかもしれないな。
「「「ギギギギッ」」」
幸い、現時点では新たな露見のおそれはない。
ここにいるのは異形の群れと邪狼狗だけなのだか……。
そうだ!
邪狼狗の体は空間異能者のものだった!
それはつまり、露見の対象になると?
まずい、さっき土魔法を使ってしまったぞ。
急いでステータスを開き、目を走らせる。
……良かった、露見欄は何も変わっていない。
「よし」
心の枷が1つ消えてくれた。
残る問題は、帰ってきた古野白さんと武上に剣や魔法の使用を疑われないようにすることだが。
これについてはまず痕跡を最小に止めること。異形の遺骸はそうだな、丸穴の中に捨ててやればいいだろう。その上に土を戻して埋めてやればなお好しだ。
さてと。
リスク管理の目処もついたところで。
「「「ギギギギッ」」」
「「「グギャギャ」」」
続戦といこうじゃないか。
こっちが覚悟を決めたにもかかわらず、異形たちは幸奈に向かう素振りすら見せない。なので、戦闘は依然として素手のまま。剣や魔法に頼ることなく屠り続け……。
ん?
異形たちの動きが、ここにきてまた変わったのか?
ただ、それは厄介にじゃない。
俺にとっては楽な方向。
異形たちの連係が薄れてしまったんだ。
「「「グルルゥ」」
「「「ギギ」」」
連係が消え、幸奈の隠れた石箱にも興味なし。
であれば。
ダンッ!
ガンッ!
討伐速度を上げることができる。
ガッ!
ダシュッ!
ザシュッ!
魔力を纏った拳と脚だけで圧倒できてしまう。





