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第721話 比べられないもの



「何?」


 幸奈が戸惑いの顔を見せてくる。

 おそらくは、指笛を聞き取れないのだろう。


「あいつ、いったい?」


「指笛だ、が、出してる音が普通じゃないな」


 異常な音域を操作しているんだ。


「功己には聞こえるの?」


「ああ」


 常人の可聴域外にある邪狼狗の指笛、古野白さんや武上といった異能者でも聞き取ることは難しいはず。ただし、俺は違う。今は微かにしか聞こえないこの音も、耳を少し強化さえすれば。


 ピィィィィ。


 こうしてはっきりと拾うことができる。


「それって、魔力……」


「指笛が終わったみたいだぞ」


 指を口元から離し、そのまま右手を上に掲げる邪狼狗。


「では、では」


 それが合図だったのか。

 沈黙していた丸穴に気配が!


「お手並み拝見とまいりましょう」


 ということは。


「さっきの異形の群れ、おまえの仕業だったんだな?」


「さて、どうなんでしょうね」


「今さらとぼけてどうする?」


「ふふ、お喋りしてる余裕なんてあるんですか?」


「……」


 確かに、無駄話してる場合じゃない。

 ここからは壁上に邪狼狗がいる状態で異形たちを片付けねばならないのだから。

 何より、前回幸奈を護ってくれた古野白さんが……。


 なぜ戻って来ない?

 無事なんだよな?


「功己、古野白さんは? 武上くんと里村くんは?」


「……」


 さっきと同様、感知上は通常の気配。

 命に別条はないし、大きな怪我を負っていることもないと思われる。

 それは武上と里村も同じ。


「3人とも無事だ」


「……まだ縄を探してるの?」


「いや、里村は2人に合流している」


「だったら、もうすぐ縄を持って戻って来るのね?」


「そのはずだが……」


 邪狼狗がいる。

 現状、壁上には他の異形の気配はないとはいえ、ここに戻るには邪狼狗との接触は避けられない。


 今の邪狼狗を倒せるのか?

 里村を護りながらの戦闘になるかもしれないんだぞ。


「古野白さんと武上くんがあいつと戦ってくれるなら、功己は丸穴の方に集中できるよね?」


「……」


「わたしのこと気にせず戦えるよね?」


 邪狼狗が戦闘に専念するような状況になれば、その通り。

 さらに2人が倒し切ってくれたら……。


 駄目だな。

 いまだ未着の2人に期待していい局面じゃない。


「「「グギャ……」」」


「「「グルル……」」」


 待ってる時間もない。

 ならば。


「えっ? 功己?」


「壁際を離れるぞ」


 俺が幸奈を護って戦うしかない。


「えっ? えっ!」


 水着パーカーの幸奈を再び片腕で抱え上げ。

 窪地中央の丸穴を迂回し邪狼狗がいる壁上とは真逆の壁際まで駆ける。

 到着まではほんの数秒。


「ここで待ってるんだ」


 幸奈を砂浜に降ろし振り返るも、邪狼狗は追ってこない。

 向かいの壁上に立ったまま。


「……うん」


 あそこからここまでは20メートル強。

 邪狼狗のアジリティ(AGI)をもってしても、瞬時の到着は不可能なはず。 

 到着まで数秒あるなら幸奈を護ることができる。

 手段さえ選ばなければどうとでもなる。

 が、不測の事態にまで対処可能とは言い切れない。


 だったら。

 いや、しかし、そこまでする必要は。


「……」


 違うな。

 ここは最悪を想定して動く局面。

 優先すべきを間違えちゃいけない。


「幸奈、動くなよ」


「うん、分かってる」


 よし。


「……ストーンウォール」


「なっ! これって?」


「ストーンウォール……大丈夫、古野白さんたちは見ていない」


「でも」


「発動を見られてないなら、ごまかし様もある」


 バレる前に消すことも可能かもしれない。


「……」


「ストーンウォール」


「いいの?」


「ああ」


 古野白さんが護ってくれたさっきとは状況が違うんだ。

 もう躊躇なんてしてられない。

 そにれ、これで露見するなら諦めもつく。


 何より優先すべきは幸奈の命。

 幸奈と露見回避なんて、比べるまでもないんだからな。


「ストーンウォール……完成だ」


 土魔法で作り出したのは四面と天井をストーンウォールで覆われた直方体型の石箱。顔の前には状況を視認できるよう小さな覗き穴も設置している。


「功己?」


「すぐに倒して戻って来る。幸奈はここで安心して待っててくれ」


「……うん」


 これで準備万端整った。

 あとは異形の群れと邪狼狗を倒すだけ。


「ギギィ、ギギギィ」


 先頭の異形が出てきたな、いいタイミングだ。


 ザッ!


 四肢に魔力を纏い白砂を蹴る。

 そのまま蜘蛛型異形に接近し、露わになっている腹に正拳一発。


 ダシュッ!


 討伐完了。

 次は。


 ドガッ!


 蟷螂型の首を回し蹴りで叩き折ってやる。

 さらに狐面、鬼型と丸穴から這い出てくる異形たちの討伐を続けるも……。


「「「グルルル!」」」


 砂浜に足を踏み入る前に全てを倒し切るのは、さすがに不可能だ。


「「「ギギギギッ!」」」


 結局、10体以上の異形を窪地に放ってしまった。

 とはいえ、前回に比べれば楽なもの。

 異形の数自体は多くないし、第三者の目も気にする必要がない。


 いまだ向かいの壁上から動かない邪狼狗の目はあるものの、あいつは人じゃないだろ。なら、露見カウント外のはず。


 ん?

 蜘蛛型の突進か。


 単純な直進を右に飛んで回避しつつ蹴りを入れて……っと、そこに蟷螂の刃が!

 さらに、狐面2体の攻撃も!


「っ!」


 異形たちが連動している?



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