第718話 点滅
ドガッ!
ガンッ!
左右の拳に両脚の蹴り。
魔力を纏った四肢を駆使し、休みなく戦闘を続けること数分。
ここまは想定通り、いや、想定以上に余裕を持って戦えている。
「「ギャアァ……」」
それは、単にこの異形たちが弱いから。
最近まではあちらの世界でダブルヘッドやエビルズマリスの分体と戦っていた俺からすると造作もなく屠れるレベルだから、というのが1つの理由だが。
ダガンッ!
バシュッ!
ズバッ!
「「「グギャァ……」」」
やはり、戦闘レベル以上にこいつらの戦いぶりが大きい。
ガンッ!
ドカンっ!
戦術もなく共有した意図もなく、ただ本能に従うだけ。
勝手自由に動くだけの低級異形など、いくらいても烏合の衆のようなもの。
「「ギャア……」」
なので当然。
四肢を振るえば振るうだけ、異形が散っていく。
ズシュッ!
「ァァァ……」
ドサッ。
これで、残すは7体のみ。
もう時間の問題だろう。
「おい!」
さて、軽くラストスパートをと足を踏み出す俺に。
「有馬ぁ、ここで聞くのも何なんだけどよ」
後方の壁上から大声が飛んできた。
武上だ。
「……加勢した方がいいか?」
一転、小声で問いかけてくる。
「下りてこれるのか、武上?」
「おう、強化すりゃ10メートルくらいどうってことねえ」
あいつなら、そうかもしれないな。
「上るのも里村が縄持ってくんなら問題ねえだろ。ってことで加勢は……ん?」
目を見開く武上。
その目が捉えてるのは窪地中央にある丸穴。
「おい、おい、まだいんのかよ?」
「終わりが見えないわね」
そう。
あの穴から、また異形が湧き出てきたんだ。
「……」
前回と同様、直前まで気配もなかったのに、今はもう20以上の気配を感知できる。
「こりゃ、オレも下りた方が良さそうだな。古野白、こっちは任せたぞ」
「それはいいのだけど……助勢なんて必要かしら? これまで1体も討ち漏らしていないのに?」
「さすがにあいつでもバテんだろ?」
「……有馬くん、どう?」
新たに丸穴から湧き出てきた異形に特別なものは見られない。
今の状態の俺なら圧倒できるレベルの低級異形たちだ。
ただ、このまま湧出が続いた場合は魔力や体力に支障が出る可能性もないとは言い切れない。
「現状は問題ありませんが、この先も異形が途切れず現れるようですと」
「了解、その際は武上くんを送るわ」
「オレは今すぐ行けんだよ。古野白、勝手に決めんじゃねえ」
「勝手じゃないでしょ」
返答を聞くやいなや、これか。
ある意味、頼もしくもあるが、警戒は怠らないでくれよ。
「有馬くんが不要って言ってるの」
「言ってねえわ」
とりあえず、この2人は放置して7体と20数体の討伐だな。
「……」
壁上の古野白さんと武上は放置。
壁下の幸奈については、今とこの先の危険可能性を確認して。
よし。
再開だ。
ズッ!
バシュッ
拳が体皮を貫き、脚が骨を砕く。
ダンッ!
ドガッ!
シュッ!
面白いほどに攻撃が決まる。
それも、会心と思える一撃がほとんど。
「「「ギャアァァ……」」」
悲鳴をあげ簡単に崩れる異形の群れ。
旧7体は当然のこと、やはり新たな個体たちも統率がとれていないようだ。
おかげで、こちらは楽ができる。
ほぼすべてが狙い通りに進んでしまう。
「「「ァァァ……」」」
こうなれば、あとは流れ作業みたいなもの。
事は淡々易々と進んで……。
「ほら、助勢は不要だったでしょ」
「まだ分かんねえぞ」
「そうかしら?」
「異形がどんだけ出てくるか見当もつかねえんだ。この後有馬がどうなるか分かるわけねえだろ」
「今の戦いぶりじゃ、体力が尽きることもしばらくないと思うけど」
「有馬なら100でも200でも倒せるってか?」
「可能性はあるわ」
「んなもん、あいつがバケモノじゃねえか」
「……否定できないわね」
こっちはひとりで奮闘中だというのに散々なことを言ってくれる。
ただ、そんなことより気になるのは。
「バケモノっつうか、やっぱ身体強化だわ。そうとしか思えねえ」
「有馬くんが異能者じゃないという結論は出てるのよ。何度も言わせないで」
「断定はできねえだろ」
2人のやり取りを不安そうに眺めている幸奈の懸念と同じ。
さっきまでは変化のなかった露見がどうなっているかだ、が……。
バシュッ!
ダンッ!
さすがに継戦中にステータス確認する余裕はない。
ドガッ!
ダシュッ!
ズズッ!
露見については、こいつらすべてを倒し切ってから。
とはいえ、それももう時間の問題だろう。
「「「ギャアアァ……」」」
残るは5体。
巨大蜘蛛と鬼と狐面2体のみ。
「「アァァァ……」」
あと3体。
バシュッ!
ダンッ!
あと1体。
これで終わりだ。
ドガンッ!
最後の狐面が白い砂浜に崩れ落ちる。
丸穴からの増援気配は……なし。
「1体も討ち漏らさず倒し切ったわよ。まあ、100体には届かないけれど」
「……」
討伐完了、と考えていいんだよな?
なら、確認を。
有馬 功己
レベル 9
20歳 男 人間
HP 243
MP 299
STR 348
AGI 248
INT 372
結構な数の異形を倒したのに、数値に変化が見られない。
って、今はそこじゃない、この先だ。
<露見>
地球 1/3 、 4(点滅)/3
エストラル 1/3 、 2(点滅)/3
っ!
地球側の点滅が3を超えてる!
武上に加え古野白さんまでカウントされてるのか?





