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第716話 衆寡



 また、エネルギー反応!

 ということは、揺れるのか?


「有馬くん?」


「功己?」


 いきなり挙動が変わった俺に古野白さんと幸奈の視線が集中する。


「あのエネルギーです、けい……」


 そんな2人への警戒をという一言が。


 ダァァンッ!


 轟音に掻き消され。

 そして。


 ドンッ!

 ドドドッ!


 地鳴りのような低音が響き渡る。

 足下も揺れ始め。

 白い砂浜がまるで生き物のように波打ち始めた。


「なっ!」

「えっ!」


 壁上では古野白さんが片膝状態。

 隣の幸奈は両手両膝立ちになっている。


 ドンッ!

 ズドンッ!!


 さらなる爆音が陥没を連れてきた!


「きゃっ!」


「幸奈、こっちだ!」


 腕を掴んで引き寄せ、抱え込んでやる。


「うぅ!」


「古野白さん?」


「も、問題ないわ」


 さっき経験したからか、膝をつきながらもその顔に焦りは見えない。

 なら。


「あの2人は?」


「里村くんは宿に入ってると思う。武上くんはあそこに見えるわ」


 揺れの外にいるなら里村は安心できる。

 武上は、まあ平気だろ。


 やはり問題なのは今も沈下が続くこの窪地。

 そこにいる俺と幸奈だな。


 しかし、今回は。


「長い」


「けど、沈下はそれほどじゃないわ」


「……ええ」


 古野白さんの指摘通り、現時点での沈下は前回の半分以下。

 とはいえ、砂壁は既に10メートルほどの高さになっている。

 このまま沈下が続くと酸素の問題も出てくるんじゃないのか。


「功己?」


 俺の不安が伝わったのだろう。

 腕の中の幸奈が不安そうな表情で見上げてきた。


「心配ない。何が起きても俺が何とかしてやるから」


 最悪の場合でも、露見さえ覚悟すれば対処可能。

 まっ、その最悪は避けてほしいんだが。


「うん……あっ、止まった?」


 幸奈がうなずくと同時に揺れと沈下が止まった。

 なのに。

 

 ドッシャァァ!


 窪地中央あたりから吹き上がる砂煙。

 大量の白砂が弾け飛んでいく。


「えっ!?」


「何!?」


 砂煙で視界を遮られた古野白さんは窪地の状況を把握できていない。

 が、俺と幸奈は砂が舞う中でもはっきり見えている。


「あれって?」


 砂浜の上に直径約3メートルの丸穴が出現したんだ。

 そして、そこから。


「……異形!」


 地中から這い出してきたのは、巨大な黒蜘蛛。

 人の胴ほどもある腹部、刃物のように尖った脚を持つそれはまさに異形そのもの。


「うそ!?」


 出てきたのは巨大蜘蛛だけじゃない。

 その後ろから次々と……。


「「「「「ゥゥゥゥ」」」」」


「「「「「ギギギギ」」」」」


「「「「「アーアーアー」」」」」


 魚の頭を持つ人型。

 白狐の面を被ったような獣。

 角を生やした三足鬼。


 見たこともない化物の数々。

 けれど、その異様な姿より。


 多い。

 多すぎる。


「この数は!?」


 既に20を超えてるじゃないか。


「……」


 激しい縦揺れと地盤の再沈下がおさまり。

 あとに残されたのは窪地中央に見える不気味な丸穴。

 その穴を通って。


「「「「「ゥゥゥゥ」」」」」


「「「「「ギギギギ」」」」」


「「「「「アーアーアー」」」」」


 湧き出るように現れたのは巨大な黒蜘蛛。

 続けて魚頭人型、白狐面、角持ち三足鬼と異様な化物が次々と姿を現し。

 あっという間に20体を越えてしまった。


「……多い」


 地盤の沈下だけでも異常事態なのに、その上多数の異形出現となると、もう言葉も出てこない。動揺のあまり思考も止まりそうになる。


 が……。


 感知の網にかかる気配に、強者のそれはなし。

 姿形は醜悪凶悪であるものの難敵はいない、そう感じられる。


「……」


 もちろん、感知は万能じゃない。

 こちらの世界で異形に対した経験が少ない俺が完璧に測れるとも思えない。

 だからこそ、鑑定だ。

 今も湧出し続ける異形たちに片っ端から鑑定を!


 蜘蛛に魚人に白狐、三足鬼。

 二足鬼に蟷螂型。


 こいつらを簡易最速で調べた結果……。


 やはり、気配通り。

 俺が恐れるほどのステータス持ちはいなかった。


「ふぅぅ」


 その事実を前に焦りが消えていく。

 と同時に異形現出も終わったようだ。


「……32体か」


 強者不在とはいえ、かなりの数ではある。


「功己?」


 ここまでは俺の腕の中で固まったように動きを止めていた幸奈が口を開く。


「大丈夫だ」


「でも、多すぎるよ。それを素手でなんて」


「素手、か」


「そうだよ。いくら功己でも、こんなの……」


 確かに、剣も魔法も使わず32体の異形を倒すのは容易じゃない。

 それでも敵は低知能の混成集団。連係攻撃などまずあり得ないだろう。

 なら、各個撃破で倒し切れるはずだ。


「幸奈、俺を信じられないか?」


「そんなこと……ないけど」


「だったら、ここで待っててくれ。動くなよ」


「えっ! ちょっと?」


 腕から解放した幸奈を壁際に立たせてやる。

 直後。


「戦うつもり?」


 今や10メートルの高さになった壁上から古野白さんの声が響いてきた。

 砂煙が晴れたことで、状況を把握できたんだな。


「30体もいるのよ」


「何体いようと、戦うしかありませんので」


「そうだけど……」


 既にこっちの方針は決まってる。

 では、古野白さんの方は?


「上に異形は現れてませんか?」


「……こっちは問題ないわ」


 よし。

 そういうことなら。


「これから俺は前に出て戦います。ですので、古野白さんは壁上から魔法の牽制で幸奈を護ってください」


 俺が討ちもらした異形の対処を頼みたい。


「それはいいけど……ほんとにやれるのね」


「もちろんです」


 その一言を残し砂を蹴る。

 飛ぶように駆け、まずは正拳一発。

 魚人の胸に。


 ドガッ!


 叩き込んでやる。






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