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第715話 主因



 今は砂浜が二重に沈下して俺と幸奈が最下層の窪地に分断された状況。

 ここから一段上に上る手立ては……。


 もちろん、何を使ってもいいならすぐにでも上ることはできる。

 ただ、魔法なし、収納なしで幸奈を背負っての徒手登攀となれば簡単なことじゃない。


 それでも、不可能ではないはず。

 何か手はあるはず。


「……」


 あれは駄目だ。

 これも駄目。

 そっちも難しいだろう。

 なら……。



「ねえ、みんな」


「里村くん、何かしら?」


「ボク、宿で縄でも探してこようかな?」


「縄があんのか?」


「多分? どこかで見かけたような気がするんだけど?」


 縄が手に入るなら魔法や道具に頼る必要はない。

 助かるぞ。


「おい、おい。そんなら、早く言えや」


「ごめん、今まで忘れてたんだ」


「突然の事態なんだから仕方ないわよ」


「うん、ごめん」


「謝る必要はないけれど、里村くん、宿に戻るにはあの壁を越えなきゃいけないわ。できるの?」


「下にいる有馬くんたちと違ってこっちは2メートルほどだよね。だったら、何とか上れると思う。1人で難しい時は、武上くんの身体強化で?」


「おう、里村くらい簡単にぶん投げれるぞ。っつうか、オレも行くぜ」


「武上くんはこっちに戻ってもしもに備えてよ」


「それ、必要か?」


「うん、ボクがいても何もできないけど、武上くんなら色々できるからさ」


「……しゃあねえなぁ」


「そういうことだから、古野白さん」


「ええ、お願い」


「任せといて」

「任せろ!」


 壁上から里村と武上の姿が消えた。

 今は古野白さん、幸奈、俺の3人だけ。

 つまり、ここで古野白さんが離れれば縄を待つまでもない、そんな状況だ。


「古野白さんも里村を手伝いに行ってください」


「私は必要ないでしょ」


 もちろん、その通りなんだが。


「何があるか分かりませんし」


「何かあったら向かうわ」


「念のため、ということは?」


「念のため、ここに残るのよ。里村くんよりあなたたちの方が危険なのだから」


 駄目だ。

 正論過ぎる。


「ところでさっきの揺れと沈下、どう思う?」


「……」


「有馬くん?」


「……常識的には地震と考えるべきでしょうか」


「あれが地震なら、すぐに海岸を離れないとまずいのだけれど……その口ぶりはそうは思ってないのよね?」


「ええ、まあ」


 揺れ直前の特殊なエネルギー反応。

 作為的とも思える奇妙な地盤沈下。

 これらが地震によるものだとは思えない。

 仮に地震だったとしても、我々の知る一般的な地震ではないはずだ。


「根拠はあるのかしら?」


「あるにはありますが、大半は感覚的なものですね」


「感覚が根拠……」


「古野白さんはどうなんです?」


 こちらの問い掛けに、一瞬後ろを振り返り。


「まず、地震ではないでしょうね」


 確信ありげに返してくる。


「根拠は?」


「宿付近が揺れていないからよ」


 なっ!?


「揺れてない!?」

「宿は揺れてないんですか!?」


「そうね、まったくの無事だわ」


 どうして分かるんだ?

 どうして言い切れる?


「門の前に並べられていたレンタサイクルを覚えてるかしら?」


「……ええ」

「はい」


「今の有馬くんと幸奈さんには見えないでしょうけど、一台も倒れてないの」


「……」

「……」


「他にも異状は見えないわ」


「あれだけ揺れて何の異状もない? そんなことあり得ませんよね?」


「そう、だから」


「地震ではないと」


「そういうこと」


「でも、でも、地震じゃないなら……まさか異能?」


「幸奈さんは異能を感じたの?」


「いえ、感じてはいないですけど……」


「私も同じよ。余程のことがない限り、行使された異能の痕跡は感じることができるはずなのに」


「余程のことですか?」


「ええ、例外的に異能を感じないケースもあるの。けど、その可能性は限りなくゼロに近いわ」


「……」


 地震が原因でないことはほぼ確実。

 異能の可能性も低いだろう。

 が、異能も異能者もその限界についてはよく分かっていないため、異能行使の可能性は捨てられないと。


「そうだ、有馬くん、揺れの前に止まれって言ったわよね。あれは何?」


「……奇妙な気配みたいなものを感じたんです」


「異能の痕跡じゃなくて?」


「分かりません。俺に異能判別はできないので」


 異能かどうかの明確な判断は俺には不可能なんだ。


「ただ、異能というよりは、もっと単純なエネルギーに近かったような」


「単純なエネルギー……有馬くん、そのエネルギーを今も感じるのかしら?」


「いえ、揺れと沈下がおさまった時には消えてました」


「ということは、有馬くんの感じたエネルギーが今回の主因?」


「それはどうなんでしょ? 何らかの関係はあると思いますけど」


 あの強烈なエネルギー反応がまったくの無関係だとは思えない。

 とはいえ、直接の原因とも言い切れないものがある。


「……」


 そんな原因不明の状況の中、窪地に孤立している俺と幸奈。

 やはり、一刻も早く脱出したい。

 が、もし縄が見つからず、俺が脱出法を思いつけなかった場合は。


 これは、覚悟を決めておくべきだな。

 万一の場合は土魔法でも何でも躊躇せず使えるように……っ!?


 感知に反応!


「……」


 これは、さっきのエネルギーだ!




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