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第709話 感知



 今も目の前で堅く口を閉ざしたまま、俺の隙をうかがっているユントール・シャリヌ。


「……」


 黒装束のこいつが諜報機関の一員だったら。

 それが事実だとしたら、キュベリッツ王家がオルドウ伯爵を調べていることになる。それも、こんな夜遅くに別邸にまで入り込んでだ。


 王家がここまでするということは……。




『コーキさん、オルドウの領主家には近づき過ぎない方がいいですよ』


『それは……伯爵家に問題でもあるのですか?』


『大小の差こそあれ、領主家なら問題など複数抱えているものです。ただ、ここオルドウ伯家は……』


『何でしょう?』


『少々危険な兆候があるのです』


『危険?』


『はい、あくまでも兆候に過ぎませんので確定事項ではないのですが』


『……なるほど』


 あの時は軽く聞いてしまったベリルさんとのこの会話が頭に浮かんでくる。

 嫌な予感が急速に湧き上がってくる。

 と同時に思い出すのが、霊薬調合の日のオルドウ伯爵との会話。


 伯爵の言葉から感じたのは夕連亭に対する警戒心や忌避のような感情だった。

 つまり、ベリルさんたち夕連亭とオルドウ伯爵が共に相手を訝しんでいると。


「……」


 駄目だ、どうにもキナ臭すぎる。

 これはもう。


「っ!」


 思わず考え込んでしまった俺に隙を見たのか、ユントールが池に向かって走り出してしまった。


「待て!」


 もちろん、問題はない。


「止まれ」


 この程度のことで逃がしはしない。


「止まらないと」


 こうだ。


「雷撃!」







「おまえ、ここで何を探っていた?」


 再度捕まえ、縄で拘束したユントールに問いかける。


「……」


「誰の命令だ?」


「……」


「早く答えた方がいいぞ」


 と言いながらも、答えに対する期待感はなし。

 侵入者の黒装束同様、このやり取りは全て様式、形式にすぎないのだから。

 当然、自白的解決など考えてもいない。


「答える気がないのか?」


「……」


 ここで形を整えてオルドウ伯家の守衛に引き渡し、あとは彼らに任せればいい。

 現状俺がすべきはそれだけ。

 とはいえ、問題はそのあとになる。


 この件の裏にある事情を調べるか?

 それとも放置か?


 ん?

 あの女性、リャナーヤ様の名を騙った彼女は関係してないよな?

 まさかシャリヌ家に属してるなんてことは?


「……」


 いや、仮にそうだとしても、ここで俺が深入りする責はない。

 オルドウ伯爵家も正体不明の彼女も、俺とは先日縁ができたばかり。当然、相頼むような関係じゃないのだから。ならやはり、今は表面的な干渉に留めるべきだ。


 深入りしないと決めたのなら、ユントールの引き渡しは早い方がいい。


「立て」


「……」


「返答はせず、立とうともしないか」


 だったら、こっちも実力行使に出るまで。


「立つんんだ」


 拘束縄を引き、ユントールを強引に立ち上がらせる。

 そのまま引きずって強制連行を……ん?


「ふっ」


 ユントールのまとう空気が変わった。

 顔には諦念と嘲笑の混じり合ったような色が浮かんでいる。

 その口が大きく開いて……まずい!


「雷撃!」


 間に合ってくれ。


「っ……ががが」


 痙攣するユントールの口に手を突っ込み。


「がっ!」


 探す。

 手探りで調べる。


 ……あったぞ!


 歯の奥に仕込んでいたそれを素早く取り出し鑑定、するとやはり。

 毒薬だった。


「がが、ががが……」


 ただし、未使用のまま。

 これなら大丈夫、危険はない。


「……」


 そのユントールは雷撃を身に纏ったまま昏倒し俺の目の前に転がっている。


「もう一度調べるか」


 縄で縛った際に全身を検分してはいるが、この毒薬のような見落としが他にもあるかもしれないのだから。




「ここはなし、ここも、そこも、こっちも」


 よし、今度こそ見落としはないはず。

 こいつについてはもう何の問題もないはずだ。

 なら、さっさと引き渡すか。


 いや……。


 ユントールの一連の動きを観るに、今回の件が単独行動である可能性は低いと思えてしまう。ただ、これまでの感知で他の不審者は確認できなかった。であるなら、考えられることは。


 1、湖畔の館に他の間者は存在しない。

 2、俺の感知を越えた気配消去能力の持ち主が潜んでいる。

 3、最前の感知範囲外に潜んでいる。


 この3つ。


 言うまでもなく、1は何の問題もない。

 が、2か3だったら厄介だ。

 その厄介事を確認するためには、もう一度調べるしかないだろう。


 そう、こいつをオルドウ伯家に引き渡す前に再感知だ。


「……」


 いまだ昏倒中のユントールの拘束縄を右手に持ち。

 通常感知をまず発動。

 その範囲を徐々に広げていく。


 湖畔の館の敷地を越え。


 サヴィラ湖の周辺を調べ。


 その先の街道へ。


 さらに荒野まで……。




 結果。

 最大限まで範囲を広げても、それらしい気配は感じられなかった。

 とはいえ、大規模感知の精度は高いものじゃない。そのため感知の網を掻いくぐられた懸念はある。が、今はそこを追及するより2だな。


 広げていた感知範囲を絞り。

 湖畔の館敷地内に限定。

 魔力を注ぎ、感度を上げ、精度を上げて。


「……」


「……」


「……」


 駄目だ。

 あやしい人物など、どこにも感知できない。





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