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後日譚その6 転生うさぎと住民達の遊び(鬼ごっこ編)

 わたしは月の領域でただぐーたらとお月見をしているだけではありません。時には住民達とあそ…様子を見に行くこともあります。今回はそんなある日の一日の話です。



「きゅい!」


「きゅい~」


「きゅいきゅい」


「きゅい~♪」



 念のために言いますが、これらはわたしの発した鳴き声ではありません。森の住民達(とさりげなく卯月と如月)のうさぎ達がわたしを取り囲んで鳴いているのです。この光景を見る度に思うのですが、なぜ「きゅい」なのでしょうか?それと、なぜわたしはうさぎの神獣なのにうさぎ語が理解出来ないのでしょうか?世界三大不思議ですね。他には…特にありませんけど。



 それで、何故わたしが囲まれているのかを説明しますと、アルジミラージのミラーがたまには卯月の相手をしてくれと泣きついてきたので、仕方なく相手をしてあげようと話をしたら、何故かうさぎが集まって来たのです。ちなみに休暇のミラーは他の聖獣達と話し合いをしているようですね。休んでくださいよ。今度しばりつけてでも休ませてやりますからね。



 閑話休題。



……さて、どうしたものでしょう。



 白いうさぎ達(時々黒いのとか違うのが混ざっていますが、ほぼ白です)が集まってもふもふしているところはとても愛らしくて癒されるのですが、何をしたらいいのかさっぱりわかりません。試しに〈念話〉で声を掛けてみると



(…あなた達、何かしたいことがあるのですか?)


「きゅい!」


「きゅい~」


「きゅいきゅい」


「きゅい~♪」


「「「きゅい!!」」」



 とまあ、こんな感じです。あなた達は何を言っているのですか?わたしに分かる言葉で話してくれませんかね?と頭を抱えているのが今の状況です。卯月と如月も居るのに通訳してくれないのですよね。一緒になってきゅいきゅい鳴いています。あなた達は言語を忘れたのですか?それともうさぎの本能でしょうか?うさぎの本能ってなんですか?



 と、混乱するわたしを取り囲むうさぎ達は、きゅいきゅい鳴きながらすり寄ってきます。とりあえず、可愛いので良しとしますか。



 ではなくて。遊びに付き合う約束でした。このままではもふもふに包まれて一日が終わってしまいます。わたしはそれでも良いですが、後でミラーに文句を言われるかもしれないので、きちんと遊んであげましょう。遊びの基本といえばやはり…



(…よし。では、『鬼ごっこ』をしましょう)



 まずは〈念話〉でうさぎ達にルールを説明します。ここのうさぎ達は皆さん月兎に進化しているので知能も上がっているのか、一回の説明で理解したようでした。いえ、本当に理解しているのかは定かではありませんが、あの卯月が目をキラキラさせて頷いているのを見るに、卯月は理解しているのでしょう。ならば全員理解しているはずです。



(…では、わたしが鬼をやりますので、皆さん、領域内を自由に逃げ回ってください。五分経ったら追いかけますね。わたしが追いかけ始めてから一時間逃げきれたらあなた達の勝ちです。あ、ダンジョンに入るのはダメですよ?危ないですからね)



 うさぎは皆、〈俊足〉と〈気配遮断〉のスキルを持っているので、鬼ごっこはそこそこ強いです。まぁ、わたしが鬼の時点で相手になりませんけどね。数が居ますし、全部を捕まえるのは少し時間が掛かるでしょう。いくらわたしでも、領域の隅から隅まで散らばって隠れているうさぎ達を一時間で全て捕まえるのは大変かもしれません。



(…では、開始です)



 わたしの合図で一斉に散らばるうさぎ達。特に厄介なのが、身体能力がずば抜けている卯月と、隠密に特化した能力の如月ですね。特に如月はSランク冒険者のゼロさん仕込みの隠密技能を持っているので、簡単には捕まえられないかもしれません。ま、主として頑張ってみますか。



 五分が経過し、わたしは〈精密索敵〉と魔法の索敵魔法を併用しながら、〈神速〉スキルで一気に領域中を駆け抜けます。



 普通のうさぎ達は、魔物化したとはいっても、戦闘経験もないですし訓練もしていません。ほぼ一般うさぎです。神獣であるわたしの動きについてこられるはずもなく、どんどんと捕まえて行きます。中にはそこそこ逃げ足が速かったり、隠れるのが上手なうさぎも居ましたが、わたしからしたらどんぐりの背比べみたいなものですね。関係なく捕まえて中央広場に集めて行きます。結構理不尽な戦いですが、うさぎ達は楽しそうでした。中央で待っている間はお互いにじゃれて遊んで待っているようです。



 三十分経過し、あらかた一般うさぎは捕まえました。そして、道中見付けた卯月を追いかけます。



「きゅい~♪」



 とっても楽しそうに逃げる卯月はさすが脳筋…わたしの眷族というだけあって逃げ足が速いですが、さすがにわたしの身体能力には及びません。すぐに距離を縮めて、いざ捕まえようと飛び掛かったらひょいっと躱されました。今のは卯月の意思というよりも反射行動的なものでしたね。ユニークスキル〈月の戦兎〉の能力でしょうか。確か、〈反射行動・戦兎〉は攻撃されたら自動回避で〈直感・戦兎〉は危険予知と攻撃予知の能力がありましたね。ええい。面倒な奴ですね。



 自動で回避されたり、動きが予知されたりした時の対処法はとても単純で、相手が予知しても反応出来ない行動を取れば良いのです。というわけで、身体強化魔法をかけて更に速度を増したわたしは再び卯月に飛び掛かり、捕まえようとしたのを避けられたところをすかさず、縮地という移動法でノーモーションから一瞬で距離を詰めて回避中の無防備な卯月を捕まえました。



「きゅい~♪」


(…楽しそうで何よりです。捕まえたので、中央広場で待っていてくださいね?)


「きゅいっ」



 そして、鬼ごっこが始まってから五十分が経過し、如月以外のうさぎはみんな捕まえました。ですが、如月だけがどうしても見付かりません。わたしの索敵を上手く潜り抜けているようですね。あちこちで影魔法の分身を使っているところとか最高に嫌らしいです。誰からこんなことを学んだのでしょう。まあ、ゼロさん意外に居ませんか。



……しかし、見付けられないのも主としての沽券に関わります。少し大人げないですが、ユニークスキルを使いますか。



 というわけで、〈因果予測〉を使って過去の如月の行動を予測します。〈因果予測〉の能力は、あらゆる因果から未来を予測するという能力ですが、このあらゆる因果というところに過去の行動も含まれるのです。ただし、過去を視ることは未来を予測することよりも負担が掛かるので、過去を視る年月によってはわたしの脳がパンクして倒れます。一時間くらいならたぶん大丈夫…だと思います。



 ちょっと痛みに耐えながら、過去の如月の行動を予測し、その中から今の状況と照らし合わせて、現在の如月の場所を予測します。どうせ影魔法や〈気配遮断〉などのスキルで隠れていると思うので、それらを看破するために〈全知の瞳〉も使いましょう。鑑定以外にもこうした隠れたものを探すのにも優秀な眼です。



 何故にただの鬼ごっこにこんな本気になっているのでしょう?悪魔王戦の時より本気かもしれません。でも、遊びは本気でやるからこそ楽しいと誰かが言っていたような気がします。つまりわたしは正しいのです。大人げない?聞こえませんね。



 それから、残り三分という結構ぎりぎりの時間で如月を見付けて捕獲しました。やれやれ、なんとか主の沽券は守られましたね。



 更にその後も何度か鬼ごっこをやって全勝したわたしは、その日はとても気分良く夜のお月見を楽しみました。



 後に領域のあちこちでこの鬼ごっこが遊ばれて、領域の住民達のスキル上げや身体能力の向上に役立ち、知らずのうちに訓練のようになっていくとは、この時のわたしはまだ知る由もありませんでした。




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