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後日譚その3 転生うさぎとダンジョン『朧月夜』

 ダンジョンコアのオボロはわたしの正式な眷族となった影響で魔人へと進化しました。ダンジョンコア自体が特殊な魔物の変異種のような存在ですし、かなり長生きなようでしたので当然の結果と言えます。



 肩に毛先が届くくらいの白銀の髪に月のような金色の瞳。中学生くらいの少女のような顔をしていますが、胸はありません。壁です。…なんですか?わたしは胸は壁ではありませんよ?喧嘩売っているんですか?別にわたしの影響で胸がない訳ではありませんからね?



 オボロはダンジョンコアのため性別がありません。ただ、わたしの魔力の影響で女の子に寄った見た目になっているようです。一応、ややこしいので表向きには女の子ということにしましょう。ボクっ娘です。男の娘ではありません。ちなみに正式な性別はオボロです。



 折角ダンジョンコアが眷族となったので、領域内にダンジョンを作ることになったのですが、これがなかなか大変でした。



 まずは基本コンセプト。メインテーマ。言い方はなんでもいいですが、どのようなダンジョンにするかの背景的な設定を決めます。例えば、洞窟タイプにするかとか、魂の谷底の頃と同じようなカタコンペにするかとかですね。



 これに関してはすぐに決まりました。まぁ、名前が朧月夜なのですから、月をテーマにしたダンジョンを作るのです。え?朧と夜が無いですか?聞こえませんね。



 月をテーマにすると決めたのは良いのですが、月のダンジョンってどのようなものにすれば良いのか悩みました。だって、月なんて行ったことないですからね。



 わたしだけでは知識が抜けているところがあるので、〈偶像〉の永久も呼び出して話し合い、地球の月に関する知識を〈思念伝達〉でオボロに伝えました。



 その結果、ダンジョン『朧月夜』は月面を探索するダンジョンとなりました。やはり朧も夜は全く関係ないですが、苦情は受け付けません。



 メインテーマを決めた後は、出現する魔物の種類と強さ設定、ボスの配置について、宝箱の配置と中身について、イベントの作成、トラップ類の設置、安全地帯の設置等々…細かいことをそれぞれ決めていきます。ちなみに、コア部屋は必要ありません。だって、コア本体はダンジョン外のわたしの領域で暮らしますから。ダンジョンの操作をする時は中に居る必要があるそうですが、それ以外は外に出ても問題ないのだとか。



 ダンジョンの入り口から中に入るとすぐに月面に到着します。重力が六分の一で、月面の広さは『魂の谷底』の50階層分の床面積を全て合計した広さになります。広さだけならば、旧帝国領土全域くらいあります。もうちょっと広いかもしれませんね。広さが分かりにくいならば、そうですね、地球でいうとアメリカぐらいだと思ってください。面積なんて測ったことないですが、たぶんそのくらいです。



 景色は白い岩がゴロゴロの殺風景な場所ですが、空は宇宙空間のため、満天に輝く星々が瞬いていて、360°プラネタリウムです。ただ、地球は見えません。見えたらマズイですからね。別に作り物の世界だから大丈夫だと思いますが。ちなみに、本物の月とは違って球体ではありません。だだ広いひたすらの平野です。大きなクレーターとか、山っぽくなっているところはありますけどね。端まで行くと見えない壁があります。天井もありますよ。空を飛んだら宇宙空間に投げ出されたりしません。だってダンジョンですから。



 トラップはダンジョンコアのオボロに任せることにします。わたしや永久の考えたトラップはちょっと殺傷力が高すぎるので運用は見送られました。アイアンメイデンとか強制転移後に閉じ込めて火を灯すとか案を出したのですがね。あまり殺傷力の強すぎるトラップがあると人を呼び込みにくいとのことで却下されたのです。ですが、ダンジョンの一部、主に卯月の遊び場や眷族達、聖獣達の訓練用に確保した場所には設置しました。特訓場が出来て一部の人達は喜び、ミラーは絶望の表情を浮かべていました。あの、その、卯月の相手頑張ってください。



 こほん。宝箱の中身についてですが、月のイメージということで、重力魔法が付与された魔剣や防具が当たりとして平野の各地に設置されることになりました。これらは全てダンジョンの力で生成出来るそうです。改めて思いますが、ダンジョンってスゴいですね。もちろん外れもありますよ。当たりが出る確率は1%以下らしいです。ガチャより酷いですね。でも、MMORPGのレア装備ドロップ率としては普通でしょうか?また、隠された場所にある宝箱や、ボスを倒して手に入る宝箱にはこの確率が変動して、一定レア以上のアイテムが出るように設定されるそうです。なんだか、ゲーム作っている気分になってきました…。



 イベント関係はオボロに全面的に任せましょう。たまに徘徊ボスが出てくるとか、隕石が落ちてくるとかで良いのではないでしょうか?後は知りません。



 安全地帯の設置もオボロにお任せです。手抜きという訳ではなくて、探索に無理のない間隔で設置して分かりやすい目印が必要だそうなので、ダンジョン経験の長いオボロに任せた方が良いだけです。わたしがテキトーに設置するわけには行きません。



 一番揉めたのは出現させる魔物と、その強さに関する設定ですね。



「…月兎を適当に出現させれば良いのではありませんか?月ですし」


「ゴーレム等の無機物系の魔物で良いでしょう。一般的に月兎という魔物が居ないので強さが調整しづらいと思います」


「…月と言ったらうさぎです。月にゴーレム居たら不自然でしょう?」


「いえ、うさぎが居ても不自然だと思いますが…」


「…この世界では不思議ではありませんよ」



 とまあ、永久と言い合いになり、他の眷族達の意見も聞いてみて、最終的には次のようになりました。



 まず、月兎という魔物は登場させます。しかし、人を襲わない友好的かつ無意味なただの月の住人という形です。安全地帯に目印のいみも込めてまとめて配置されています。それでも、一体一体の動きを完全に強制は出来ないようなので、たまーに安全地帯から抜け出してしまうのです。ダンジョンの魔物に魂はありませんが、個性はあるのですよね。これも不思議です。安全地帯から抜け出しても生き残れるように、月兎達には聖樹フローディアに似た性質を持たせて魔物が近寄りにくいようにしています。これは、卯月が涙目で「うさぎが狩られるところは見たくないのです…」という意見を採用して、狩る意味を無くし、でもせっかく月が舞台なのだから登場させたいという総意(永久は最後まで首を傾げていましたが)のもと、このような形で登場させることになりました。ちなみに、ダンジョンの月兎を攻撃した場合、それが故意でなくても、わたし特性オリハルコンゴーレムドラゴンタイプが潜んでいる場所に強制転移することになっています。まぁ、死なないように手加減はさせますが、故意に月兎を狙ったと判断された場合は本気で殺しにいきます。うさぎをいじめる奴は悪です。



 この月兎の仕様のせいで、月兎を抱き締めてダンジョンを探索する冒険者が出てきたのですが、基本的には安全地帯から出ようとしないようにして、無理やり外に出した場合はオリハルコンゴーレムの制裁を与えることにしました。しかし、無害なせいで、ただうさぎと遊ぶだけにやってくる冒険者も居るのですよね。可愛いのは分かりますが、探索してください…。



 通常の魔物は主にロックゴーレム、アイアンゴーレムで、入り口から遠くに離れるほど月のダンジョン限定の魔物を登場させます。もちろんかなり強めの魔物です。重力魔法を使うグラビティウルフやムーンキャット、それに、ムーンストーンゴーレムという特殊なゴーレムも配置しています。いずれも、単体で冒険者の規定ランクでBランクオーバーの強さです。ま、これでも『魂の谷底』の下層に比べれば大したことありませんが。



 ダンジョンのボス配置ですが、通常のダンジョンと違って階層ボスの配置が出来ないため、広大な敷地のあちこちに神殿やら遺跡っぽいものを作り、そこにボスを配置することになりました。ボスは黒い月兎です。種類がいくつかあり、それぞれ弥生と卯月と如月をモデルに作られています。また、黒い聖獣も居ます。ペガサスとアルジミラージとオルトロスです。それと、一番難度の高い大きな神殿にはわたしをモデルにした白い月兎とも戦えます。ま、そんなに強くないですけどね。わたし目線では。でも、こちらに一度呼び戻したクーリアさんが挑戦したら泣いて帰ってきました。倒しはしたみたいですね。二度とやりたくないと言っていましたが。



 そんな感じでダンジョンを作ること一年が経過し、セラさんやエルさん、クーリアさんの元冒険者達や現役Sランク冒険者のゼロさんの意見も聞きながら難易度調整をしてようやくダンジョン『朧月夜』が開設されました。ほんとに大変でした。これでもかなりの作業をダンジョンコアのオボロがやっていたのですがね…。ダンジョンの制作と運営って大変なんですね…。



 後に月の領域の一部を、聖国と話し合って許可した人が入れるように取り決めをして、ダンジョンの入り口も立ち入り許可した場所に設置されました。



 実際に冒険者がやってきてダンジョンを探索するようになってからは更にいろいろな微調整を繰り返す仕事がありましたが、まあ、大体はオボロが対処していたので問題ありません。ただし、一部の神殿で現れる卯月と如月の偽物のボスが、たまに本物が混じって冒険者と戦ってコテンパンにしたりとか、卯月が徘徊ボスのようなことをして遊んだりとか、卯月がダンジョンの月兎と過剰な遊びをして攻撃したと誤審されてオリハルコンゴーレムドラゴンタイプと戦ったりとか…ダンジョンが完全に卯月の新しい遊び場になってしまいました。結果的にミラーの負担も減って良かったです。冒険者は卯月と戦って涙目でしょうが。



 そもそも、意見を聞いた冒険者が皆さん相当な実力者だということを忘れていて、彼女達の意見で調整したダンジョン難易度は当初はかなりクソゲー仕様だったようですけどね。なんで皆さんSランク冒険者視点で答えているんですかね。自分は人外なのだと自覚してほしいです。



 まぁ、ダンジョン開放後もいろいろとありましたが、管理と運営はオボロの仕事ですので、わたしはよっぽどの問題が無い限りはこれで仕事は終わりです。これでまったりお月見出来ますね。



……今度こっそりとわたしもダンジョンボスをやってみましょうか?ちょっと楽しそうですし。




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