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007 真っ暗な洞窟

「だんだん離れていても当たるようになってきましたよ!」


「同じく。銃の才能はあるのかもしれないな、俺たち」


 ルシアスとミオは手分けして魔物を倒していく。

 そして目標の20体を倒すと、サクッと切り上げて次の狩場へ。


「よーし、これで残すクエストはあと一つだな」


「流石に疲れてきましたねー」


「だな、次から受けるクエストは3つにしよう」


「賛成です」


 休憩は馬車の中で行う。

 客車の外を眺めて「景色が綺麗だね」と言っていたのも今や昔だ。

 二人は背もたれに体重を預け、足を伸ばし、目を瞑って眠りに就く。

 襲われたらどうしよう、などという不安は微塵も抱いていない。


「着きました」


「ふぁぁぁ……。ルシアス君、到着したらしいですよ」


「あー、かったりぃなぁ」


「ルシアス君が5つもクエストを受けるからですよ」


「わぁってるよ、うっせーなぁ」


 肩をゴキゴキ鳴らしながら客車を降りるルシアス。

 怠そうにしていたのはそこまでで、降りたあとはシャキッとする。


「気合を入れていくぞ、ミオ!」


「はいー! って、これはまずくないですか?」


「見るからにまずいな……」


 ここで誤算に遭った。

 最後の狩場が洞窟だったのだ。

 それも一寸先は闇というレベルの真っ暗な洞窟。

 ところが、二人は光源になる物を持っていなかった。


「ミオ、〈ホーリーライト〉の魔法は使えるか?」


 〈ホーリーライト〉は照明魔法だ。

 発動すると術者の頭上に光の球体が浮かび上がる。

 それが周囲をほんのり照らすことで視界を確保する仕組みだ。

 暗いところを探索する時は、松明かこの魔法が基本である。


「すみません、私、魔法は何も使えなくて……」


「俺も使えないんだよなぁ、魔法」


 大体の冒険者が何かしらの魔法を使用可能だ。

 だからこそ、二人は自分たちが落ちこぼれだと痛感した。

 だが問題ない。


「困った時はコイツに頼ればいいだろう」


 洞窟の前でスマホを操作するルシアス。

 〈ショッピング〉を使えば解決策が見つかるはずだ。

 そんな彼の考えは正しかった。


「いいのがあるじゃないか!」


 ルシアスは商品の説明動画を観てにんまりする。

 一つ1万ポイントだったが、迷うことなく二つ購入した。


「これは……ヘルメットですか?」


「商品説明によると〈暗視ゴーグル付きヘルメット〉らしい」


「暗視ゴーグルってなんですか?」


「俺もよく分からん。とりあえずこのヘルメットを被り、前についているこの妙な機械を目に装着したら、横のスイッチをオンにするといいらしい」


 ルシアスは片方のヘルメットをミオに渡す。

 ミオは頭巾を脱ぎ、ヘルメットを被った。


「これでいいのですかね?」


「たぶん大丈夫だろう。スイッチをオンにするぞ」


「はい!」


 二人が暗視ゴーグルを起動させる。

 そして、同時に声を弾ませて感動した。


「わー、なんですかこれ!」


「すげぇ! 中がくっきりだ!」


 二人の装備している暗視ゴーグルは上等な代物だ。

 別の世界では軍用として使われている。

 その効果は絶大で、真っ暗な洞窟が明るく見えた。


「これなら光源は不要ですね!」


「おうよ」


 準備が整ったので、意気揚々と洞窟に踏み入る。


「シュパアアアアアアアアアア!」


 中には大型の蜘蛛が棲息していた。

 この蜘蛛――ビッグスパイダーの乱獲が二人の任務だ。


「まずは一匹っと。にしても、ゴーグルごしだと戦いにくいな」


「たしかに……」


 これまでに比べて効率が悪い。

 それに洞窟の中なので展開し辛いのもきつかった。

 闇雲に銃をぶっ放すと仲間に当たる恐れがある。


「前の敵は俺が処理する。ミオは後ろを警戒してくれ」


「わかりましたー!」


 ミオはくるりと体を反転させた。

 ルシアスの指示を守るべく、後ろ歩きに切り替える。

 しかし、ドジな彼女にこれは荷が重かった。


「うわっと!」


 何もないところでかかとを引っかけて転んだのだ。

 その拍子に引き金を引いてしまい、天井に向かって乱射する。


「おい、なんだよ!」


 振り返るルシアス。

 この咄嗟の反応により、彼は見落としていた。

 前方から押し寄せる蜘蛛の群れを。


「ルシアス君、前! 前!」


「えっ」


 再び前を向くルシアス。

 腕を伸ばせば届きそうな距離まで蜘蛛が詰めていた。


 攻撃を回避するには多すぎる数。

 かといって銃撃するには時間が足りない。


 絶体絶命の危機だった。

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