↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/47

047 終章エピローグ:決着

 勝負は実にあっけなかった。


「これで俺の2勝。おしまいだな」


「嘘だ……そんな……こんなこと……」


 ギルドにて――。

 勝ち誇るルシアスに対し、フリッツは崩れ落ちる。


 勝負は第3ラウンドに突入することなく終わった。

 ルシアスとフリッツの討伐数には圧倒的な差があったのだ。

 その差――なんと50倍。


 フリッツは30分で5体しか倒せなかった。

 第1ラウンドも、第2ラウンドも、結果は5体だ。足しても10体。

 一方、ルシアスは両ラウンドで250体倒した。


 もちろんフリッツは本気で、ルシアスは手加減していた。

 ドローンでフリッツの戦闘を偵察して余裕だと判断したからだ。


 ルシアスが戦ったのは最初の30分だけだ。

 その間に第1・第2ラウンドの敵を250体ずつ狩った。

 で、残りの30分はギルドのテーブル席で休んでいた。


 故に、フリッツ以外の人間は知っている。

 ルシアスが本気ではなかったことを。


「何か卑怯なことをしたんだろ! お前!」


 フリッツがルシアスの胸ぐらを掴む。


 ルシアスは何も言わない。

 代わりに討伐隊の面々が言った。


「負けを認められないのか」


「憐れだな」


「自らが提案した勝負内容だろうに」


「情けない」


「今までもああやって人のせいにしてきたのかな」


 先輩方の言葉が胸に突き刺さり、フリッツは言葉を失う。

 ルシアスは胸ぐらからフリッツの手を離すと、真剣な表情で言った。


「俺からすればずるいのはお前だよ、フリッツ」


「なん……だと……」


「俺には才能がなかった。冒険者学校に入って間もない頃、俺は誰よりもひたむきに努力をしていた。剣の腕を磨き、肉体をいじめ抜き、血の滲むような鍛錬を続け、それこそロイドさんや他の先輩たちみたいになろうと頑張った。だが、俺には才能がなかった。手の皮がめくれるほど剣を振っても、朝から晩まで筋トレをして力をつけようとも、大して努力のしていない才能だけの奴に勝てなかった。その一人がお前だ」


「…………」


「たしかにこうして俺がお前を圧倒できたのは、お前の思っているような“実力”とは違うだろう。お前からすると“運”だと思うかもしれない。だがな、運も実力の内なんだよ。お前には才能があり、俺にはなかった。その代わり、俺には常人とは桁の違う運――スマホがある。俺は俺のカードで戦い、お前はお前のカードで戦った。で、俺が圧勝した。それだけのことだ」


 フリッツは再び崩れ落ちた。


「俺に勝ちたいのであれば、ないものねだりで俺のことを『ずるいずるい』と言うのではなく、自分の才能を磨くことだな。それがお前に与えられたカードであり、お前の能力だ。そうして強くなったら、また俺に挑んでこい。俺は何度だって受けて立つ」


 ルシアスが言い終えると、ミオが拍手した。

 ハルカや討伐隊の面々も拍手する。


「チクショウ……今度は……負けねぇからな……!」


 フリッツは悔し涙を流しながら去っていく。

 足取りが覚束ないので、仲間に支えてもらっていた。


「やりましたね、ルシアス君! ついに完全勝利ですよ!」


 ミオが声を弾ませる。


「ついにって言うけど、よくよく思ったら、ずっと完全勝利じゃないか?」


 これまでのことを振り返るルシアス。

 厄災クエスト、アポロ祭、異次元迷宮の塔、そして今回。

 どれをとってもルシアスの圧勝だった。


「言われてみればたしかに……」


「実力の差はあるけど、ライバルって感じでいいじゃん! さっきの彼!」


 ハルカがニヤニヤしながら言った。


「ライバルと思ったことはないけど……俺を高めてくれる存在ではあったな」


 ルシアスがここまで頑張れたのはフリッツのおかげだ。

 絶対に負けてなるものか、という思いが彼を突き動かしていた。


「若い子らの青春バトルも終わったことだし、そろそろお祝いしないか?」


 ロイドが切り出す。


「賛成だ。アラフォーのおっさんはそろそろ眠くて辛い」


「同じく。余力が残っているうちに盛り上がろうぜ」


 先輩方の意見に、ルシアスとミオも頷いて同意した。


「酒場に行って乾杯するぞー! 私に続けー!」


 ハルカが右手を突き上げる。

 討伐隊の面々が「おー!」と呼応した。


 一同はぞろぞろとギルドを出て、近くの酒場へ向かう。

 ルシアスだけはその場に佇んでいた。


「ルシアス君、どうしました?」


 ミオが気づいて振り返る。


「いや、別に」


 ルシアスはゆっくりと歩きだす。

 歩きながら、考え事をしていた。


(E級に昇格し、フリッツとの戦いにも勝った。大きな達成感があるけれど、同時に燃え尽きた感じでもあるな。明日からどうしたものか)


 今後の予定について考えがまとまらない。

 とりあえず適当なクエストをこなそうか。

 それとも余った金で世界中を旅して回るか。

 色々と思い浮かべるけれど、どれもしっくりこなかった。


「おーい、早くしろー! MVPだからってちんたらするなー!」


 ギルドの外でハルカが手招きしている。


「わりぃ、すぐ行くよ」


 ま、いいか。

 明日のことは明日考えればいい。

 今は皆と一緒にクエストの攻略を祝うとしよう。

 そう考えながら、ルシアスは笑顔でギルドをあとにした。

これにて完結となります。

ちょうど1冊分程度の長さでまとまりました。

皆様に応援しただいたおかげで、今回も楽しく執筆できました。

ありがとうございます。



さて、本作品はいかがでしたか?



お楽しみいただけたのであれば、

【ブックマーク】と【評価】で応援していただけると幸いです。


満足できなかったという人も、

完結記念に採点がてら【評価】していただけると嬉しいです。


既にそれらが済んでいるという方、

応援していただきありがとうございます。


また、【お気に入りユーザ登録】もありがとうございます。

こちらも実はすごく嬉しくて、とても感謝しております。


絢乃は色々な作品を執筆しておりますので、

よろしければ他の作品も読んでやってください。


それでは、ご愛読ありがとうございました!



絢乃

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。