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045 覚醒のルシアス

「仕方ない、やれるだけのことはやるぞ! 覚悟を決めろ!」


 ロイドが喝を入れる。

 それによって、どうにか戦えるレベルに落ち着いた。


「ザコから倒していく! クイーンは俺のPTが時間を稼ぐから、キングはハイネマンのPTが抑えろ。残りの連中はザコだ! 強引な攻めになってもいいからスピードを優先しろ! 多少の怪我は〈ヒール〉でカバーだ!」


「「「了解!」」」


 ロイドの指示で冒険者たちは陣形を変えた。

 クイーンとキングはロイドたちに誘導されて離れていく。

 その隙に残ったPTでザコとの戦闘を開始した。


「一気にたたみ込め!」


「「「うおおおおおおおおおおおお!」」」


 全方位から冒険者が我先にと襲い掛かる。

 その勢いは凄まじく、強化されたアースドラゴンを圧倒する。


「お前さえ逃さなければクイーンは来なかったのに!」


 アースドラゴンを逃したB級PTのリーダーことが剣を振るう。

 その男――レイジョンは実に悔しそうな顔をしていた。

 自分のPTの失態で今の状況がある、と悔いているのだ。


(俺もアサルトライフルより強い武器を探すべきだったな)


 ルシアスも自分の判断を後悔していた。


「よし! ドラゴンは倒したぞ! 次はキングだ!」


 トドメを刺したのはレイジョンPTの連中だ。

 彼らが勢いづいて叫んだその時だった。


「やばい! そっちにキングがいったぞ!」


 ハイネマンPTから悲鳴にも似た声が聞こえた。

 キングの足止めに失敗したのだ。


「ぎゃあああああああああああああああああ!」


 キングの放った炎のブレスがレイジョンたちを飲み込んだ。

 即死だった。

 レイジョンや彼の仲間たちが黒焦げの灰と化す。


「そんな……」


 ミオは口に手を当てて崩落する。

 戦闘で仲間を失うのはこれが初めてのことだった。


「へたれている暇なんかない! ほら、いくよ!」


 ハルカはミオの背中を叩くと、キングに向かって突っ込んだ。


「私に続け! キングを倒すわよ!」


「「「おおー!」」」


 レイジョンの死を悲しむのは戦いのあとだ。

 ベテランの冒険者連中は先ほどと変わらぬ様子で戦いに臨む。

 だが、戦闘内容は(かんば)しくなかった。


「クソッ!」


「皮膚がかてぇよ!」


「ダメージが入らん!」


 クイーンによって強化されたキングの皮膚が頑強過ぎるのだ。

 名匠によって作られた数多の刀が弾かれてしまう。

 当然ながらアサルトライフルによる攻撃も通用しなかった。


「ヴォオオオオオオオオオオオオ!」


 対する敵の反撃は今までよりも鋭く強烈だ。

 特大の炎が冒険者を襲う。

 レイジョンPTに続いて、新たに2つのB級PTが死んだ。

 弱い奴から順に死んでいく展開である。

 ルシアスとミオは距離をとっていることで難を逃れていた。


「まずいですよ! ルシアス君!」


「分かっている、分かっているけど……」


 ルシアスは頭が真っ白になっていた。

 ミオと同じで、彼も仲間の死に慣れていなかったのだ。


「貴方たち――」


 呆然と立ち尽くす二人にハルカが近づく。

 彼女は周囲に聞こえない小さな声で言った。


「――今の内に逃げなさい」


「えっ」とルシアス。


「このままじゃ全滅よ。貴方たちだけでも逃げなさい」


「そんな……そんなこと……」


「ルシアス、貴方は謎のアイテムで船を召喚できるでしょ。貴方たちが大魔王イカとキングオクトパスを倒したことは知っているんだから」


「そ、そうだけど……」


「だったら船で逃げなさい。貴方たちは私が半ば強引に連れてきたようなもの。こんなところで死ぬ必要はない」


「ちょっと、ハルカさん」


 ミオが言い返そうとするが、ハルカはそれを許さなかった。


「いい? 今の内に逃げるんだよ! 私たちが時間を稼ぐから!」


 ハルカは再びキングに突っ込んだ。

 誰よりも敵に近づき、相手の懐で剣を振るう。

 もしもキングが真下に向かってブレスを吐いたら即終了だ。


「私たちだけ逃げろって言ってましたけど……ルシアス君……」


 ミオはどうしたらいいか分からずルシアスを見る。


「……できっかよ」


 ルシアスは小さく呟いた。


「俺たちだけ逃げるなんて、そんなことできっかよ!」


 ハルカに逃げろと言われたことで、ルシアスは吹っ切れた。

 絶望は後回しだ。やれるだけのことをやって、ダメなら盛大に散ってやる。

 そう考えた。


「ミオ、敵の様子を見ていろ!」


「ルシアス君はどうするのですか!?」


「切り札を探す!」


「分かりました!」


 スマホを取り出すルシアス。

 ミオがキングの動きを注視する中、彼は素早く武器を探した。

 アサルトライフルを凌駕する火力が必要だ。


「これだ!」


 そして、ルシアスは最高の武器を見つけた。

 同じ銃火器でありながら、アサルトライフルより一桁多い価格。

 本体価格もさることながら弾丸もかなりの高額だ。

 しかし、商品説明の動画を観る限りコレが最適だと思った。


「さぁこい、新たな武器よ!」


 アサルトライフルを捨てて、ルシアスは武器を購入する。


「なんですかこれは!?」


 召喚された武器を見て驚くミオ。

 ルシアスは自信に満ちた表情で商品名を言った。


「ロケットランチャーだ!」


 彼が買ったのは最強クラスの銃火器ロケットランチャー。

 アクション映画では、使用すると必ず盛り上がるド派手な武器だ。


「使い方はアサルトライフルと大差ない。この照準で狙うんだ」


「分かりました!」


 ルシアスとミオは互いにロケットランチャーを構える。

 肩に担ぎ、スコープ越しにキングを睨む。


「ミオ、照準は定まったか?」


「はい!」


「よし、俺の合図で撃つぞ」


 ミオが頷くのを確認したら、ルシアスは大声で言った。


「キングと戦っている先輩方、下がってくれ! 俺たちが仕留める!」


 彼の声に皆が反応する。

 なんだなんだ、と素早く振り返った。


「また見たことのない武器を構えているぞ」


「本当に大丈夫なのか?」


「分からないがダメ元で従おう」


「そうだな」


 ベテランの冒険者連中は迅速な判断で従った。


「やっぱり貴方は戦う道を選ぶのね」


 ハルカはクスリと笑う。

 逃げろという自らの発言は本心によるものだ。

 しかし、自分の見込んだ男なら逃げないだろう、と思っていた。


「見せてちょうだい! ルシアス! 貴方の力を!」


「分かってらぁ! ――ミオ、撃つぞ!」


「はいーっ!」


 二人は引き金を引いた。

 二発のロケット弾が一直線に飛び、キングに命中する。

 着弾すると派手に爆発した。


「グォオオオオ……」


 キングの呻き声が響く。

 だが、そのあとに続く声はなかった。

 猛威を振るっていたキングがたちまち魔石になる。

 ロケットランチャーの攻撃力が、キングの防御力を上回ったのだ。


「ほ、本当にやっちゃったよ……!」


 ハルカが両手で口を押さえて涙を流す。

 キングを倒した衝撃が凄すぎて妙な感動を覚えていた。


「すげぇ……すげぇよ」


 誰かが呟く。

 次の瞬間――。


「「「すげぇえええええええええええ!」」」


 ――誰もが興奮のあまりに叫んだ。


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