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037 白銀の翼竜

 49階は大平原。

 背の低い雑草が生い茂る緑のフィールド。

 地面は平らで、裸足で走り回ることができそうだ。

 そこに棲息する敵の数は1体のみ。


「もう1000発は撃ちましたよ! 私、首と肩が痛くなって来ました!」


「なんなんだよ、あいつはよぉ!」


 ルシアスは上空を見上げながら怒鳴る。

 そこには巨大な翼竜が飛んでいた。

 華奢なフォルムで、翼は鋭く長い形状をしている。

 空の走り屋――プラチナプテラだ。


 アサルトライフルとプラチナプテラの相性は悪い。

 遥か上空を飛び続けていて、いっこうに近づかないからだ。


 しかし、敵は決して戦う気がないわけではない。

 その証拠に、ルシアスたちから離れることはなかった。

 ひたすらに彼らの上空を旋回して泣き喚いている。


 プラチナプテラのこの行動には二つの意味がある。


 一つは相手の存在を周囲の魔物に知らせること。

 通常であれば、鳴き声に導かれて多くの魔物が押し寄せてくる。

 幸いにもここに他の魔物はいないため、この点は問題なかった。


 もう一つは相手の疲弊と戦意喪失を狙ってのこと。

 ひたすらに攻撃を回避し、存在感をアピールすることで憔悴させる。

 そうして生まれた隙を突いて超高速の奇襲を仕掛けるわけだ。


 プラチナプテラは決して強い魔物とは言えない。

 だが、倒すのが困難なことからA級に指定されていた。


「あんなのどうやって倒すんだよ!」


「もしかして倒せないタイプなんじゃないんですか?」


「ありえる」


 いや、ありえない。

 倒せないタイプの魔物など存在しない。

 現にプラチナプテラの倒し方はある。


 一般的には偽りの隙を突かせる方法で倒す。

 奇襲してきた敵に反撃することで打ちのめす戦法だ。


 残念なことに、ルシアスたちにこの戦い方は無理だった。

 経験の浅さから警戒感を押し殺すことができない。

 それに加えて、プラチナプテラの習性を把握していなかった。

 どうすれば近づいてくるかが分からないのだ。


 だからルシアスは、別の手で対処することにした。


「もう我慢できん! ぶっつけ本番だがアレを使うぞ!」


「分かりました! ……で、アレってなんですか?」


「コイツだ!」


 ルシアスが召喚したのは戦闘機だった。

 二人乗りで、垂直に離着陸できるとんでもない代物だ。


「俺は説明書を読む。ミオは威嚇射撃を続けていろ!」


「あいあいさー!」


 ミオが「うりゃりゃー」とアサルトライフルを撃ち続ける。

 プラチナプテラは嘲笑するように喚きながら軽やかに回避。


「……よし、操縦方法はマスターした。ミオ、次はお前だ。前の席には俺が座るから、お前は後部席の操縦方法をマスターしろ。攻撃の要はお前だからな」


「了解です!」


 ルシアスは説明書をミオに渡し、威嚇射撃を開始する。

 しばらくして、ミオが「マスターしました!」と声を上げた。


「よし、やるぞ!」


「はい!」


 二人はヘルメットを被り、戦闘機のコックピットに着く。


「シートベルトはしたか?」


「しました!」


「よし、発進!」


 ルシアスの操作で戦闘機が動いた。

 ふわりとその場に浮き、ゆっくりと高度を上げていく。


「ルシアス君! 上から敵が突っ込んできます!」


「なんだと!? ならば!」


 ルシアスは垂直離陸を止めて、真っ直ぐ前に飛ばした。

 とんでもない加速による凄まじいGが二人を襲う。


「なんですかこのスピード!」


「やばいやばいやばい! 速すぎだぞコイツ!」


 戦闘機の常軌を逸した速度に慌てる。

 しばらくはプラチナプテラどころではなかった。


「よしよし、もう大丈夫だ」


 どうにか操縦に慣れてきた。


「ミオ、レーダーはどうだ?」


「問題ありません! 敵は後ろから私たちを追いかけてきています!」


「オーケー、ぐるりんアタックでケツを突くぞ!」


 ルシアスの言い方は独特だった。

 それでもミオには伝わり、彼女は「はい!」と頷く。


「いくぞ! ぐるりん!」


 戦闘機の機首が上に向き、緩やかに空中で宙返りを決める。

 これによって、追う側と追われる側が入れ替わった。


「グェ!?」


 プラチナプテラは驚いた様子で左右に首を振る。

 どこを見渡しても戦闘機が見えない。

 真後ろにいることには気づいていなかった。


「ミオ! いまだ!」


「はい! ロック、オーン!」


 ミオが誘導ミサイルの照準をプテラに合わせる。

 戦闘機から細くて赤いレーザーが照射され、プテラに当たった。


「完了です! いつでもどうぞ!」


「よし、やるぞ!」


 ルシアスはミサイルのスイッチを躊躇うことなく押した。

 戦闘機からミサイルが切り離され、数秒後、超高速で敵に突っ込んだ。


「グェ!? グェェェェ!」


 寸前のところでミサイルに気づくプテラ。

 慌てて降下して回避しようとする。


「馬鹿め! そいつはどこまでもお前を追いかける!」


 ルシアスの言葉通り、ミサイルはプテラを追尾した。

 ぐにゃりと曲がって追いかける。

 そして、必死に逃げるプテラのケツにミサイルが突き刺さった。


 ドゴォオオオオオオン!


 強烈な爆音が響く。

 プラチナプテラは即死し、地面に魔石が落ちていく。


「討伐成功だ!」


「やったー!」


 喜ぶ二人。

 しかし、喜ぶのはまだ早かった。


「あれ? おかしいぞ」


「どうしたんですか?」


「垂直に動くシステムが使えない」


 マシントラブルだ。

 離着陸で使う垂直機動システムが故障した。


「そ、それって、もしかして」


「着陸できないってことだ」


「なんですとー!?」


「落ち着け、大丈夫だ。速度を落として草原に滑りこめば……」


「ルシアス君、そんな高度な操縦できるんですか!?」


「……無理だ」


「ダメじゃないですかー!」


 このままでは燃料切れで墜落してしまう。

 二人は今までで最もマズい状況に陥っていた。

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