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036 ここでリタイアするといい

 朝。

 朝食を済ませると、ルシアスたちは行動を再開した。


 まずは不要な物を〈吸収〉で取り込んでいく。

 得られるポイントは購入時の半値以下。

 なので、今回は結構な額のポイントを消費したわけだが……。


「ポイントが減ったかどうか分からねぇ」


 というのがルシアスの本音だった。

 ここまでの乱獲によって、ポイントが貯まりまくっているのだ。

 もはや〈ショッピング〉や〈タクシー〉は完全無料に相違ない。


「これで準備完了だな」


 作業を終えるルシアス。

 ミオが「今日も頑張りましょうね!」と気合を高める。


「それにしても、このフロアには誰もいないものだな」


「朝になっても私たちだけとは驚きましたね」


「これだったらもっと広く陣取ってもよかったかもなぁ」


「シャワーじゃなくてお風呂でもよかったですね!」


 そんな話をしながら黒いゲートをくぐろうとする。

 その時、40階に他のPTが現れた。

 平均年齢40歳を超える熟練の6人組だ。


「おー、今年の40階はえらく寂しいな」


 PTリーダーのおっさんが言う。

 その声が聞こえたことで、ルシアスたちは存在に気づいた。

 振り返る二人に、おっさんが近づく。


「君たち、たった二人でここまで到達したのかい? その若さで」


 ルシアスは「そうだよ」と短く答えた。


「大したものだね。すごいじゃないか」


 おっさんは自分の発言にウンウンと頷く。

 それから、真剣な表情で「でも」と白いゲートを指した。


「悪いことは言わないからここでリタイアするといい」


「それはどういう意味だ?」


「その質問が出るってことは、41階に挑むのは初めてだろ?」


「まぁな」


「教えてあげるけど、ここから先は難易度が跳ね上がるんだ。これまでもそれなりに厳しかったが、この先に比べたら可愛いものさ。たった二人で踏破するのは厳しいだろう。それもまだデビューして間もないような君たちじゃ絶対に無理だ」


 おっさんは老婆心で助言していた。

 しかし、その言葉はルシアスたちには響かない。


「忠告には感謝するけど、俺たちは黒いゲートを進ませてもらうぜ」


「そうか……。ならば無理には止めないけど、危険だと思ったらさっさと撤退するんだよ。まだまだ人生はこれからなんだから」


「肝に銘じておこう」


 ルシアスとミオはおっさんに会釈してから黒いゲートに進んだ。


 ◇


 41階から先も基本的には魔物退治だ。

 フィールドやシチュエーションは異なるが根本は同じ。

 魔物を駆逐すればクリアだ。


 41階はオーソドックスな殲滅戦だった。

 だだっ広い草原の上で、前方から迫り来る大群を倒すだけ。


「ルシアス君、お願いします!」


「任せろ!」


 ルシアスはアサルトライフルを四挺も召喚した。

 同時にこれまで使っていたお古のライフルを〈吸収〉する。

 定期的に交換することで弾詰まりを防いでいた。


「さぁやるぞ! ミオ!」


「はい!」


 二人は左右の手にそれぞれアサルトライフルを持つ。

 銃床を腋で挟み、敵に向かって四挺同時の一斉射撃を開始した。


「「「GYAAAAAAAAAAAAA!」」」


 魔物たちは断末魔の叫びを上げながら死んでいく。

 しかし、全てを駆逐するのに1マガジンでは足りなかった。


「弾切れだ!」


「私もです!」


 二人は同じタイミングで片方のライフルを捨てる。

 それによって空いた手で弾倉を排出。

 懐から予備の弾倉を取り出し、素早く装填した。

 その動きは流麗であり迅速。

 何度となく繰り返した動作なので、体が勝手に動いた。


「オラオラオラァ!」


「えいやーっ!」


 ドカドカとアサルトライフルを撃ちまくる。

 魔物の群れは距離を詰め切れずに死んでいく。

 おびただしい数の魔石が草原に転がる。


 そして――。


「終了!」


「お疲れ様ですー!」


 全ての魔物が魔石と化した。


 それと同時に現れる宝箱。

 中には何度となく見た漆黒の水晶玉が入っていた。


「なぁ、ミオ」


 ルシアスはそこらに転がる魔石を〈吸収〉しながら言う。


「ぶっちゃけ、ここの敵ってこれまでと変わらなくなかったか?」


「それ、私も思いました」


「あの冒険者のおっさん、こけおどしで言っていたのかな」


 あのおっさんとは40階で話した冒険者のことだ。


「どうなんでしょう……?」


「ま、なんでもいいか、楽勝だったし」


「ですね!」


 二人は気づいていなかったが、41階は難易度が跳ね上がっていた。

 ザコとはいえ、敵は基本的にD級であり、その数は数千体だ。

 これまで戦ってきたE級やF級とは明確な差がある。

 ただ、アサルトライフルの前では等しく無力だっただけのこと。


「どんな敵でもこの銃があればへっちゃらだな!」


「はい! これは51階のクリアもあるかもしれませんね!」


 ウキウキで黒いゲートを進む二人。

 その後も順調に階を上がっていく。

 だが、50階が目前に迫った49階で問題が起きた。


「クソッ! 当たらねぇ! 当たらねぇよ!」


「お願いだから当たってくださーい!」


 アサルトライフルの攻撃を軽やかに躱す敵が現れたのだ。


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