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002 ポイントの稼ぎ方

「おかしいな、使い方はあっているはずだが」


 何度も引き金を引くが、やはり弾は発射されない。


「なんだ、本当にあんな威力の武器が手に入るわけじゃないのか」


 ルシアスが勝手に幻滅したその時。

 懐にしまっていたスマホがブルブルっと震えた。

 取り出して確認すると、画面に答えが書いていた。


『銃を使用するには銃弾が必要です。弾倉を購入しましょう』


 そう、アサルトライフルには弾倉が装填されていなかった。


「この武器の弾倉は……あった。って、有料かよ」


 アサルトライフルの弾倉は一つにつき3000ポイント。

 このポイントを稼ぐ方法は二通りあるが、今はどちらも実行できない。

 すると当然ながら買うことはできない――と思われた。


「ラッキー、買えるじゃん!」


 幸いにも最初からポイントがチャージされていた。

 その額は1万ポイント。

 これならば弾倉を購入することが可能だ。


「これでいいのかな」


 ルシアスは弾倉を購入し、アサルトライフルに装填する。

 それから改めて引き金を引く。


 ズドドドドドッ!


 強烈な振動と共に数発の弾丸が発射された。

 その音に驚いた通行人たちが振り向く。


「なんだ今の音は!」


 誰かが叫んだ。

 それに対してルシアスは――。


「なんだ今の音は!」


 同じセリフを叫んで誤魔化す。

 音の出所が自分ではないと演出する。


(地面に銃弾の穴が空いている……この武器は本物だ)


 ルシアスの口から笑みがこぼれる。

 これはもしかすると冒険者を引退せずに済むかもしれない。

 そんなことを思った。


 ◇


 翌日、ルシアスは単独(ソロ)で魔物退治に繰り出した。

 アサルトライフルの試し撃ちをするためだ。


「ここならいざという時は剣で対処できるから安心だな」


 ルシアスがやってきたのは、街からほど近いのどかな高原だ。

 最弱と名高いG級モンスターことスライムの棲息地である。


「ぷにー」


「ぴゅーいー」


 半透明の青いぷにぷに――スライムがそこらを徘徊している。

 ぴょんぴょん、ぴょんぴょん、元気そうに跳ね回っていた。


 スライムは、ルシアスが軽々と屠れる数少ない雑魚だ。

 その姿は彼に安心感を与えた。


「見せてくれアサルトライフル、お前の強さを!」


 照準をスライムに合わせ、ルシアスは引き金を引いた。


 ズドドドドドッ!


 強烈な銃声が高原に響く。

 周囲のスライムが蜘蛛の子を散らすように逃げていった。

 そして、ルシアスに狙われたスライムは――。


「すげぇ! すげぇよこの武器!」


 屠られていた。

 息絶え、菱形のクリスタル――魔石と化している。


 魔石は貴重な収入源だ。

 冒険者は魔石を換金することで生計を立てている。


「やはりこの武器は本物……とんでもない代物なんだ!」


 魔石を回収したルシアスは、嬉々とした様子で狩りを継続する。

 その場に存在する全てのスライムを根絶やしにするつもりで暴れた。

 ――が、しかし。


「チッ、もうおしまいか」


 弾切れに陥る。

 狩りを中断して、スマホを取り出す。

 新たな弾倉を買わなければいけない。


「おー、なかなか貯まってるじゃないか」


 〈ショッピング〉を開き、ポイント残高を見てにんまりする。

 所持ポイントが1万1500ポイントになっていたのだ。


 魔物を倒したことでポイントがチャージされていた。

 これがポイントを貯める主な手段だ。


「倒したスライムの数は9体で、ポイントは4500増えている。ということは、スライムは1体につき500ポイントになるわけか」


 素早く暗算するルシアス。


「これならよほど無駄撃ちしない限りポイントの収支はプラスだな」


 それからのルシアスは先ほどよりも激しかった。

 アサルトライフルを単発モードにして、一発一殺のペースで狩っていく。


「時間はまだあるというのに……!」


 しばらくして新たな問題が発生した。

 敵を狩りすぎて魔石を持ちきれなくなったのだ。


 魔物は一定時間が経過すると再出現する。

 再出現までの時間はバラバラだが、スライムはえてして短い。

 おかげで、狩っても狩っても高原にはスライムが溢れていた。


「たしかチュートリアルでは……あったあった」


 ルシアスは新たなアプリを起動した。

 それは〈吸収〉というもので、魔石を吸収することが可能だ。

 起動するとカメラが立ち上がり、それで撮影した魔石が対象になる。

 対象の魔石は光と化してスマホの中に取り込まれていった。


 そして、取り込まれた魔石はポイントに変換される。

 レートは倒した際に自動チャージされる分と同じだ。

 つまり、スライムの魔石を吸収すると500ポイントになる。


「これなら拾えない魔石も有効活用できるな」


 狩りを再開するルシアス。

 その日は日が暮れるまで狩り続けた。

 生まれて初めて狩りが楽しいと思った。

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