013 第一章エピローグ:結果発表
誰もが固唾を飲んで見守る中、ギルドの受付嬢が掲示板に紙を貼る。
そこには厄災クエストにおけるPT別のランキングが掲載されていた。
「1位になれる自信があったんだがな」
「世の中そう甘くないものですねー」
ルシアスたちは早々にため息をついた。
上位10PTの中に自分たちが入っていなかったからだ。
「俺の名前は……どこだ」
「ありましたよ! ここ! ここです!」
ミオが40位台を指す。
『44位 ルシアス 481,339点』
ルシアスは44位だった。
気持ち的には1位だったが、現実はこんなものだ。
「やっぱり上位は外でA級とB級が総なめだな」
彼らの背後で誰かが言う。
その言葉に他の冒険者たちが頷く。
連中は30位までのメンツを何度も見ていた。
「外で戦えていたら1位になれたかな? 敵の乱獲って内容は俺たち向きだし」
「きっと無理ですよ! 1位になるならせめてあと30人くらいはPTメンバーが必要だと思いますよ! 分からないですけど!」
「それもそうだなー」
ルシアスたちは掲示板を離れて受付に向かう。
今朝受けたF級クエストの報酬を受け取り、魔石の換金を済ませる。
「手続きは以上となります」
受付嬢が機械的な口調で言う。
「やっぱり44位じゃ昇格は無理だったなー」
「でも、きっと大きく前進しましたよ! 私たち、頑張ったもん!」
「とりあえずメシにしようぜ、もう腹ぺこだ」
「私もさっきからお腹がぐぅぐぅ鳴いてます」
二人は軽い調子で話しながらギルドを出る。
「あっ、ルシアスとミオじゃん!」
声を掛けたのはハルカだ。
二人と入れ違いで中に入ろうとしていた。
「ハルカはこれからクエストかい?」
「そっそ! 厄災が終わって門が開いたからねー」
「俺たちはメシを食ったら休ませてもらうぜ、疲れた」
「うんうん、お疲れ様。結果はどうだったー?」
「いやぁ全然だったよ」
「44位でしたー!」
「そっかそっか」
「じゃ、もう空腹で死にそうだからまたなー」
「ほいほーい」
ルシアスとミオが去っていく。
「えっ? 44位!?」
少し遅れてハルカは思った。
二人の順位が高すぎる、と。
「どいてどいてー!」
ハルカはギルドに飛び込み、人だかりを掻き分けて掲示板を見る。
たしかに44位にルシアスの名があった。
「嘘……!」
信じられなかった。
ルシアスとミオは共に新米で、しかもPTの人数は二人だ。
それなのに、B級以上しかいないと言われているTOP200に名を連ねていた。
しかも44位と極めて高い。
「門の上から迎撃していたから高得点の魔物は倒せていないわけだし、しかも二人PTでしょ。どういうことよ、これ」
前代未聞のことだった。
「もしかして今回は参加者が少なかったのかな?」
ランキング表の一番下に目を向ける。
順位は500位で終わっていた。
「これじゃ分からないわね」
ハルカは受付カウンターに行き、受付嬢に尋ねる。
今回の参加PT数はいくつだったのかと。
「全部で約6000PTですね。その内、B級以上のPT数は250ほどです」
「例年より遥かに多いじゃない!」
ますます理解できなくなった。
「謎が多すぎる……」
城壁の上で戦っていたのにもかかわらず、TOP50入りを果たしている。
しかもメンバーはたった二人で、どちらもキャリア1年のド新人。
それだけでも十分に謎だったが、何よりも謎なのが二人の反応だ。
『いやぁ全然だったよ』
ルシアスの言葉が脳裏によぎる。
彼は本気で「大したことない」と言いたげな口調だった。
ミオにしたって、ルシアスの言葉を肯定している様子だった。
ありえない。
普通なら諸手を挙げて喜ぶはずだ。
道行く人に自慢してもおかしくない。
そのくらいに異例、とんでもない大活躍だった。
「謎の武器……とんでもない成績……44位を残念がる……」
ハルカは口をポカンとして呟く。
「あの子ら、何者なの……」
◇
C級以下の中では断トツで一番の好成績だった。
――ということを知らず、ルシアスたちは酒場で盛り上がっていた。
「戦いのあとのメシは最高だなー!」
「いえーい!」
テーブルに並べられた料理にがっつく二人。
「にしてもPTの数が500しかないのは意外だったよな」
「本当ですよ! 冒険者の数は数万人ですよ!? なのに500PTってどういうことですか!?」
「厄災クエストはPTのメンバー数に制限がないからなー。他の連中は数百人どころか数千人規模のPTを組んでいたのかもしれない」
「上手に立ち回っているわけですか! 私たちとは大違いですね!」
ルシアスとミオは勘違いしていた。
厄災クエストに参加していたPTの数を。
ランキング表に500位までしかなかったからだ。
だからPTの数が500個しかないと思い込んでいた。
本当は約6000PTだったというのに。
この勘違いが発生したのは、二人の無知だけが理由ではない。
ランキングに冒険者ランクの記載がなかったことも大きい。
それによって、他の冒険者も気づかなかったのだ。
F級冒険者が44位にランクインしているということに。
もし気づいていたら大騒ぎになっていただろう。
そして、騒ぎの中でルシアスたちも気がついたはずだ。
自分たちの戦果が客観的にはべらぼうに凄まじいことを。
「でもまぁ500位中の44位なら健闘したほうだろ」
「ですよね! 上位1割に入っているわけだし!」
「アサルトライフル様々だぜ」
「これからも頑張りましょうね!」
「おうよ!」
二人は満面の笑みを浮かべ、「かんぱーい!」とジョッキを当てた。
これにて第一章が終了です。
第二章も毎日更新で取り組めれば……と考えています。
本作品では可能な限りおねだりを避ける方針ですが、
章の終わりなので、たまのワガママをご容赦ください。
本作品をお楽しみの方、続きが気になる方、
【評価】と【ブックマーク】等で応援していただけると幸いです。
お手数をおかけしますが、何卒よろしくお願いいたします。
絢乃




