特訓
あれ以来、ナーサは二人きりになるのを避けるようになった。
(二人きりになりそうになると、顔を真っ赤にして走って逃げるって、もしかして既に惚れられている?いつの間にハーレムルートに!?テンプレって言えばテンプレだけど…)
と考えていたが、とりあえず放置してヴィルから短剣の基本の型を教えてもらった。
(素振りしていると、たまにナーサが壁チラするんだな~、出来ればニナにしてほしい。)
♦
ヴィル夫妻が出発の日が来た。
「トモヤ、ちょっとこい。」
ヴィルが内緒話をして来た。
「トモヤ、均等に愛せないならハーレムは止めとけ、最後に地獄を見るのはお前だ。」
と、皆に聞こえない声で耳打ちしてきた。
「違いますよ!」
俺は慌てて言い返したが取り合ってもらえず。
「ハハハ!では行ってくる。」
ニタニタしながらリーリさんの元に戻り、2人で宿を出て行った。
「トモヤさん、何が違うんですか?」
とニナがニコニコしながら聞いてきた。
「いや~、そのですね・・・」
「フン!どうせ良からぬ事でも言ったんでしょ!」
(ナーサさん、鋭いです。)
ナーサの顔はまだ少し赤いが、ニナも居るので話しかけれる様だ。
「と、とりあえず素振りでもするわ~」
と誤魔化し宿の裏に逃げようとした。
「ちょっと待ちなさいよ!」
「どうした?」
「素振りだけじゃなかなか上達しないから、模擬戦をしない?」
「え?!早いんじゃ?」
「何よ、文句でもあるの?!」
「い、いやないです。」
目を細めて睨んできたので思わず同意してしまった。
「ニナ、悪いけどこいつの回復よろしくね。」
「はい、いいですよ。」
3人で宿の裏に移動する。
「あんたは短剣で、私は木剣でいいわ!」
「え!刃がついてるし、危ないですよ!」
「舐められたものね!今の貴方の実力だと無手でも勝てるわよ!」
「いや、さすがにそれは言い過ぎだと。」
ニナの額に青筋が浮かんだ。
「つべこべ言わずに掛ってきなさい!!」
「は!はい!!」
(やべ~、マジ切れだ!仕方がない木剣を切るようにすればいいか。)
と高を括って短剣で右からの横払い、木剣を切る積もりで切りかかると、ナーサは一歩踏み込み、切りかかった右腕を掴んだ。
「遊んでいるの?真剣にしなさい!!」
「トモヤさん、それはさすがにダメですよ。」
(ゲ!!2人からダメ出しもらった!怖いけど、もっと真剣にしないといけないな!)
「怪我させそうで怖かったんだ、これからは怪我させるつもりで行くよ。」
「はぁ~ダメダメだね!殺す気で来なさい!」
「え!!!それはさすがに!」
「何甘えてるの!練習にならないでしょ!」
「私が居ますから、大丈夫です!」
(聖女のニナがいるから大丈夫か!)
「分かった!真剣にやるよ!」
腕を放してもらい、今度こそ真剣に切りかかる。
まずは上段斬り、左に躱された同時に木剣で腹にキツイ一撃をもらった。
「カハ!ゲホゲホ。」
「さっきよりマシだけどまだまだよ!」
今度は横払いで切りかかるが、バックステップで躱した後すぐに前にステップして、頭に【コン】と音が鳴るぐらいの一撃をもらった。
「いた~~!」
「良い音したわね!」
俺が左手で殴られた頭を摩ってると、ナーサの顔が怒った顔は消え、ニコニコ笑っている。
(殴られたお返しだ!)
「ナーサ、いつもその笑顔でいたら可愛いのに。」
「へ?|にゃにおいってるにょかにゃ《何を言ってるのかな》?」
ナーサの顔が【ボン】と音が出るぐらい一気に真っ赤になる。
「え、いや~ナーサって美人だから笑っているとモテるだろ~な~と思って。」
「ウヒョ~~~~~|ちぃみ、心ににゃいこといにゃわにゃいで《君、心に無いこと言わないで》!」
目がグルグルと回りだし、体まで真っ赤になってしまった。
(少しやり過ぎたかな?)
「ほら、ニナもそう思うでしょ?」
「し・り・ま・せ・ん!!」
ニナがプイとそっぽを向いた。
この日、これ以降練習にならず、2人の間をアタフタしながらウロウロするしかなかった。
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