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姫と七人の守り人  作者: ウィッツ
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第一話 姫と教育係 その②

「姫。いつもより遅いようですわね。淑女たるもの時間よりも早めに行動するものですよ」


作法室に入り扉を完全にしめたとたん


礼儀作法の先生であるマリベーラは赤い眼鏡を押し上げながらキツイ口調でルイディアナを叱責する。


「はい。申し訳ございません」


今にも泣きそうな表情でルイディアナは頭を下げるが、マリベーラは厳しい顔つきのままルイディアナを見下ろす。


「わたくしは謝罪の言葉が聞きたいわけではありませんの。


姫の将来の事を考えて忠告してあげているまでですわ。


ですから今日は本日の課題に移る前に時間の大切さを教えてあげます」


床を叩くピンヒールの音を響かせながらマリベーラはルイディアナに近づくと


おもむろに姫の足をふんづけた。


「・・・っ!」


とがったピンヒールは姫の靴ごしにも激しい痛みをあたえる。


「良いですか。これは体に悪い行いをしたと言うことを教える為の行動です。


あなたの為にしている事ですからね」


そう言ってさらにマリベーラは足に力を入れて姫の足に痛みを与えた。


痛さでルイディアナは悲鳴をあげそうだったが、そんな事をすれば部屋の外で待機している護衛が何事か入ってくるだろう。


そしておおごとになってしまう事はルイディアナにとって望ましくない事だった。


その為、必至に唇をかみ痛みを我慢する。


「さて姫様を一人前の淑女に仕立て上げるには時間がいくらあっても足りませんからね。すぐに授業を始めますよ」


やっとルイディアナの足から靴を離したマリベーラは、姫が痛みから回復するのも待たずに授業を始めた。


「まずはこの間の復習から。そちらの端からここまでまっすぐに歩いてきなさい」


ルイディアナがいるドア側の壁から、マリベーラのいる反対側の壁まで歩くように指示を出す。


「はい」


まだ踏まれた足が痛むが、もたもたしているとまた怒られるとわかっているルイディアナは痛みに耐えながら足を一歩踏み出す。


顔は凜と前を向き、しかし口元は上品な微笑を浮かべ


手は肘を曲げ、お腹の上あたりで軽く両手を重ねる。


足は前に出し過ぎず淑やかにゆっくりと滑らかに運ぶ。


決して足音はたてぬよう。


上品に、それでいて姫という威厳を醸し出しながら淑やかに歩く。


ほとんど完璧に近い歩き方だった。


しかし・・・。


さきほど踏まれた足の痛みに耐えきれず、あと少しでマリベーラのいる壁側まで辿りつけると言う所で、ぐらりと体がよろけた。


その瞬間。


それまで冷めた目で淡々と見ていたマリベーラの形相が、恐ろしいまでの険しい表情へとかわった。


「姫!!なんですか、その有様は!たったこれだけの距離すら満足に歩けないなんて情けないと思いませんか!?」


つかつかとヒールの音を響かせながら、外には聞こえない程度の怒鳴り声をあげながらマリベーラは姫に近づく。


「あなたは姫としての素質が全くありませんわね。こんなに出来の悪い生徒が国民から姫様などと敬称で呼ばれていると思うと私は情けなくなります。


良いですか、この私が生徒にもってあげた以上、どんなに愚者な姫であっても一人前に育ててあげます。


本来ならこんなに出来の悪い生徒はお断りするのですが、あなたが仮にも“姫”であるからこそ仕方なく教えているのですからね。


そこの所を理解して私に感謝するのですよ」


「はい」


マリベーラの言葉が一つ一つ刃のようにルイディアナの心に突き刺さる。


礼儀作法の授業のたびに浴びせられる冷たい言葉。


そのせいでルイディアナは自信をすっかりなくし、そしてマリベーラが言う事が正しいのだと・・・自分は世界一の愚か者の姫なのだと思うようになっていた。


だからこそ上手くいかない自分が情けなくて涙が出そうになる。


しかしここで泣いたらまた怒られる事もわかっていたので、ルイディアナはぐっと涙をこらえ、ただ素直に頷く事しかできなかった。


「わかっているならよろしい。


けれど本当に理解しているのか態度からではわかりませんから体に刻みこみなさい」


そう言って姫の左腕の袖をめくり上げ


普段は服で隠れる位置に狙いをさだめてマリベーラは自分の服のポケットから取り出した制裁用の小さな棍棒をとりだして、おもいっきり振りおろした。


痛みに耐える為ルイディアナが目を固く閉じ裁がすぎるのを待つ。


しかしその絶好のタイミングで作法室の扉がノックされた。


「・・・誰ですか授業中に尋ねてくるような無作法者は」


制裁寸前だった棍棒をポケットに隠しながら、大きく舌打ちをしてマリベーラは扉へと近づく。


「どなたでしょうか?ただいま姫様との礼儀作法の授業中ですが」


さきほどルイディアナと話していた時とは真逆の優しい声でマリベーラは扉ごしに声をかける。


「すいません。ルッツ・B・レイティスです。授業中と言う事は存じ上げておりましたが、今日はマリベーラ殿にお願いがありまして・・・」


「まあ!ルッツ様!!」


訪問者の声を聞いた途端にマリベーラは少女のように瞳を輝かせて、鍵をあけて扉を開く。


「まあ、私などに頼みごとなど・・・いったいなんですの?」


頬を赤らめながらマリベーラはルッツの整った綺麗な顔立ちをうっとりと眺めている。


「ええ。礼儀作法の教師としてご高名であるマリベーラ殿の名指導ぶりをこの目で一度だけでも拝見させて頂きたくて・・・どうかお聞き頂けるでしょうか?」


ルッツはにっこりと女性を魅了する微笑みを浮かべながら、マリベーラに伺う。

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