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#7

何本ものろうそくに照らされた長い廊下。

私は彼に導かれ、夢見心地で歩いていた。


どこに行くのかも、何が起こるのかもわからないけど、先生と一緒にいれば大丈夫。

根拠のない、確信のようなものがあった。


廊下は階段になり、それを下ると馬が一頭繋いであった。



「乗りなさい。」



私だけ乗ることにためらうと、先生は私をそっと抱き上げて馬に乗せた。


彼が轡を引いて殺風景な道を行く。


誰もいない。


ところどころに燭台があり、道を微かに照らしている。


幻想的といえば聞こえはいいけれど、正直怖い。





「ここは…どこなんですか・・・・・」



「オペラ座の地下だ。」




二人の声と、足音だけが響き、静寂を更に濃くする。


その先には湖のようなところがあり、馬から下りて船に乗って進んだ。


建物の中なのに何て不思議なところなんだろう。






この人は…何なのだろう……


「怖がるな。私はお前の音楽の天使なのだから。」



私の心を見透かしたように微笑む彼の声に私の吐息が重なって。


二人のデュエットはいくつもの響きを生み出し、私の心には彼が住み着いて、まるで一つとなったよう。







ろうそくがいくつも水面に浮かび、霧のなか、舟は進み、白い壁に突き当たった。



彼がにわかに壁に手を触れて、何か呟く。


と。










「魔法?!」




壁の真ん中が重たげな音を立てて開き、壁は門へと変わった。






「驚いただろう。

この門には水力を使っているんだ。

魔法なんて得体の知れないものじゃない。理論的にきちんと説明のできる仕組みを使っているんだよ。私はこういった発明をするのがちょっとした趣味なんだ。」




発明が趣味・・・・・


どんだけこの人はぶっとんでるんだ。




門を抜けると、そこにはもう水はなく、代わりに煌めくたくさんの宝飾品や、実験に使うような小難しい道具、分厚い本や楽譜が雑然と、しかしある秩序をもって並んでいた。








「私の音楽の世界へようこそ。」






彼に支えてもらって舟を出る。


ここは美しい彼の世界・・・・・・








「私が今夜お前をここに連れてきたのは、一つの理由がある。


無論、オペラ座デビューの祝いのためでもあるが、もう一つ大きな訳があるのだ・・・・・・















ステージで歌うお前の声を聴いたとき、私は本当に感動した。



そして、思った。



お前となら、私の音楽の世界を完成できる、と。








今この世界ではびこっている『音楽』とは、上流階級の貴族にちやほやされるだけのお飾りに過ぎない。

オペラだって一種の社交のようだものだ。


このオペラ座も例外ではない。


表面だけ飾り立てて、豪華な演出をしていても、今のオペラ座の音楽は死んでいる。



クリスティーヌ。


お前の力が必要なのだ。


お前と私となら人の心を動かすような音楽を創れる。


貧しい者、疲れた者もふと涙を流してしまうような本物の音楽を二人で創らないか。


本当に美しい音楽を創ろうではないか。


私の愛弟子よ。」














息が止まりそうだった。


あまりにも大きな話をされて。



おまけに彼は私に見せたいものがあるといった。



それは
























ウエディングドレスを着た、私そっくりの蝋人形だった。




それを見た瞬間、私の意識は途切れた。
















・・・・・・・・・・・・†・・・・・・・・・・・・



いきなり驚かせてすまなかったな。


急に失神したクリスティーヌを抱きとめた男は呟いた。


私だって恋ぐらいするのだ。


ふっと自嘲気味に息を吐いてから、彼はクリスティーヌをベッドに寝かせ、囁いた。



















手伝ってくれ、クリスティーヌ。



私の音楽の世界を完成させるのを。

なんか先生が変態チックですね(笑


試験終わりました!!!!!

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