心、コネクト(9)
まさかの完売に身が震える。販売わずか2時間で100冊の完売は偉業であった。サンプルを手にした客の実に9割が購入を決め、続きのことを聞いてきた。予約したいとの申し出もある中で、それはしないで夏のコミケで増刷するとだけ告げていた。ブースの管理者である親友の姉も舌を巻くほどの売れ行きに茜という天才の誕生を素直に喜ぶしかなかった。出来れば茜に原作を書いてもらって自分が漫画を描く明日那方式を取りたいと告げたほどだ。だがユニット『YAYA』としての活動がメインなだけに、余裕があればということと、明日那の作業がそこまで手が回らない場合には提供すると約束をしたのだった。超新星の誕生に明日那はますます燃え上がる。もうすることがなくなった明日那はコスプレを止めて他のブースを回ったり、アニメ作品の展示がある3階へ向かったが、茜は赤いウィッグをつけたまま販売を手伝ったりしてその場を動かなかった。それでも3時には自分たちのスペースの本が完売したのを受けてBLコーナーだけに限定して動き、欲しい本を買い、ご満悦顔でフロアを徘徊していた。もちろん、自分たちの本が完売した時点で目当ての本はゲットしているのだが。ほくほく顔でスペースに戻る茜はこういったイベントも悪くないと思う。自分たちの本は完売、その他最新の本も買えるし、チェックも出来るのだから。本屋では味わえないこの熱気にハマる茜は油断をしていたのかもしれない。通りすがりに肩がぶつかったためにあわてて謝るその顔が青ざめ、そして汗がドッとにじみ出てきた。会場が熱いこともあり、またこのブースに限定しての行動にウィッグを外していた自分を責めるが、時すでに遅しである。
「あら、茜ちゃんも来てたんだ?」
にっこり微笑んでそう言うのは雪である。何故ここに雪がいるのか、ここは確かBLコーナーだと確認する茜の思考が許容範囲を超えて麻痺し、ショートした。雪もBLに興味があるのかと思うが、即座にそれを否定した。
「・・・・・・お前、来てたの?」
陽太が茜を見て驚いている。そして手にしているどこからどうみても美少年同士がキスをしている袋を手にした茜に引いている。
「BLっていうの?ここってこういうのばっかだよね?男の子が裸で抱き合ってるのとか」
「・・・・・そうみたいですね」
引き攣った顔をしてそう答えるが、手にした袋を見つめる陽太の目が冷たい。どうやら陽太はBLが何かを理解しているようだ。
「じゃ、じゃぁ、私はこれで・・・・」
そう言ってそそくさと立ち去る茜を追う2人。興味がある雪、真相を突き止めたい陽太の尾行に気づいてはいるものの、そろそろ片づけもあるために2人を巻いて帰還する必要がある茜はなるべく人ごみに紛れて進むものの、すぐに自分たちのスペースに来てしまった。なんとか事情を明日那に話してどうにかしないとという焦りもあり、少し大きな声を出してしまった。
「明日那!ヤバイ!陽ちゃんが来てる!」
その声に反応した明日那は片づけをしていた手を止めて振り返り、表情を固めた。視線は茜の背後へと注がれている。それを見て恐る恐る振り返れば、ニコニコした顔の雪と冷たい目をした陽太がそこに立っていた。青ざめる2人に興味深げな目をして語りかける雪の横で電話をしだす陽太を見た茜は死刑寸前の虜囚のような気持ちで呆けるのだった。
*
熱気のおさまらない会場を出た7人はとりあえず乗り換えの駅で降りてファミレスへと向かった。時刻は午後4時であり、お茶をしようという名目で尋問をするためだ。もちろん、被疑者は茜と明日那である。8人掛けのテーブルについたはいいが、半円を描くその円の頂点ともいうべき箇所に被疑者2人を座らせ、それぞれの横を愛瑠と香ががっちりと挟む。雪と陽太、夕矢は出入り口をふさぐ格好で席についていた。
「で、どうなってああなったわけ?」
香の言葉に棘はないが、2人には槍のように突き刺さる。とにかく嘘は後で大惨事になると観念し、明日那は正直にこれまでの経緯を話して聞かせた。小学6年生の時に親友の姉に面白半分で見せられたBL本を見て感銘を受けてそれらを買い漁り、それだけでは飽き足らずに創作活動に励んだことを。すでに2度もコミケに参加してそこそこ売れていることも正直に話した。そして茜もまた明日那が玄関先で落としたチラシを見て感銘を受け、明日那の所持している本を見てハマった揚句にそれらを買い漁り、創作活動に汗を流したことを告げた。それもつい最近のことだと付け加えて。ため息しか出ない夕矢と違い、ジャンルはどうであれその開眼に理解を示すように顔を見合わせた香と愛瑠は今日のことを優しく追及した。茜が書いた小説を漫画化し、それを売るために来たことを正直に話し、それらがすべて完売した上に続編を大いに期待されていることを嬉々として話す明日那、申し訳なさそうにしている茜が対照的だ。
「BLかぁ・・・・まさか茜が腐っていたとは驚き」
「でもジャンルは違うけどさ、夢中になれるってのはいいことね」
一番非難を受けそうな2人にそう言われてホッとするが、冷たい目をしているのは夕矢と陽太だ。それもそのはずで、サンプルとして持っていた同人誌をパラパラ見ただけで自分たちがモデルな上に愛し合っていると分かればこうもなろう。吐き気すらするが、雪はその本を興味ありげに見つめていた。
「やめる気、ないんだろ?」
その言葉に2人が頷く。夕矢は呆れたのを通り越すが、それはそれで認めていた。
「今後も活動は続けたい?」
陽太の言葉に再度頷く。
「だったら条件は1つだな」
そう言い、夕矢と陽太は目を合わせて頷きあった。
「書いてもいいけど、俺たちをモチーフにしないこと」
「えぇ?でも続編は?売れてるんだしさ」
「それはもう諦めるよ」
「・・・・俺はなんかヤだけどな」
達観した陽太の言葉を否定する夕矢だが、こればかりは諦めるしかないのだろう。しかしこの先の予定では夏のコミケで3巻と4巻を発売し、冬のコミケで5巻と6巻を発売するとなると、自分たちのおぞましい純愛が1年先まで露出される。それがどうにも我慢できない。
「この作品でそういうのは終わりにする!だから、お願い!」
茜の言葉に顔を見合わせるものの、今後の作品を監修する勇気は夕矢にも陽太にもない。まだ女の子同士の恋愛、いわゆる『レズ物』の方がましだ。
「わかったよ」
折れた夕矢の言葉にホッとするものの、今書いている第二作の内容を変更する必要がある茜は展開をどう変更するかを頭に描いていた。
「でもすごく面白いよね・・・なんか続きが気になるもの・・・男の子同士の恋もいいわね」
雪の言葉に表情を明るくする2人、死にたくなる男2人、目が点になる残る女子2人。
「でしょ!」
「うん。なんか恋してる男子ってかわいいよね」
「男が男に恋してんだけどな」
うっとりする雪に辛辣な言葉を浴びせる夕矢だが、雪の耳には入っていないようだ。BLというジャンルに興味を抱いたというよりかはこの物語を気に入った雪は続きが出来たら見せてほしいと頼み、茜と明日那は嬉しそうに頷いている。
「でもさ、変な繋がりになっちゃったよねぇ」
愛瑠の苦笑交じりの言葉に香も頷いた。夕矢と自分、そして愛瑠の関係。そして明日那と茜の関係。さらにはそこに加わった雪、追従する形の陽太がいるのだから。
「縁、かもなぁ」
疲れたようにそう呟く陽太は別にアニメや漫画にさほど興味がない。だが、今日でそれも少し変わっていた。あえて興味がない顔をしているが、実際、今日見た作品の中で見たいと思わせるものもあったのだ。しかもそれは女子中学生が変身をして悪と戦うものであり、絶対に人には言えないと誓ったほどの女の子向けの作品だ。
「次は春のホビーショーだね」
「なにそれ!?」
「そっちはパス。私たちは夏のコミケ」
愛瑠の言葉に興味を示す雪、興味のない明日那。
「夏のカルフェスは?」
「なにそれ!?今日のとは違うの?」
「あー、それは行くかも。でも夏は即売会ないしなぁ」
香の言葉にまたも目を輝かせる雪、そっちには興味を示す明日那によってカルフェスの話に移行する中、最早付いていけない陽太に向かって意味ありげに微笑む夕矢を見て苦笑を返す陽太はこの繋がりに入ったことで自分がどう転ぶかわからない興奮を得ていることを自覚するのだった。
*
凄まじい日差しが容赦なく照りつける。アスファルトを焼き、巨大な入道雲すら避ける灼熱の太陽はまだ空の頂上に対して低い位置にある方だ。なのにこの暑さは異常だろう。いや、それ以上の熱を体内に感じる夕矢は流れる汗を拭おうともせず遥か先の集団が動くのをじっと見ていた。
「いよいよだね」
「ああ」
「まずクジだよ!クジ!」
「ああ」
「でも注目されるね、夕矢は」
「ああ」
そう言い、自分の両脇にいる香と愛瑠を見やった。今やどんなクジすら必ず上位をゲットする夕矢はネットでも有名になるほどの強運の持ち主として有名だった。中には不正をしているという輩もいたものの、確率的に不正の域を超えているという意見が多数ということで『神の右手』と呼ばれていた。有名な巨大掲示板では依頼の書き込みも多いほどだ。現にホビーショーなどでも頼まれることがあり、夕矢は困惑しつつも断ることに専念し、中には香や愛瑠にまで懇願する者もいた。
「とりあえず私たちは予定通り別行動するね?待ち合わせ時間にまた」
明日那と茜がそう言い、BLのスマホゲームのブースに行くことを決めているために夕矢は頷いて返すのみだった。つい先日の夏のコミケでも『YAYA』の本は完売をしている。1巻2巻の再販に3巻4巻の発売、さらには新刊も発行して大増刷したものの、それらも開始1時間で即完売の大盛況だ。それに大手本屋チェーンからも取り置きの依頼が来るほどで、新進のユニットは既にその名を全国区に押し上げている。
「私たちは香ちゃんたちと同行して魔法少女ユイ2のブースに行くね」
雪が陽太の腕に絡みながらそう言い、陽太は困った顔を正面に向けている。仏頂面をしている理由は2つ。あと2週間に迫ったインターハイを前にこんなところにいる自分を嘆いているのと、戦う少女プリティ・ミライのブースに行ける喜びをひた隠しにしているためだ。冬のカルフェスで興味を得て以来、プリティ・ミライにドハマりしたとは言えず、雪にも内緒でグッズもネット通販で買っているほどだった。もちろん、夕矢たちもそれは知らないし、知られてはいけないのだ。
「それじゃ」
すぐ目の前まで動き出す人の波を見て香が夕矢の右腕に自身の左腕を絡ませる。
「行こう!」
愛瑠が夕矢の左腕に自身の右腕を絡ませ、微笑みあう。
「だな」
2人を交互に見た夕矢もにこやかに微笑んだ。香との仲も順調であり、愛瑠との関係も良好だ。茜とはBLを巡って多少ギクシャクしたものの、今では元通りの関係にあった。真夏の暑さではない熱いものが体中を巡っているのがわかる。だから夕矢は大きく一歩を踏み出した。
*
丸いテーブルに並べられた20枚重ねのカードが5つ横に並べられていた。カードの上側にはそれぞれ、シチュエーション、アイテム1、アイテム2、アクション、キーワードと書かれた紙が置かれており、それを前に正座をする夕矢は神妙な顔つきで両脇を陣取る香と愛瑠の息遣いを間近に感じていた。大きなベッドの上には茜が座ってその様子を見ており、色んな国の言語の翻訳本や難しい専門書が並べられた机の前にある椅子には陽太が腰かけている。夕矢の正面に座る雪はにこにこしつつカードを見つめ、右手を差し出して夕矢にカードを引くように促した。
「こんな子供向けのおもちゃで当たるの?」
どこかバカにしたような穂乃歌の声に肩をすくめる茜はのそのそと這い上がってくる穂乃歌を見ず、ここに集結した面々を見つつ頭の中で何かが閃きそうな気配に集中していた。大いに盛り上がった夏のカルフェスから2か月が経ち、秋の気配も濃くなる中で雪の家に集まったのは冬のカルフェスとホビーショーに関しての会議のためだった。完全にオタクの世界を理解した雪は魔法少女ユイシリーズにハマり、以後は香や愛瑠を伴って時々オタクの店に足を運んでいるほどだ。陽太が拒否していることもあってデートではそういう店に行くことはないが、実は陽太もプリティ・ミライの商品が見たいのをグッと我慢しているとは言えない。雪に便乗してそういう店に行ってもいいのだろうが、タガが外れる自分を恐れているのだ。
「まずはシチュエーションのカードから順番に1枚引いて、裏返したまま手前に置いてね」
「あ、はぁ」
言われるままに5つの束から1枚ずつ引いていく。
「これ、当たるの?」
ベッドに上がった穂乃歌をチラッと見た茜は邪魔をしないようにそっと耳打ちをする。
「子供向けのおもちゃなんだけど、大人が真剣にやると当たるってネットで評判なのよ。特に漠然とした未来に関する占いはよく当たるんだって」
「へぇ」
信じられないけれどとりあえずは返事をする。穂乃歌は別にオタクではないし、アニメや漫画、BLにハマっているわけでもない。ただ、こういう趣味を共有してからのこのメンツの繋がりが強固なので関心を持ち、今日のこの雪の家での会議に参加していたのだ。なのに唐突に始まった占い。雪がハマっている子供向けアニメに出てくる占い少女が持つアイテムを発売したところ、意外な年齢層にウケたのだ。大人が真剣に、漠然とした未来を占うと当たる、そんな噂によるものであったが。
「漠然とした未来なのに当たるってわかるの?」
「宝くじとか恋愛とか、結構な勝率で当たるらしくってこのカード自体が売り切れまくってるらしいよ」
「ほぉ・・・で、坂巻はどんな未来を占うのかね?」
「それがシチュエーションカードで決まるわけ」
その言葉と同時に雪が夕矢の引いたシチュエーションカードをひっくり返す。そこに描かれている絵はパーティーをしているものだ。
「パーティだね」
次に雪がアイテム1のカードを表にした。これはシチュエーションに関わるアイテムを意味し、その漠然としたシチュエーションに意味を持たせるものだ。
「ドレス・・・・しかも白いドレスってことは結婚式ね」
「おお!」
途端に注目する茜、香、愛瑠。特に香にとっては自分も関わっていると信じて疑わないために身を乗り出し、また愛瑠も覗き込むようにしてみせた。茜はベッドの上から首を伸ばしている。
「で、アイテム2は・・・・・・・ケーキ?ケーキ入刀?よくわからなくなってきた」
「具体的すぎない?」
カードを返した雪の言葉に穂乃歌がそう呟く。漠然とした未来のはずがこうまで具体的でいいのかと思うが、茜も香も愛瑠も真剣そのものだ。当事者である夕矢は鼻でため息をついて静観し、陽太は澄ました顔でジュースを飲んでいる。そして雪が4つ目のアクションカードをひっくり返した。
「で・・・・・・・・なんだろ、回転?波乱?」
回るアクションカードは竜巻だ。結婚披露宴のケーキ入刀場面で竜巻が起こるのだろうか。そこで香が、愛瑠が、夕矢があることに気づく。夕矢は力の抜けた表情を浮かべ、香の表情は険しくなる。愛瑠は何故か頬が緩んでいた。
「で、最後のキーワードは・・・・ハッピーか。竜巻が意味不明だけど、これって結婚してハッピー?」
その瞬間、愛瑠が立ち上がる。胸の前で両手を握りしめ、そして幸福の絶頂に達した表情をしつつ目をハートにしていた。
「うそでしょ?嘘だぁ!」
「・・・・・・俺、怖いよ」
「あ、あ、あ、あ、あ、愛ちゃん!ちょ、超、超、超!!・・・・・・ちょぉぅぅぅ~!ハッピー!」
そう言いながらジャンプし、加えてくるくる回転する。
「あ、これね」
雪が納得したように微笑み、夕矢は呆然とその回転を見つめていた。
「なんでよ!なんであいるんなの?この浮気者!死んで詫びなさいよぉ!」
ぽろぽろと泣く香に力なくうなだれる夕矢は腕を掴んで前後に揺すられても抵抗しなかった。
「あのな、これ占いだぞ・・・・浮気じゃねぇし、お遊びだろ?」
「遊びだったのぉ?サイテー!もう別れる!いや、別れたくないよぉ!」
号泣する香、幸せの絶頂の中で回転し続ける愛瑠、微笑む雪、笑いを堪えるのに必死な陽太、唖然とする茜、この面白い場面をスマホで録画する穂乃歌、激しく揺さぶられる夕矢。
「愛ちゃん、奇跡の大逆転!まさかのまさかのまさかのっ・・・・・超・極・大・ハッピー!」
昇天しつつまだまだ回る愛瑠を見つつ、号泣する香へと視線を向けた雪はここでようやく我に返り、香を慰めに入った。
「まぁまぁ、おもちゃの占いなんだしさ。実際、未来なんて誰にもわからないでしょう?」
「そうそう!だから愛ちゃん!ウルトラハッピー!」
「そっか!今は姫季さんだけど・・・・次占ったら私の可能性も?そっか、そうだよねぇ」
茜がベッドの上に立って目を輝かせる。そんな茜を恨めしそうに睨みつつ香は頭をかきむしった。
「イヤ!絶対!イヤだ!夕矢の浮気者~」
おいおいと泣く香を放置し、夕矢はジュースを飲んでいた。もう反論するのもバカらしい。
「未来は変えさせないから!夕矢!結婚しよう!今すぐ!んですぐに子供作ろう!」
思考が壊れた香は虚ろな目で笑っている。それが怖い夕矢が陽太を見やるが、さっと視線を外された。さすがの陽太もこれに巻き込まれたくないようだ。
「なんか修羅場・・・・バカみたいだけど」
「修羅場か・・・・そうだ!これを元に・・・・・ふむふむ!」
穂乃歌の言葉に我に返った茜がドカッとベッドの上であぐらをかく。頭の中で出来上がりつつある物語はBLではなく、純粋な男女の物語。人と人とを結ぶ数奇な物語。タイトルはそう、『コネクト』。それは3年後、河合茜の名を全国に轟かせる小説のタイトルであり、小説家として開眼する茜の代表作になる物語。
「さて、そろそろバカな話は終わらせてカルフェスの話しようぜ」
夕矢がジュースを置いてそう告げるが、香がゆらりと立ち上がる。そのまま冷たい目を夕矢に浴びせた。誰もが凍りつくその目は殺人者を思わせた。
「バカ?バカな話?浮気しておいて・・・あいるんと結婚しておいてぇ!」
「幸せにするよ、夕くん!」
抱きつく愛瑠、首を絞める香。夕矢は周囲に助けを求めるが、全員がそれを無視して本題に入っていく。
「愛ちゃん、いい奥さん、いいお母さんになるね?」
「浮気ものぉ!」
「落ち着けって!2人とも!誰かぁ、助けてくれぇ!」
空しい絶叫は耳に入らず、残った4人で会議が開催されていく。
「愛ちゃん!超ハッピー!」
「あいるんは絶交!夕矢とはもう別れるぅぅ!いやだ!別れないぃぃぃ!」
*
坂巻夕矢の災難は始まったばかり。
小泉陽太のテニスの快進撃はこの後、始まる。
河合茜の未来は約束され、瀬川香の苦労はこれからも続いていく。
姫季愛瑠のキャラクターはずっと健在で、飯島雪の一途な想いは海をも渡るだろう。
坂巻明日那の将来は漫画家となり、四宮穂乃歌はこのメンバーとずっと交流していく。
繋がった縁は切れることなく一生続く。
未来は決まっていない。
けれど、彼らの縁はどこまでも繋がっているだろう。
これはそんな物語、その一部分なのだから。
コネクト、これにて終わりです。
本当はどうにかして夕矢と茜をくっつけようと考えてましたが、年相応の恋愛を考えた結果、こうなりました。最後に示した通り、未来は決まっていない、だからこの先どうなるかは彼ら次第なのだから、と。
コネクトは続編的な物語は考えていませんし、他の作品に顔を出す予定もなし。
あくまで単品です。
別作品でその将来を書く気にもならず、未来は曖昧なままで終わらせておきます。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。