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決戦!!大空中要塞の攻防(7)

屍、いや、屍鬼といったほうがいいだろう。人の血に飢えた化け物たちは命ある少尉たちを獲物と認識したようだった。次々に暗がりから現れる姿に少尉は冷や汗を流した。飛び掛かってくる屍鬼を軍刀の鞘で殴打しながら叫んだ。


「走るぞっ!!」


少尉の叫びに弾かれるようにコロと天龍王は走った。それを追うような形で少尉も後に続く。その後を亡者の群れが群れのように追ってくる。

距離を置いてから背後を見てみると、その数は時を追うにつれて増しているようであった。人の血に飢えた餓鬼の群れ。あれに囲まれればいかに歴戦の軍人とはいえひとたまりもなかろう。このままではまずい。


「龍、目的地はまだなのか。」

「安心しろ、見えてきたぜ。」


天龍王がそう言って指さした先には周囲の建物より抜きんでた古びた搭の姿があった。恐らくは地底にあった古代の遺跡が隆起したのだろう。時代がかった石造りの搭は不気味な姿で見るものを圧倒した。搭の前まで走ってきた少尉たちは荒い息を整えながら門の前に立った。見上げるまでの大きさの鋼鉄の門である。まともに開けようとすればかなりの力が必要かと思われたが、次の瞬間に重苦しい音を上げながら内側から開いていった。拍子抜けするくらいあっさりとした様子にコロが唖然とする。


「あ、開いちゃいましたね。」

「油断するな。こうも簡単に招き入れるということは余程の自信があるということだ。」

「そういうことだ。今回の騒動の原因が俺たちの思っている敵だとすれば間違いなくやばい。」


少尉達が中に入った瞬間に扉は再び閉まっていった。念のためにコロが内側からとしたがビクともしない。どうやら閉じ込められたようである。足元さえ目えない薄暗い部屋の中で警戒しながら周囲の様子を見渡す。ふいに少尉は鈴の音を再び耳にした。気のせいだろうか。ここにいてはいけない。すぐに出て。確かにそう言われた気がした少尉は不安を覚えて叫んだ。


「気をつけろっ!!何かいるぞ!」


少尉の叫びに反応するかのように闇の中から夥しい数の赤い目が開いた。十や二十等といった生易しい数ではない。部屋中に屍鬼が潜んでいる。ゾッとなった少尉はライターで明かりをつけて周囲を照らした。いる。暗がりの中で無数の影が蠢いている。どうやら部屋に入ってきたことに気づいたようである。ゆっくりとこちらを包囲するように近づいてくるのが分かった。


「囲まれているぞっ!!」

「やってくれるじゃねえか。」


天龍王は笑いながら一体に狙いを定めると拳を振り上げて殴りかかった。衝撃の鈍い音の後に側面の壁にむけて屍鬼は吹っ飛んだ。壁にぶつかると共に外壁が破壊されると外側からの明かりが差し込んだ。


「ようやく中が見やすくなったな。」

「それはいいんだが、あそこから屍鬼どもが入り込んでくるとは考えなかったか。」


王の短慮にげんなりしながら少尉が突っ込む。壁の穴を見てみると少尉のいう通りに外側から引き付けてしまった屍鬼達が中に入り込んできているのが分かった。


「…やべっ。」

「階段まで走るぞ!」


天龍王に呆れながら少尉とコロは部屋の奥にある階段に向かって走りだした。慌てて天龍王もそれに続く。だが、それを阻むように屍鬼の群れが襲い掛かってくる。

一閃。コロの振りぬいた刀が一瞬にして屍鬼の群れを切り裂いていく。まるで紙か何かを切っているかのような鮮やかな切り口に天龍王が感嘆の意を込めた口笛を吹く。突破口を切り開いたコロに続いた少尉は階段を上り終えると天龍王が上り切る前に手りゅう弾の安全ピンを引き抜いた。そのまま、躊躇うことなく階段に転がしていった。何かが転がっていったのに気付いた天龍王はそれが手榴弾であることに気づくと慌てて階段を上り切った。同時に足元から凄まじい轟音と爆発が起こる。瓦礫によって下への通路が塞がれたのを確認した少尉は安堵の溜息をついた。そんな少尉の胸倉を天龍王が掴む。


「手榴弾を投げたんなら言えよっ!」

「緊急事態だ、仕方ないだろう。誰かさんが壁に大穴開けなければこんなことをしなくて済んだんだ。」

「くそ、それを言われると返す言葉がない…」


二人のやり取りを見て殺伐としているなあと思いながら、コロは懐紙で刀の脂を拭いた。そして2階の様子を見渡した。2階は一階と違い、屍鬼の群れは潜んでいないようである。シンと静まり返った様子が逆に不気味に感じられてコロは眉をしかめた。

階段から続くU字型の廊下を歩いていくと、またしても巨大な鋼鉄の門がそびえ立っていた。何かの罠があるのではないかと訝しんでいる少尉の前で再び扉が開いていく。

中に立っていた者の姿に一同は驚きの声をあげた。そこにいたのが剣狼であったからだ。彼は真っ赤な目で侵入者を睨んだ。



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