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第二十二話


暗い道を走る。俺はライトをハイビームに切り替え、どこまでも続いているような

暗闇の道を照らす。走っている車は俺一人。道には車も、死体も、瓦礫も、草も生えていない

俺はただ目の前の道路を浸走る。所々、歪んだ場所などで揺れる車体。

短調で眠くなっている時には、ちょうどいい刺激だ。


随分と走り、すっかり暗くなっている。見通しの悪い状態での走行は危険だ。

今日はこの辺でいいだろう。俺は車を止め、辺りを確認した。

ゾンビは・・・どうやらいないようだ。

さて、それじゃ早速、手に入れた食料の中身を見ていこうかな。


俺は後部座席に移り、ダンボールを確認した。

まず見つけたのが・・・銃の弾だ。食料ではないが、あるに越した事は無い

小さな箱に詰められていて、小指の第一関節程度の大きさ。まるでおもちゃみたいだ

映画やゲームだとバンバン撃てて、威力は低いが手軽な軽装備って感じだけど

こんな小さな弾でも、殺傷能力は十二分に内包されているんだから、改めて

考えると怖いな。まぁこれから生きる為に使っていくんだけどね。


と・・・お! 缶詰だな。これは・・・パンだ! パンの缶詰。

俺は手に取ってしっかり確認した。 間違いない・・パンの缶詰だ。

しかも一種類だけじゃない。オレンジ、ストロベリー、レーズン、バニラ・・・

結構あるな。これでしばらくは大丈夫そうだな。しかしパンの缶詰か・・・

どんな味がするのやら。ちょうどいい。一つ食べるか。

俺は缶詰を開けた。


目の前に現れたのは缶の中いっぱいに詰まったパン。

小さいパンが複数入っているようなものだと思っていたので、少し驚いた。

へぇ~・・こうなってるんだ。俺は指でつまんで持ち上げる。

缶詰の形のままのパンが出てきた。そしてさらに俺は驚いた。




なんと・・・






・・・・・・・柔らかい





まるで焼きあがったそのままを触っているようだ。パンの缶詰で思うのが乾パン。

パンというよりは、ビスケットのような食感。そして口の唾液を奪っていくので

水分必須と身構えていたが、これは違う。指で押すと帰ってくるくらいに

柔らかい。俺はひとつまみちぎる。中は柔らかく、そしてしっとり

している。ちぎった後に香るオレンジの匂いが、食欲を刺激してくる。

俺は一口、口の中へ入れる。


パンの甘味が広がる。食感は柔らかく、噛まなくとも

舌の上で、静かに溶けていく。

そして酸味が少し効いたオレンジ。

柑橘系の爽やかさが、このパンには生きている。


・・・おいしい。



気が付くと全てを食べきっていた。いや、これはいい。・・・うん。

まだあるから、大事に食べよう。


さて、まだ何かあるな。俺はダンボールの隅に置かれたていた、開いている袋を取り出す。

これは・・・スープ!! 袋には保存用だと書かれたスープだ。 卵スープ。

50食入りのようだが、数がだいぶ少ない。まぁ仕方ないか。でもこれで

お湯さえ沸かすことができれば、暖かいスープを飲むことも出来るって訳だ。


ん? 空いてたってことは、お湯を沸かせる調理用の器具も積んであるのか?

俺は車を確認したが、機材は無いようだ。おそらく、あの駐車場で

三人組が暖を取っていた部屋にあったんだろう。 ちゃんと探っておけば

よかったかな・・・まぁ仕方ないか。どこかで手に入れられる事を祈ろう。


後は包帯や少し汚い布程度しか、入ってないか・・・・いや、もう一つ

缶詰が残っている。少し大きめの缶。朱色と黄色のカラーデザイン。イラストに

狼が遠吠えをしているさまが描かれている。俺は手に取ってみた。


見ないデザインが施されているが、食べ物である事は分かる。

名前が書いてある。シュ・・ スルスト・・スルストミニング? ・・・かな?

読み方がわからない。聞いたことがない食べ物だ。心なしか缶が

膨らんでいる気もするが・・・缶に傷等は無い。 まぁ開けて見ればわかるか。


缶はイージーオープンエンドではない。缶切りが必要だ。俺は缶切りを取り出し

缶の縁に引っ掛け、缶切りを回した。



プシュウゥゥゥッッ!!!



刃を立てた瞬間、勢いよく内容物が吹き出し、袖口と手にかかってしまった! 

まぁ・・・予想は出来ていた。缶が膨らんでいると言う事は、内容物が

熱加工しきれず、腐敗し、ガスが発生しているということ。食べなければすむ・・・




・・・・・・・・・




・・・・・・・・・・・・・く・・・・・・・・・・・・


















臭ッ!!

























臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭いッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

















臭すぎるッ!! いや・・・えええええええッ!!! いやこれは・・・

臭いッ! ふはいなんて・・・もうん・・ヴォエッ!!!!!









駄目だッ! これは・・危険なんてものじゃない!!

目に、鼻に、口に、粘膜という粘膜に刺激を与えるほどの臭さッ!!

あなどっていたッ!! 迂闊だったッッ!!!

腐った缶詰が、これほどの匂いになるなんて・・・ッ!!

いつか見た海の何倍もの匂いだッ!!


うぅ・・・い・・・意識が・・・

まずい・・・このままだと意識を失うッ!!


俺はすぐに車のドアを開け、缶を外に放り投げた!!

投げた衝撃で、内容物がより一層辺りに撒き散らされる!!!!


くそッ!! まずい・・・ 問題が残ってしまった・・・

手と服の袖口にさっきの液が付いてしまった。駄目だッ・・・






 臭いッ!!






もったいないが、俺は水を取り出し、その水でかけ流すように手と袖口を

洗った・・・・




駄目だ・・・手はどうにかなるかもしれないが(なってくれないと困る)

服の袖口についた物は取れそうにない!! 俺は上着を脱ぎ、外へ投げ捨てた。

くそッ!! このままじゃ駄目だ・・・


匂い溜まりというのか。あたり一面が腐敗臭で溢れている。

これは寝られる状態じゃないな。俺はエンジンをかけ、すぐに道を

走り始めた・・・ここには居られない。




上着が無い状態では、あっという間に体温が奪われる。

こんな状態で寝るのは無理だ・・・俺は寝る前に上着を見つけることにした。





ほんと・・・災難だ・・・







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