初イベント3
PT対抗戦からログアウト後
ああーやっぱり来たか。
「紅君、大丈夫?やっぱり不完全燃焼だったみたいだね。」
宗介にソファまで肩を貸してもらいソファに寝転ぶ。理々亜がスポドリとストローを挿したコップをキッチンから持ってきてくれた。
「紅さんはどうしたんですか?VR酔いですか?」
燕には宗介が説明してくれるだろうから、ちょっと寝るか。さすがに辛いからな。
「なるほど。VR酔いの一つの脳の処理速度の変化による頭痛ですか。」
宗介さんの話によれば、紅さんは戦闘で特に感情が高まったり期待した時の戦闘で不完全燃焼になるとログアウト後に毎回VR酔いになる……つまり今回のPT対抗戦では不完全燃焼だったということですか。
「紅君の場合は一度なると中々、抜け出せないVR酔いだけど眠れば治るからね。」
最初は風邪をひいたと勘違いして大変だったらしいですが、病院で原因がわかると納得したのは理々亜さんの言葉です。
「壮絶な戦闘を期待してみれば、余裕がある戦闘で不完全燃焼だ。と聞いた時は驚いたよ。」
理々亜さん曰く、『D.ファンタジー』というゲームでレイド戦(複数のPTやギルドが集まって行う戦闘)をギリギリのラインの戦闘で全員が必死で戦闘をしていたのに紅さんは欠伸が出るような戦闘程度の感覚で結果として不完全燃焼で初のVR酔いになり今に至る。とのこと。
「さて、俺は紅葉さんに連絡するから夕飯の支度は誰がする?」
隆太さんは連絡係になり紅葉さんに電話をかけています、香さんがキッチンに向かったので任せましょう。
今、何時だ? ん? ……時計が無い……? ああ、ソファだった。とりあえずスポドリを飲んで目を覚ますか。
「おはよう紅、スッキリしたかい?大体1時間程寝ていたよ。今、香が夕飯の支度をしているよ。燕にはVR酔いの説明はしておいたから、夕飯まで寛いでいればいいよ。」
理々亜から話を聞いて、ベランダに出て無害煙草を吸いながら夕飯後にPT対抗戦の反省会をするか、と思いゆっくりと夜景を楽しむ。
夕飯も終わり、ゆっくり休憩しながら反省会を始める。
「俺は個人的にはトータルで見て反省点は無いんだよ、ソロで動いてたから自分の考えでだけどな。」
隆太はとりあえず置いておくか。今回は全員が特に気にする内容は無いと思う。一瞬で反省会が終わったな。
宗介が『英雄達の伝記』のHPを確認したけど、まだ新しい情報も上がっていないらしい。理々亜が『英雄達の伝記』の掲示板を見ているが面白い話も無し。
ちなみに、俺にチート疑惑の書き込みがあったらしいが『英雄達の伝記』は起動してログインしてからログアウトまで外部ツールは使えないし運営のガードが固いからハッキングして情報改竄もできない。
とりあえず、ゆっくり寛ごう。
寮の部屋で紅葉は課題を片付けながら、今回のPT対抗戦の報酬を考えていた。
「ギルドの名前はどうしようかしら?新しく名前を考えないとね。ギルドホームもどのくらい改装できるかも気になるわね。」
課題を片付けて夜食の準備をしていると同室の友達がやってきた。
「紅葉、私の夜食もお願いね、明日から陽司と弟君の家に移動でしょ?気をつけて帰るんだよ?お腹を大きくして帰って来てもいいからね! 」
同室の友達は笑いながらこんな冗談を言ってくるけど、もう慣れたわよ。毎回笑えない冗談を言ってくるけど悪い人じゃないからね、夜食を食べて今日はゆっくり寝よう。明日も早く起きるからね。
明日からも『英雄達の伝記』にどっぷりの生活だよ。
早朝というには早い、まだ空が暗い時間から動き出す2人の影。
「陽司、リニアトレインのチケット忘れてないわよね?」
陽司は確認して携帯電話の中のデータを表示して2人でリニアトレインに乗り込む。
リニアトレイン………今で言う電車。
「紅葉、焦らなくても大丈夫だ。紅達には連絡してあるんだろう?目的地まで飛行機移動を含めて2時間程だ、ゆっくり楽しもう。」
昼からキッチンで調理中の俺と理々亜、他のみんなは女性陣は部屋の掃除、男性陣は追加の買い出しに出ている。
「そろそろ紅葉さんが飛行機に乗ったぐらいか?仕込みの忘れは無いか確認しておくから残りの仕込みを任せる。」
理々亜が今日の昼から夜食までの仕込みの確認をしている間にスイーツも作るか。隆太の手綱は宗介が握っているから心配は無いな。頼むぞ宗介!
飛行機が空港に到着して紅葉と陽司が日本に到着した。
「やっぱり日本は良いわね! 昔話で飛行機でもアメリカまで時間がかかるって聞いたけど今はあっという間に到着ね。陽司、確か2番出口でお祖父様からの迎えの車が来てるからね。その車で移動するからね。」
陽司が荷物をオートカートに乗せて紅葉と移動する。
「お待ちしておりました、紅葉様。坂幹陽司様。この度のご帰国お疲れ様です。荷物は私達が、お二方は車内へ大旦那様もお待ちしていますよ。」
陽司が固まる。
「七夜様が来ているのですか!?何も用意していませんが…」
陽司の声が聞こえたのか、車の窓が開いて白髪だが圧倒的なカリスマと迫力を溢れさせる初老の男が顔を出す。
暁七夜
古くは昭和から続く暁グループで至高と呼ばれた現在の暁グループ総帥。
「気にしなさんな、陽司君。儂が孫達に会いたくて来ただけじゃよ。」
紅葉は車内に入り、七夜に挨拶をして飲み物を受け取る。陽司も慌てて車内に入る。
「七夜様、お元気で何よりです。七夜様がいらっしゃる事がわかっていれば何か用意したのですが…今ある物なら簡単なハンドマジック程度ですが、いかがですか?」
七夜達は陽司のハンドマジックを楽しみながら、孫のマンションに向かう。
全ての準備を終わらせて姉貴と陽司さんを待っている間に『英雄達の伝記』のHPを確認するとアップデートの延長と追加要素のお知らせが上がっていた。
「魔石と魔玉。詳細はアップデート完了後か、これは楽しみだね、アップデート完了後はアビリティも増えているだろうし、明後日には第2陣のプレイヤーも来るからね。姉貴と陽司さんとも一緒に楽しめるから良い夏休みだ。」
マンションのゲートインターフォンが鳴る。
「姉貴と陽司さんが来たな、出迎えに行ってくる。」
俺は個別エレベーターのロックを解除して下の玄関ホールに向かう。
玄関ホールに声が聞こえてくるが、3人分の声?聞き慣れた声だけど、まさか…
「紅、久しぶりじゃな。元気にしておったか? どうした鳩が豆鉄砲を食ったよう顔をしよって、儂が来てはいけなかったか?」
紅葉と陽司さんが苦笑しながら視線を俺に向ける。
「じ、爺ちゃん!!来るなら爺ちゃんの好きな和菓子も用意したのに、あらかじめ連絡してくれよ!!」
爺ちゃんはしてやったりとした顔をして俺の頭を撫でる。
「紅、儂は和菓子が無くても来るぞ、孫に会いたくてしょうかなかったんじゃ許してくれ。」
全員でエレベーターに乗り込み、部屋に移動する。
爺ちゃんの登場に多少の驚きはあったものの部屋に入って、全員で楽しいプチパーティーになり日が沈む頃に爺ちゃんが帰る時間になる。
「紅、紅葉、みんな、楽しい時間をありがとう。儂は仕事で見送りも不要じゃ迎えも来ておるからな、ではな。」
爺ちゃんは颯爽と仕事に向かった。
「紅葉さん、アップデートが長引いていて早くても明日の朝にアップデート終了が変更されています。今日はギルドの名前や方針を考えませんか?」
宗介が『英雄達の伝記』のHPを確認して提案する。
さて、ギルドの事を考えるか!




