準備中2
準備が大体、終わったから次はVR空間での動き方の練習をすることになった。
「みんなは『英雄達の伝記体験版』のDLして『キーライン』に入れたか? 」
『英雄達の伝記体験版』とは名前通りの体験版で経験値もドロップアイテムも貰えないし作った物も持ち越しはできないが代わりに戦闘や生産の基本が経験できる物だ。
『キーライン』の設定でIDを登録すると同じ仮想空間に集まることができる。この設定をするとキャラメイクも一緒にできる物もあるから大事な小技だ。
「紅、どうやって戦闘に慣れる? 戦闘訓練なら十八番だろ、戦闘狂? 」
隆太がいきなり失礼な事を言ってきたが今は我慢だ。
「まずはみんなの運動量やステータスの違いを確認しないとな10分ぐらい全力疾走だな。『英雄達の伝記』の初期ステータスでの運動量を測るから手を抜くなよ。」
広いドーム場の様な場所で壁に沿って全員で全力疾走をする。ゲーム次第だけど無制限に全力疾走できる場合もあるから確認はしないとな。
走り出して5分ぐらいで横並びに走っていたのが崩れてきた。明らかにペースが落ちていたり燕は動けない状態になっている。逆に俺と隆太はペースが落ちてない、未だに全力疾走している。
「ストップ!! お疲れ、少し休憩しよう。」
俺の休憩の指示で全員が座り込む。その間に録画していた全員の走り方を確認する。
「紅君、みんなの違いは何かわかった? 」
宗介が回復したのか俺に確認しにきた。
「多分な、これが原因だな。」
全員を集めて録画していた動画をスタートから最後までを全員分を同時に見る。
「わかったか? 多分、これが違いが出た理由だと思う。慣れるまで練習して試してみようか。」
全員に違いが出た原因を教えて、何度も全力疾走をする。理由は簡単だがゲームらしい理由に全員が慣れるまで走り込む。
「みんな、大丈夫か? 仮想空間でも走り方以外や装備でも運動量に差がつくみたいだな。まさか一番の理由が走るペースのリズムが変わったらスピードが落ちるとは思わなかったけどな。とりあえず俺達は初期ステータスなら約1.5kmが全力疾走できるみたいだな。回復したら、もう一度だけ確認に走ってみよう。これが終わったらログアウトして夕飯にしようか。」
……………………
「誰か返事してくれよ…… 」
誰も返事をしなかったがリズムに慣れたかの確認もできたからログアウトして夕飯だ。
「誰が夕食を作る? 冷蔵庫、冷凍庫には食料ぎっしり買ってあるし非常食に缶詰にカップ麺、ドリンクも大量に用意したからな。」
理々亜が風呂が先と言ったので男女で分かれてシャワーを浴びてから夕食になった。
「サッパリしたし、改めて誰が夕食を作る? 公平にジャンケンにするか? 隆太には作らせないけどな。」
燕以外が頷いている。隆太は自分で頷くなよ…
「それなら、私が作りますね。皆さんの好みがわからないので申し訳ないですけど…」
燕が挙手したから、燕に作ってもらおうサポートに宗介だな。
◆◆◆
………全員が驚愕している。
見た目の段階で美麗な和食の数々、高級な食材は無いが見た目も高級料亭の食事の様だ。燕はデザートを作っている。燕も満足しているようだ。
「あっ皆さん、お先にどうぞ。私も直ぐに座るので。お口に合えばいいのですけど。」
燕が先にと言ってくれたので箸を伸ばす。
食事が終わり、全員が満足で食事の余韻に浸っている。
デザートも季節に合うわらび餅だ。買い置き用を冷やしてきな粉と黒蜜で言う事無しだ。
俺と宗介は無害煙草を吸う事も忘れて、緑茶を飲んでいる。
夕食も終わって全員が寛いでいる『英雄達の伝記』の話を男女に分かれてしているが休憩を終わらせて『英雄達の伝記体験版』のVR空間に入る。
「さて、武器を使った練習を始めるか。」
俺と燕以外が顔を青くした。
「ここここ紅、お、お手柔らかに……」
隆太が変な話し方になっているぞ何かあったか?
「まずはみんなが使う予定の武器と防具を装備してくれ、ステータスメニューの装備に各初期装備があるはずだ。」
全員がステータスメニューを操作して装備を整える。予定している武器が複数だったり防具が合わない場合も含めて調整する。
最初は1人ずつ戦闘練習に入ろうか。まずは…
「紅!オレがやるぞ! 経験者だから見本ぐらいにはなるはずだろ? 」
隆太が張り切ってるから隆太から始めるか。戦闘用のモンスターは3種類か…なら最初は君に決めた!!
前に出た隆太が20m程の透明なドームに囲われてからモンスターが出てくる。
モコモコの体毛に包まれた羊、名前はスケープゴート。隆太なら大丈夫だろう…多分。透明のドームに10カウントが出て戦闘が始まる。
スケープゴートは動かずに丸まって寝ているいる、隆太はチャンスと見たのか両手で槍を構えて突撃して行く。
「くらえっ! 」
攻撃ができる範囲に入った隆太はスケープゴートに真っすぐ槍を突き出すがダメージ表示が無い。恐らく体毛にしか当たらずに槍はすり抜けたのだろうな。隆太は慌てて槍を引き戻そうとするが体毛に絡まり槍が抜けずスケープゴートが痛みで起きた。
スケープゴートが隆太に体当たりをして吹っ飛ばす、更に追いかけて踏みつけるつもりなのか走り出した。隆太は起き上がり吹っ飛ばされて槍が手に無い事に気づいて回避しようとするがスケープゴートの体当たりのスピードの方が速かった。
再度、吹っ飛ばされる。それが数回繰り返されて隆太のHPは0になった。
「こんな事にもなるから、攻撃は確実に当てて当てたら回避行動できる様に心がけような。武器は手放さないのは基本だ。」
端っこで拗ねているいる隆太は放置して1人ずつモンスターと戦闘練習をしていく。
ぎこちない動きだが、みんなモンスターと戦闘して慣れていく。隆太はスケープゴートに何度も挑むが勝てずに頭を抱える。しょうがなく隆太にアドバイスをするか。
「隆太、槍は突きしか攻撃できないのか?違うだろ、横に振って薙ぎ払いとかもできるだろう、気づけよ。」
そう、隆太は点の攻撃の突きしかせずに戦闘していた。点の攻撃が当たらないなら横や縦から払ったりすればいいだけだった。結果として隆太はスケープゴートに圧勝する。
そろそろ各個人練習でもいいな。しばらくは個人練習して仕上げは対人戦闘の練習もするか。
◆◆◆
そろそろ時間だな対人戦闘の練習もできたから最後は乱戦の戦闘練習にしよう。
「おーい! あと5分ぐらいで集合してくれ! 」
ゲーム機能のグループボイスチャットで連絡をする。
集合して最後の練習に入る。
「最後は全員が敵の乱戦、バトルロイヤルをやろうか。最後に立ってたら勝ち。わかりやすいだろ?制限時間は無し、最後に残ったら勝ちってルールで思う存分に殺りあうか。」
「「「「絶対に字が違う部分があったぁぁぁ! 」」」」
【バトルロイヤル ルール】
バトルロイヤル
参加者 6人
時間制限 無し
行動制限 無し
戦闘フィールド範囲 40m
勝利条件 最後にHPが残っていた1人が勝者
「ルールも決めたから範囲内ならどの位置から始めても大丈夫だ。遠距離と近距離の両方がいるから距離は考えてやろうか。準備ができたらウィンドウから確定してくれ。」
全員が透明のドームに囲われて準備の1分の自由時間を作って位置取りをする。みんなは近づいたり離れたりとウロウロしている。俺は全員と15m程の位置を取り動かずにいる。
全員の準備が整ったので時間が進み10カウントが始まる。
……3……2……1……GO!
俺はまず近距離の隆太と宗介の動きを確認。2人はお互いの距離を詰めているから戦闘になるな。なら、狙うのは……
「っ! いきなり私は無いんじゃないかな〜紅君、泣いちゃうよ? 」
まずは遠距離の香を狙う。香の遠距離攻撃の手段は火の玉を飛ばす魔法が一種類だけだが先に潰せるなら潰しておきたいからな。
香に走って近づき距離を詰める。全員ルールは忘れてないよな?
香に近づいて止まらずに一気に距離を詰めるが横を通り過ぎる。香は一瞬止まり振り向こうとするが……
香の背後を取り首を絞める。完全に首が絞まり呼吸ができず発声できない。これで魔法の詠唱させずに確実に1人を落とす。魔法使い系には有効な絞め技だ。
香をフィールドから強制退出させて次の狙いを決めるために周りを見渡すと隆太と宗介が戦闘中、理々亜と燕が戦闘中だった。少し様子を見て狙いを決めるか。
隆太と宗介は互いに攻撃を回避しているが近距離で集中しているな、燕と理々亜は距離の取り合いか、なら均衡を崩すか。
燕に気づかれない様に距離を縮めて……腰にぶら下げていた大振りのナイフを燕に向かって投げる。燕は反応はできたが回避はできず、クリティカルポイントをナイフが刺さりHPの7割を失う。『英雄達の伝記』のシステム上、一定量のHPを一撃で失うと気絶判定になる。理々亜が気づいて距離を開けようとするがその前に走りながら距離を詰めて鞘から抜いていた刀を居合の要領で一気に振り抜く。
これで理々亜も脱落っと燕にもトドメを決めてから……!? 隆太と宗介が気がついたか! その前に燕にはトドメを! 良し!男3人で闘うか!
「お前を放置しちゃいけないよな! 行くぞ紅! 」
隆太を前に宗介もやってくる。だけどな隆太の欠点は知ってるんだよ。
突き…突き…払い…突き…突き…払い…突き…攻撃がパターンになりやすいからな隆太は、ここで…崩す!
隆太の突きを正面から剣の柄の茎尻で受けて動きを止めてから俺は円運動で遠心力も乗せた一撃で首を狙う!
隆太の首のクリティカルポイントに直撃してHPが9割削れた所に後ろからハンマーが投げられていた。倒れる様に避けて転がり少し距離を開けると宗介が隆太にトドメを決めていた。
「やっぱり怖いね、紅君を自由にするのは。」
隆太がフィールドから強制退出されたのを横目で確認して宗介と向き合う。宗介は斧を上段に構えて距離を測る、俺は刀を片手で正眼に構えて動かない。
お互いの呼吸のリズムが一致した瞬間に宗介は距離を詰めて斧を上段から振り下ろす、俺は右手に構えていた刀の峰で斧を受け流す。刀の先がフィールドの床に刺さり斧も床に振り下ろされた形になる。俺はそのまま受け流した力を利用して左手に持っていた二本目の大振りなナイフで宗介の首を斬り裂く。
宗介がフィールドから強制退出されて透明なドームも消える。休憩してから注意点を伝えるか。
「さて、みんなに戦闘の注意点を伝えるぞ。まず宗介は一撃必殺の威力がある重量武器だから基本的にカウンターを狙った攻撃ができる立ち回りを練習すればいい、重量のある武器だからむやみに振り回すより確実に当てれるカウンターができる技術だな。燕は弓だから相手との距離を引き離す技術がほしいな、さっきは俺が中距離からの不意打ちだったから周りを見る事も忘れずにな。」
宗介と燕は納得してくれたみたいだな。
「香は魔法使いだから狙われない事が大事。後は動きながら詠唱ができたら問題無しだ。ただし近づかれても対処できる動きは必須になるな。理々亜は本来使う武器が無いとはいえ、判断をもっと早くできたらいいな。あとは2人とも魔法を使うから発動前のファンブルにも気をつけるぐらいか。」
香と理々亜も納得してくれたか。
「最後に隆太だが……論外だ。攻撃のパターンが1パターンになり過ぎだ、フェイントを混ぜるにしろ同じ攻撃は読まれやすいからな。『D・ファンタジア』で体術使ってたから槍を使うには悪い癖が残っているな。ちゃんと槍に合う動きをできる様になろうな。」
隆太は落ち込んでいるが最初から上手くなんてなれないからな。失敗から経験するもんだ。
「じゃあ、お疲れ様。まだ残って練習してもいいし、ログアウトしてもいい。俺はログアウトする。」
素早くステータスメニューからログアウトを選択する
誰もログアウトしないか……折れてなくて良かった……強く言い過ぎてないか不安だったからな……
全員分の夜食を用意して待っていよう。
◆◆◆
夜の1時頃にみんなでログアウトして紅の様子を見たら、1人で全員分の夜食を用意して、リビングに人数分の布団を敷いて書き置きをして眠っていた。
『強く言い過ぎて、ごめんなさい夜食は温めて食べてください。おやすみなさい。』
全員が呆れて、燕は驚いてもいるな。隆太は気にせずイスに座り宗介が夜食を温めている間に燕には説明しないとな。紅が用意した夜食を食べながら。
「明日は〜12時に『英雄達の伝記』のスタートだからね~9時に起きてキャラメイクをするからね~雑談もいいけど早く寝なきゃダメだぞ~おやすみ〜」
大丈夫だよ理解してるよ香…隆太を起こせばいいんだな…




