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とある男の記念すべき日1

「我ら王国は世界を統一することをここに誓う!」


 この世界を統一する宣言を行った王の言葉に群衆が沸き立った。

 一通り歓声が収まったところで王の側近、近衛隊長が王に近寄り何事かを伝えていた。

 話を聞き終わった王は再び宣言を行った。


「今しがた近隣諸国へと侵攻が開始された! 我ら栄えある王国は世界を統一し、世界を救うための聖戦になんとしても勝たねばならん! 全王国民に告げる! 各々ができる事を精一杯行い、我ら王国の歴史の一部となり、全王国民で聖戦を終わらせようではないか!」


 それで啖呵を切ったつもりなのだろうが俺はどうでもいい。俺は強くなりたいだけだ。そんなことは俺には関係ないこと。勝手にやってくれ。

 元々俺はこの国の人間ではない。たまたま目的地が王国内にあったから来ていただけ。

 歩いていると――王が出てきた!――なんて騒いでいたから見物しに寄り道しただけだ。

 群衆が沸き立ち、王が手を振っている中、俺は目的地へ向かうために王城前の広場から抜け出た。

 俺が行きたかった場所は王城から東に5キロ程行った場所にある、なんでも神々がこの世界を作る時に拠点にしていたとされる神殿みたいな物だ。

 神様がいなくなってからも神の力の余波で強力な魔物が生産され、一種のダンジョンとなっている。

 また、魔物が生産されるのと同時に拠点にしていた神に纏わる武器なども気が付くと生産されているという。

 俺としては武器とかには興味がなく、強力な魔物と殺りあえるという所に魅力を感じているのだ。というか俺は武器は使わない主義だ。

 そんなこんなで王国が全世界と戦争を開始したとか、強力な武器とか、広場を警備している兵士たちからの訝しむ視線とかは無視して目的地へと歩を進める。


  ◇◆◇


 この世界には色々な種族がいるが、見るからにどの種族でも作ることは困難であろう建造物を眺めていた。


「立派な建物だ。でも石だけで作るとか神様は寒さを感じなかったのかねー」


 普通の人族とは多少感性が違っているということを知っているが、そんなにズレてはいないだろうと思う俺は率直な感想を述べた。

 感性が違っているなんていい方をしたが、単純に思ったことをそのまま言っているだけなのだ。なので普通に――こんな建造物を作るなんて神様は凄いなー――という感想を述べることも出来る。


「でも神様ってデカくて細い体型だったのかねー……。こんな間隔で柱を置いちゃうと通れないじゃん。玄関のドア枠がデカイのに門が小さいとかアホなんかね」


 伝承とか絵画とかで見聞きした神様は一様にデカい種族だった。だからこの神殿みたいなダンジョンの造りが気になって仕方ない。

 もしかすると神様ではない者が付け足したのかと思いたいくらいに柱が邪魔くさい。いや、邪魔だ。

 このままでは柱と戦闘を開始しそうだったので少し足早に入り口を通ることにした。

 ダンジョンの外観から広いだろうとは思っていたが、実際にそのダンジョンに入ると広さがアホみたいだった。

 俺の目の前には、ただ単に広いだけの何もないホールが続いていた。確かに中央に本格的にダンジョンへと入るための階段があるにはあるが、そのサイズは人族に誂えたような大きさなのだ。つまりこの広い空間にその階段だけではあまりにもスケールが違いすぎて、神様の美的センスというかそういった感性を疑ってしまいたくなる。


「もう何も言うまい……。とりあえず強力な魔物がいればそれで良し」


 俺は急いで階段を降りていった。この空間にいると俺の精神衛生的に良くない。

 階段を降りていて気がついたのだが、灯りを発生させるための物がないのに明るいという、とんでも設計の建物ということに気がついた。神様は変な所にこだわるおちゃめさんだったのだろう。

 そんな風に思いながら降りていた階段がようやく終わりになり、文字通り、いや、イメージ通りのダンジョンが目の前に出てきた。

 床の横幅は8メートル程度で、天井までの高さは3メートル程度の廊下が延々と続いている。

 進行方向には壁があり、左右に道が分岐している。ひとまず右側の道を進むことにする。

 その後も同じような道をずっと歩いているが、魔物とは一回も遭遇していない。このままこの階層を踏破してしまうのではと不安になってきた。

 魔物が全然出てこず暇になったわけではないが、先ほどの王国について考えながら歩くことにしよう。

 この世界には大中小様々な国がだいたい47個ある。つまり王国は46個の国に対して宣戦布告をした。それがその他の国の王国に対する認識だろう。俺としては国の数がまた変わるのかー、程度のことである。

 王が近隣諸国に攻撃を開始したと言っていたが、その近隣諸国とはこの世界の5大国の4国だとバカでも分かる。

 王国がこの世界で一番デカい国土を有しており、そのデカい国土を囲むように残りの4国が国土を有している。王国の北側付近に帝国が、東南付近に公国、南西付近に魔族国、そして各国の間を共和国が治めている。

 各国の力関係は国土ベースで考えれば王国が一番である。続いて共和国、帝国、公国、魔族国の順となっている。武力ベースでは魔族国、帝国、王国、共和国、公国となる。

 帝国は武力が一番の抑止力であるとしていて帝王が人族では最強ではないかと言われている。公国は帝国の圧政に反発した貴族が発足した国だけあり、武力を持たない国だ。国が武力を持たずどのように治安を維持しているかというと、それは冒険者ギルドを作った国として冒険者に治安維持をお願いしたりしている。冒険者には仕事に見合った額が冒険者ギルドより支払われているので問題ないようだ。魔族国は国の名前通り魔族のみの国だ。この世界にいる種族のなかで最強の魔族。その魔族が国を興した。他種族との交流が下手な上、世界の中でも少数しか存在していない種族なため広い国土を必要としていない。それ故、他の国と争うことは基本しないという以外にも平和的な国なのだ。共和国については様々な種族が協議を重ねて興した国だけあり、様々な種族が日々の生活を営んでいる。またその豊富な種族から成る正規軍は非常に強いと評判だ。そして共に平和を創るといった理念に賛同さえすれば、その正規軍の庇護下に入れるということで中小国を続々と吸収している。つまり国土が世界中に散らばっている国なのだ。そんな近隣諸国に一度に喧嘩を売った王国。国土が広いだけの国が今後どうなっていくのか多少気にならなくはない。

 俺はどの国にも属していない流浪の民なのだが、これといって属したい国がない。これからも国に属することはないだろう。

 一番初めに右に曲がった側の探索が終了したため走って元の場所まで戻っている途中で、他の冒険者たちと遭遇した。


「この先は何もいないし、何もないぞー」


 これだけを伝えて素通りしようとした所、先頭を歩いていた白銀の鎧を着込んだ騎士っぽい男が声を掛けてきた。


「あ、あの! 魔物が一切いないのはあなたが屠ったからでしょうか? 先程からあなた以外の気配を感じなくて……」

「な、なんだと!?」


 驚愕の事実を冒険者たちから告げられた俺は絶望感を漂わせながらその場で崩れ落ちた。

 声を掛けてきた騎士っぽい男が心配してくれて何事か声を掛けてきているが、そんなことはどうでもいい。俺以外の気配を感じないと言っていた。つまり、この階層には魔物が存在しないということ。無駄な探索をしたということになる。


「……下の階に行く階段はあるのかい……騎士っぽい男の人よ……」


 俺は虚ろな目をしているであろう顔を騎士っぽい男に向けて尋ねる。


「え? 階段の気配はまだ掴めてないので何とも言えませんが、他のダンジョンでは16階くらいまではあったので何処かにあるかと思いますが」

「それさえ聞ければ良い! 俺は先を急ぐので、もし冒険者たちも来るのであれば慎重に進んできたらいいだろう!」


 16階までこの広さの階層があると思えば何処かに魔物がいるはずだ。気配が掴めてる掴めていないは問題ではない。魔物がいるかいないかの問題が重要だ。残念ながらこの階層には存在しないようだが、残りの階層にはいるかも知れない。そんな情報を聞いたからには絶望感なんぞに打ちひしがれているわけにはいかない。強力な魔物が俺を待っているのだ。急がねばならない。

 冒険者たちは俺を追いかけてきているようだが、やる気に漲っている俺の早さには付いて来られないようだ。

 この時冒険者たちの中にいた魔術師然とした女から追跡魔法を掛けられていたことなど、魔法の才能が無い俺は知らなかった。


 5階層目まで魔物が存在しない階層だというこれまた衝撃的な驚愕の事実を知った俺は次の階へ下りるための階段前で休んでいた。


「やっと追いついたニャー! みんなー! こっちにいるニャー!」


 猫のような手足、猫のような耳、猫のような尻尾の生えている人族がこの階段部屋の前で後続者たちを呼んでいた。

 そういえばさっきの冒険者たちの中に獣人族の女がいたような気がする。どうやらここまで追ってきたようだ。


「……私の魔法は嘘つかない」


 これまた冒険者たちの中にいた魔術師然とした女が音も立てずに俺の近くに来ていた。転移魔法を用いて移動しているようだ。魔術師の中には肉体を動かすのを嫌う傾向の強い者と、肉体を動かしその動きを魔法の発動条件とする者たちがいるらしい。魔法が使えない、魔法を感じられない俺には分からない話なので詳しいことは分からない。この魔術師然とした女は前者に傾倒したタイプなのだろう。


「突然走りだすので思わず追いかけて来てしまいました」


 爽やかな笑顔を向けながら現れた騎士っぽい男。全く疲れを感じさせていない所を見るに鎧に補助魔法が掛かっているのだろう。先程も言ったが俺は魔法を使えない感じられないので、恩恵を受けることが出来ない。魔法とは魔力とかいう力を感じることが出来る者でなければ使用出来ないと小さい頃に教わったことがある。俺は魔力を感じることが出来ないのだ。


「マジでお前足早すぎだろ……。追いかけてきてやってる俺たちのことも考えろよー」


 他の冒険者たちとは違い何の魅力も何の特徴もない男が最後に到着した。先程いたかどうかも分からないほどに影の薄い男だ。


「俺としては少なくとも3階層目からは魔物がいるかと思って急いでいたのだが、魔物が全然いないという事実に少し速度が落ちたからそろそろ来ると思っていたぞ」


 俺は騎士っぽい男に対して現状について説明をした。

 冒険者たちは騎士っぽい男、影の薄い男、猫的獣人族の女、魔術師然とした女の4名の平均的なパーティー構成だ。ちなみに俺は今までに2回しかパーティーを組んだことがない。


「それで急いで俺を追ってきていたようだが、何か用事か? 君らのパーティーを見た感じでは私が入る必要性は感じられないのだが」

「おー。流石にこのダンジョンへ一人で入っていくからには強いとは思ってたけど、意外と人を見る目はあるのなーお前」

「初対面の方に対して失礼だろう! 失礼な態度を取ってしまい申し訳ないです。そして、仰った通りお一人でした私たちのパーティーに入りませんか? こちらの魔術師が念話をしていたのに気付かれないと言っていたので追いかけて来ました」

「……魔法が使えない人なのにココに来る変人」

「えへへー。ごめんねー。二人は思ったことをスパッと口にするニャー」

「……事実を伝える……これ魔法で必要」


 冒険者たちが色々と話しているのを眺めながら、俺はパーティーに入れてもらうべきか判断に困っていた。この場所は普通のダンジョンではなく神様が作ったダンジョンだ。といっても意図的に作ったわけではないだろうけど。そんなわけで神の力の余波で強力な力を持つ魔物が出るかもしれない場所なのだ。一つの間違いで命を落とすかも知れないほどのダンジョンでは、上手く連携が取れなければ死のリスクが高くなる。パーティーに参加した場合、新参者の俺、しかも戦い方に癖のある俺が加わるリスクを気にしていることを騎士っぽい男は感じ取って妥協案を提案してきた。


「私たちは私たちの戦い方をします。つまりパーティーを組んではいますが戦闘は別々に行う。そして片方が非戦闘状態でもう一方が苦戦しているようであれば、スイッチを行いながら戦う。完全に別のパーティーとして戦う。これならどうでしょうか?」


 そんなこんなで言いくるめられた俺は人生3回目のパーティーを組んでダンジョンを進むことになった。

やっとの思いで書き始めることが出来た処女作です。いったいどこまで皆さんと一緒にこの物語を紡げるか心配だというのが正直な気持ちです。何かと文章の書き方などが変だったり、言葉の使い方を間違えたりするかも知れません。その時は臆せずに声を掛けて頂ければと思います。私自身でも何度も見返してから投稿しておりますが、そもそも私の語学力が拙いですので、皆さんにご教示をお願いしたかったりします。とりあえず、皆さんに楽しんでもらえる作品になるように頑張って続きを考えて行きます!これからよろしくお願いします!

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