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二十六 あみだくじ
「ふん、笑ってるんだか怒ってんだかわかんねぇ役人風の無表情に、とぼけたロイド眼鏡野郎。シケタツラしやがって。」
人物描写で完璧に先手を取られてしまいました。
「さすが、ご明察で恐縮します先輩。交通局のアミダと申します。」
「勝手に後輩面すんな、てめぇの方がどう見てもおっさんだろ、タクシー乗り場は目の前だバカ。」
「いろいろありまして、始発を待とうと思います。」
「じゃ、俺と朝まで飲むってことだな、あみだくじ。」
「もしよろしければ。」
「いい度胸だ、座れっ!」
虎さん、コンビニ袋からガチャガチャとワンカップの空きコップと焼酎の瓶を取り出しました。
「このコップを使え、今ボトル開けるからよ。」
虎さんボトルをキャップごとくわえると、
「ガシャ」とガラス瓶の首をかみ砕きました。
「ほらよ。」
ガラスのコップに、焼酎、その中に透明なガラスの破片がキラキラと渦を巻いて舞っています。
「おい、あみだくじ、俺の酒が飲めねぇのか。」
「ありがとうございます、いただきま~す。」
私は、一気に破片入り焼酎を飲み干したのでした。




