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幸福な日々  作者: 豊洲 太郎
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プロローグ  脳みえ から 三    It's a long road.

通勤の地下鉄で書いています。

幸福な日々

             豊洲 太郎

 プロローグ

 さて、それにしても人類の「脳みえ」進化は不思議に感じられるかもしれません。

 なにしろ、少し脳がハミ出しています。

 この人達と仲良くなるのは簡単で、誠意を持って脳に触れてあげればそれで良いのです。

 若い世代では「脳タトゥー」が流行っているようですが、衛生上自殺行為と言えます。


  一

 この普遍年紀では経済も文明も絶対零度成長に維持されています。

「笑っていいとも」の放映は復活以来、(6×10の7乗)+4126回を数えました。わずか5万年しか経っていませんから、今朝の東西線はやはり混雑しているわけです。

 歳のせいかサラリーマン山田の指先はカサカサで、新聞をめくるたびに指なめする癖があります。

 読みたかった日経人事欄の枠が広告になっていました、

 「みんなが迷惑しています。新聞は縦四つ折りで」

        新東京市交通局 旅客安全部 マナー向上委員会

 なんたる広告費の無駄使い、苛立ちつつも新聞の縦二つ折りを反対側に折り返しました。その角が正面の座席でまどろむ田中さんのハミ脳に接近します。


  二

 つやつやの脳自慢、田中さんは攻撃ヘリに空爆される夢をみました。  「地獄の黙示録」という古代映画の光景が浮かび、空対地ミサイルが炸裂、吹き上がる魔の炎と、突然の闇と静寂。

 一方、重要参考人山田は何も気付かず日経の「私の履歴書」欄を読んでいます。

 田中さんは目をむいて山田を睨んでいましたが、やがて目を閉じました。

 「たかが新聞の角で死ぬ訳無いでしょ、」

 と田中さんも考えます。

 何事も無かったように、門仲駅で降車しました。

 でもね、お前は既に死んでいるのだ、田中のおっさんよ。

 わずかな脳表の擦過傷から山田の唾液菌が浸透、あと三日で貴方は「膿みえ」になるのですよ。

 さて賢明な皆さんは、私の言動に、田中さんへの敵意を感じとったことでしょう。


  三 It's a long road.

 58歳 男性 ID:ツヤツヤさん

 「脳みえ性脳膜炎とはどんな病気でしょうか。やたら痒いです。」


 ベストアンサー ID:非公開さん

 「医学的には脳みえ性髄膜炎といいます。一応、二日以内に遺言などして、気持の良い終わりを迎える準備をしましょう。」


 もうすぐ故人となる相手に恨み言なんて良くない事なのはわかっています。

 田中さんに申し上げたかった事は、

 「携帯みながら、ヒジで俺のわき腹を突つくんじゃねぇよ、バーカ、死んでしまえ!」

 だったのですが、今や実現しつつあります。

 彼の葬送にはランボーⅠのテーマ、『It's a long road.』を贈りましょう。

 さてと、容疑者『サラリーマン山田』には、鉄道警察隊宛て信書の写しと、名前からして貴方は人ではない旨をしたためて送り付けましょう。


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