表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/52

第六話『奴隷狩り』

3話の「ブライ召喚」に挿絵を入れたのでよろしければ見てください。

 町……というよりは村と言う感じだ。

 その村の入り口には屈強な男が立っていた。そいつは俺と、縛っている男を見て驚いている。

 俺は普通にそいつへと歩み寄る。

 そして、目線を合わせて喋りだす。二m近くあるから見上げる感じになっている。チッ。


「おはよう。この村に入りたいんだけど」

「ならば身分証を出せ」


 どこの門番もこんな感じなのか? 偉そうな態度でイラつく。


「ないんだけど」

「ならば通行料として銀貨十枚渡せ」


 は? なんでこんなやつに千キュールも渡さなきゃいかんのだ。

 ……まあ、しょうがない。こいつが嘘ついてたりぼったくってたりしたらそれ相応の罰を受けてもらうだけだ。


「ほら、これでいか?」


 俺はブライの腰につけているパンパンになった小銭入れから銀貨を十枚取り出して門番に渡す。

 門番は目を見開いて金と俺を交互に見る。

 俺はそれを無視して門番の横を通り過ぎる。

 門番は呆気にとられて俺をただ、見ることしか出来なかった。


 村はなんていうか、村だった。

 平野に広大な畑が広がっており、所々に民家がある。多分三十はあるんじゃないか?

 でも、これは失敗か。ここに奴隷商なんているわけがないよな。畑と家しかないし。道具屋くらいはありそうだが。

 ま、いいや。宿屋もきっとあるだろう。ついでに冒険者ギルドもあるかどうか聞いてみるか。

 俺はそう思い、歩いていく。













「あ~! 宿屋どころか村人一人いねぇじゃねぇか!」


 俺は村を練り歩いていたが、まだ誰一人として人に会っていない。

 もう家に乗り込んでやろうか? 本当に誰もいなかったら金目のもん全部掻っ攫っていくって方針で。

 よし、決めた。それで行こう。

 俺は適当に目がついた家の扉をドンドンと叩く。


「お~い! いるなら出てこい!」


 俺はすでに心に決めていた。十秒経っても物音一つしなかったらブライに扉を開けさせる、と。

 そして、五秒くらいだろうか。家の中から物音がした。

 そして、扉のほうにゆっくりゆっくりと向かって来ている。

 俺はそれをジッと待っている。

 

ギシ……ギシ……


 大丈夫。俺は待てる。


ギシ……ギシ……


 心だ。心を無にしろ。さすれば道は開かれん。


ギシ……ギシ……


「おせぇよ!」


 俺は我慢出来ずに扉を蹴破った。あ、俺でもいけたわ。

 扉はバン! と留め具が外れて倒れた。

 扉の向こう側には一人の女が立っていた。その女性はなぜかとても怯えていた。

 

「おい、お前なんで……」

「もう我慢できねぇ! こいつを殺るぞ!」


 突然違う民家から人が出てきて叫びだした。

 それを合図に多くの民家から人が出てきては叫ぶ。なんか目が血走ってるぞ。

 おそらくあいつらは俺を殺す気だろう。殺るぞ、とか言ってたし。


「ブライ、全員五体満足で気絶させろ。大怪我はさせるな。村人なら弱いから十分出来るだろ?」


 俺は五体のブライに命令して行かせた。

 俺が女に背を向けたとき金属同士がぶつかり合う甲高い音が聞こえた。

 ブライは俺と女性の間に手を出しており、女の手にはサバイバルナイフのようなものが握られていた。

 今こいつは俺を殺そうとしたのか。近くにブライ置いといてよかった。


「おい、お前どういうつもりだ?」

「腐った王国のやつなんかに言う口は持っていない!」


 女は恐怖の中にも決意を持った目で俺を見据えて叫んだ。

 あ~、こいつら勘違いしてるな。てか王国を腐ってるとか。どんだけ嫌いなんだよ。

 俺は王国の人間じゃない、と言おうと口を開く。


「あ~、お前ら勘違いしてるようだが……」

「私たちは勘違いなどしていない! お前らが全て悪いのよ!」

「だから俺は王国の……」

「喋るな! お前はもう包囲されているのよ! 逃がさないわよ!」


 チッ、しょうがない。

 俺はブライに「気絶させろ」と命令をした。

 女はブライに横っ面を殴られると白目をむいて倒れた。一瞬だったな。

 そして、村人たちのほうを見ると、こちらもほとんど終わっているようだった。

 俺はブライに全員気絶させたらここに集めろ、と指示を出してぼんやりと待っていた。





 しばらくすると、村人全員が集まった。およそ五十人。おそらく村長と思わしき人物までいた。村長らしき人物は力なくぐったりとしていた。死んでないよな? ま、最悪いいけどな。俺の命を狙ったんだし。

 俺はブライに頼んでおいた水を村人にかける。水をかけられて気絶していた村人たちが目を覚ます。

 目を覚ました村人は自分たちが縄で縛られていることを見て、諦めたのか黙った。

 そして、胡坐をかいて座る俺に視線が集まった。


「なあ、お前らは俺になんの恨みがあって襲い掛かってきたんだ?」

「お前が王国の人間だからだ!」


 一人がそう叫ぶと村人は次から次へと叫び始める。

 とりあえず最初に叫んだやつをしばいて、全員黙らせた。


「王国の人間? 俺は違うぞ。ただの旅人だ。ただの旅人をお前らは襲ったんだぞ?」

「「「………………」」」


 さっき叫んだやつをしばいたからか、急に叫ぶやつはいなくなった。でも全員が俺を睨んでいる。

 なんかこういうのっていいな。力があるものが正義、みたいな感じ。俺最低? そんなのしらん。

 

「だからそれ相応の対価を要求する。お前らは俺の命を奪おうとした。だからお前らの命をもらうってのもあるが……」


 お前らの命、と言ったところで村人は喉をゴクリと鳴らした。

 今の村人たちの心は恐怖のみが支配しているだろう。こんな力もなにもない一七歳の子供にどんな顔してんだよ。

 俺はゆっくりと溜めてから口を開いた。


「この村にある有り金全部よこせ」

「ふざけるな! この村はどこよりも貧しい暮らしをしていて、今の生活だけでもいっぱいいっぱいなんだ!」


 若い男が叫ぶ。相変わらず恐怖に染まった顔をしているが、その中にも必死さがうかがえる。

 男は後ろにいる子供を隠すように体を張る。いや、めっちゃ見えてますけど。

 てか、そういうことか。男は今まで貧しい思いをした子供たちをこれ以上苦しくさせたくないんだな。

 そうかそうか。いいやつだな。


「そんなの知るか」


 俺は無表情で言い切った。

 男は唖然として、周りの村人からは「悪魔だ……」「極悪非道……」などと声が聞こえる。

 まあ、そんなの知らんがな。俺はこっちに来たばっかだぞ。この村は結構広かったし、そこそこ畑も出来ているから貧しそうには見えなかった。

 ま、貧しいからと言って助けるなんて義理もないしな。いきなり俺に襲い掛かってきたやつらだし。


「そんじゃ、ブライ五体で民家をあさってこい。小銭は袋に入れて、金目のものは手に持ってこい。行け」


 俺は七体いるブライのうち五体を民家あさりに行かせた。

 これくらい勇者もやってたし大丈夫でしょ。

 まあ、文句言ってきたやつは問答無用でしばき倒すけどな。

 村人たちはこの世の終わりのような顔をしている。

 だが、中にはまだ諦めていない目をしているやつもいた。俺は釘を刺しておく。


「今ブライが減ったから俺たち全員で襲い掛かれば勝てるかも!

 ……なんて思うんじゃねぇぞ。お前らくらい殺していいなら一体でも十分だ」

 

 本当は知らんけど。

 でも殺してもいいなら一体でも行ける気がする。

 村人はそれを聞いてガクンと肩を落とした。もう何もかも諦めたようだ。

 おうおう、いいね~。人が絶望する姿ってのはこんなに気持ちがいいものなんだね~。前世は俺がそっちの立場だったからな。命までは奪われなかったものの、それ以上の苦痛を受けた。

 

「ん?」


 村人五十人が目の前で絶望する姿を堪能していると、がちゃがちゃと鎧の音がした。

 それもブライたちの比じゃないくらい多くの音だ。

 村人たちはゆっくりと顔を村の入り口へと向ける。その顔にはすでに生気は感じられない。

 俺も村の入り口を見てみる。

 少し遠くに全員同じ鎧を着た者たちが足並み揃えて歩いていた。

 後ろには(たか)のシルエットが書かれた旗が立っている。

 俺はあれがなにか村人に聞いてみる。おそらくは……


「おい、あれはなんだ?」

「……あれは王国の兵士ですじゃ。とうとうここも奴隷狩りに会うようですじゃ……」


 やっぱりそうか。あれが王国の騎士たちか。

 小さな村を襲うからか、兵士の数は少ない。せいぜい百あるかないかくらいである。まあ、それでも十分多いのだが。

 と、見ているとブライたちが戻ってきた。


「なんだ、もう全部回ってきたのか。随分早かったな」


 ブライはがちゃっと頷くと袋を一つ出す。

 なんだ、全然入っていないじゃないか。

 道具袋はパンパンになるとサッカーボールの一回り小さいくらいになる。でも、今は底が少し膨らんだ程度だ。

 中身が銀貨や金貨のみ、ってのもあるかもしれないがそんなのは期待できないだろう。

 俺は王国の兵士のことをすっかり忘れて、目の前の金のことしか頭になかった。

 俺は徐に袋をひっくり返し、中身をぶちまける。銀貨がひー、ふー、み

ー………………多分二十枚はあるな。五十人いてもこれくらいなのか。いや、この中に俺の銀貨十枚も入ってるから実質十枚か。まあ、貧しいと言っていたしこんなものか。

 他に金目になりそうなものは……と思ったがブライたちは何も持っていなかった。

 チッ、本当になんもねぇな。

 とりあえず、俺はここにある金と側近のブライに持たせてある金を合わせて一体呼び出す。

 

「【ここにある金すべてと引き換えに我が忠実なる騎士を召喚する。いでよ! ブライ!】」


 金が強く光った。おさまるとやっぱり一体のブライが立っていた。

 村人は目を見開き、口をあんぐり開けて驚いている。

 ははは、実に気分がいい。


「この村は包囲した! 大人しく出てくれば痛い目に合わずに済むぞ! 出てこい!」


 あらら、すっかり忘れてた。てかもう包囲されちゃったか。しょうがない。ブライならいけるだろう。

 俺は使う用にとっておいた金貨も取り出し二体のブライを呼び出した。

 さあ、あいつらにも金目のもの全部置いて行ってもらおうか。命を狙うなら俺も狙うまで。さあ、開戦だ。









読んで頂きありがとうございますm(_ _)m

評価がやっぱすごいですねヾ(@^▽^@)ノ こんなに評価してもらったことが初めてで嬉しくてランニング二時間くらい走ってましたよ!(嘘一時間半くらい)

 これで明日は筋肉痛d(>_< )

 ………(T_T)

 と、関係ないことすいません。

 最後に感想アドバイス評価ももちろんお待ちしております!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ