第四十六話『交渉』
私は走る。
あの大爆発から数時間。私は爆発が起きた場所へと向かって走っていた。
交渉すると言ったものの、相手の居場所などなにも知らないのだ。
相変わらず何も考えずに行動する自分に呆れる。
そんな感じで私はとりあえず爆発が起こった地へと向かっていた。
夕暮れ時。全速力で身体強化まで使って走った私は太陽が沈む前になんとか爆発地跡についた。
そこで私は棒立ちになっていた。
「………………」
遠く離れているビルス帝国まで振動が伝わってきたのだからかなりの規模の爆発だろうと思っていたが、ここまでとは思わなかった。
森の中を走っていると、徐々に倒れている木が増えてきて、森を抜ける寸前では焼け焦げた木もあった。
そして森を抜けるとまったいら……いや、少し坂になっているか。木どころか、遮蔽物がなにもない更地が広がっていた。
しばし呆然としていると遠くに緑が見えた。
「……あそこに行ってみよう」
そう呟いて私はまた駆け出した。
緑が近づいてくるとそこがまだ生きている木々だと認識できた。
まあ、こんな爆発なんだ。一点に集中した防御魔法じゃないと受け止められないだろう。いや、普通はこんな被害を出す爆発を受け止めれるのもおかしいのだが。
まあ、いい。
私はその木々の中を見て回った。
森というより、林のような感じで本数も少なかったのですぐに誰もいないことが分かった。
「はぁ……」
確かにこんな場所にずっと留まっていたりしないだろう。相手にも拠点はあるのだろうから。
私は木にもたれかかり、ずるずると座りこんだ。
身体強化も小出しにしていたのだが、さすがに何時間もやっていると魔力が切れる。
腰のアイテム袋から『魔力水』を取り出す。魔力水はその名の通り魔力が内包された水であり、飲むことで少量ながらも魔力を取り入れることができる。
今の私の魔力量だと多分少し休めばこの魔力水分の魔力は回復するだろうけど少しでも早く動きたいからね。
液体が入っている部分はまん丸で、そこから出ている細い管に口をつけてコクコクと飲み干す。
味は水と対して変わらない。だが、口に含んだ瞬間水からなにかが私に流れ込んでくるのを感じた。おそらく魔力だろう。
魔力水を飲んだ私は一息ついた。ここまで休みなしで走り続けたのだ。疲労も溜まっている。
ここで少し休んでから動こう。
そう思った私は木に背を預け、足を伸ばした状態でリラックスした。そんな状態でどこに向かうか考え始めた。
普通なら造幣所のところよね。多分あそこにある詰所を使われていると思うし。
…………うん、そこにしよう。
考え事なんて数秒で終わった。元々考え事が苦手なのだ。迷ったら特攻していたあの頃が懐かしい。
さて、行き先も決まったことだし体を休めることに集中しましょうか。
私はすでに日が沈み、薄暗くなった木々の中で冷たい風に吹かれながら魔力の回復を待った。
魔力が魔力水を合わせて二割ほど回復した頃(体感)私は立ち上がって伸びをした。
ずっと同じ姿勢でいたせいか。体が硬い。途中で意識がなくなったり(寝たり)したし、城での生活で随分なまってしまったな。
軽く跳ねたりして体の調子を確認する。
よしと思ったところで身体強化を施して走り出す。
体が冷たい風を切る。更地のせいで気温がやたらと低い。
日が落ち、月も雲に隠れている今は完全に暗闇に覆われている。
が、私はいつもの‘勘’で突き進んだ。少々なまっていないか心配だったが。
しばらくすると傾斜が変わった。徐々に登りになっている。
山についたか。
私は疾風のごとく走るのを止め、歩く。身体強化は少し弱くしてかけ続ける。
しばらく進むと暗闇に光りが現れた。
ポンッと出てくるのではなく、じわじわとその存在を溶け込ませていくように。
私はそこに近づいた。
早朝。いや、深夜か?
昨日あんなに早く寝たためか、まだ真っ暗闇の中目が覚めてしまった。
とりあえずアヴァロンAを呼ぶ。
音もなくアヴァロンは現れた。いつの間にか後ろにいたアヴァロンAにびっくりしてしまう。
「とりあえず光をつけろ。弱くな」
そう言うと辺りがぼんやりと明るくなってきた。アヴァロンAの指先が少しずつ光を強めていく。
やがて一、二mくらい先は見渡せる光量になった。
と、不意に何者かの気配を感じた。
落ち着いて目を動かす。あ、暗闇だから分からないわ。
俺はアヴァロンAを小突いて、俺を守れ、と目で訴えると伝わったのかコクッと頷く。
俺は目を閉じて耳に集中する。風の音、木々が擦れる音…………誰かの息の音が聞こえた。
俺はそれに更に集中する。手を耳に当て、音を拾う。
そして、その音がする方へと歩いていった。
「私はビルス帝国女王『ライラ・ビルス・カイラウテ』。あなたと交渉しに来た」
突然声が聞こえて目を開けると、ちょうど暗闇から光の範囲内へ入ってきた者がいた。
燃えるような赤いセミロングの髪。その赤と同じ攻撃的な瞳。
そんな色を納得させるような顔立ち。薄く不敵に笑う唇、スッと通った鼻筋、つり上がっている目と眉。
全体的にやや幼さを感じさせる容姿はエイクたちを思いだす。あれよりは年上っぽいけど。
俺は交渉と言った女王に問う。
「交渉と言ったな。お前らが俺に提示する条件はなんだ?」
「私たちが用意出来るものならなんでも」
う~ん、ここは普通に金をむしりとればいいのか?
っと、相手の条件も聞かないとな。
「お前らが俺に望むものは?」
「不可侵条約を結んで欲しい」
「OK。俺からの条件は、俺の属国になること、そして金を寄越せ」
俺は案外簡単にOKを出した。
不可侵条約ってあれだろ? 侵略しないでください、みたいな?
…………ちゃんと勉強しておけばよかったかもな。
案の定女王はポカンとしていたが、すぐに顔を引き締めると、はい、と頷いた。
「ところで金銭はどれくらいで……?」
「お前の国の運営にかかる最低金額以外全部だ。誤魔化すなよ?」
最低金額と言ったら、あれもこれも、とほとんど渡されなさそうだが一応信じる……というか見てやるか。
少なかったら文句言えばいいし。てか国の運営なんて本当に分からん。
そんな感じでその後も少し話し、書類などはビルス帝国に来ていただければ……、みたいなことを言って帰って行った。
まあ、属国=支配的な感じだからいいんじゃね?
ふと気づいたら空が白み始めていた。
主人公……てか俺暴走中ww
もう残りの国全部スーラとマイトスの魔法で吹き飛ばそうかな?www
…………はい、さすがにそんなことはしません(多分)
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