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第四話『盗賊に容赦はいらん』

 ちょうど俺のところだけ影がくりぬかれたかのように日が当たる。

 昨日のような木々のざわめきはなく、静寂が森を支配する。

 俺は目を覚まし、ゴシゴシと目をこすりながら立ち上がる。

 そこで、ふと異変に気づいた。


「あれ? ブライ、お前以外のやつはどうした?」


 ブライは俺が立ったときに一緒に立ち上がっていた。それで、俺はブライを見上げる形で質問した。

 ブライは森の方向を見た。

 俺は聞く。


「森に狩りに行ったのか?」


 ブライはがちゃがちゃと音を立てながら首を横に振る。

 ん? じゃあどうしたっていうんだ…………もしや?


「何者かが連れ去ったとかないよな?」


 今度はがちゃっと音を立てて頷いた。

 マジか……昨日のあれは夢じゃなかったのか……

 てかなんで抵抗しないんだよ。

 と、それは後でいい。今は二体のブライを回収するのが先だ。金貨二枚分だぞ。そんな大金をやすやすと手放すわけないだろう。


「チッ、ちなみにお前らって仲間の場所がどこかとか大体でいいから分かるか?」


 ブライはがちゃっと首を縦に振る。

 よし、こういうのは大体思考が共有されてたりするものだからな(ネット小説で見た)。


「でかした。それじゃそこへ急いでいくぞ。ばらされたりしたらたまらねぇ」


 俺はそういうと残りの金貨で二体ブライを作ろうと思い、ポケットを探った。


 ガサゴソ


 見てろよ、すぐに報復に行ってやる。俺に手を出したことを後悔するんだな。


 ガサゴソ


 盗みをするくらいだから相手は盗賊か? なら金とか貯めてそうだな。アジトを攻め落としたら貯めてある金目のもの全部掻っ攫ってやる。


 ガサゴソ


 …………ないぞ?

 いや、待てよ。夢が本当だとするなら……


「俺、金貨も盗まれた……」


 そりゃそうだ。盗賊とかなら身包み剥いで金目のもの全部持っていって当たり前だ。

 命まで奪わなかったのは俺が子供だったからだろう。まあ、それは哀れみとかじゃなくて、子供なんてこの森に彷徨ってたらすぐに食われるだろう、ということだ。

 しまったな……ブライ一体だけで制圧出来るか?


「お前、盗賊が何人くらいいるのか分かるか?」


 ブライはがちゃっと頷いてパーにした右手と、人差し指、中指、薬指を立てた左手を前に出した。

 八人か……


「お前はその人数を相手にして勝てるか?」


 ブライはしばらく考えた後首を横に振った。

 そうか、ならば……


「お前は全力でとらわれている二体を助け、三体で盗賊を制圧しろ」


 ブライはそれならとがちゃっと頷いた。

 俺はブライに居場所へと案内させて、ブライの後ろを歩いていた。


 しばらく歩くと木々の隙間から洞窟が見えた。おそらくあそこが盗賊のアジトなのだろう。

 俺は遠くから監視ができ、尚且つ見つからないような場所に陣取り、ブライへ指示を出した。


「よし、ブライ。死んでも勝て。あと、盗賊は出来るだけ生かせ。危なかったら迷わず殺せ。行け」


 そう言うとブライはがちゃっと頷き突撃して行った。

 さて、俺はここで気配を消して帰ってくるのを待つとしますか。






 俺は時折聞こえてくる悲鳴をBGMにしてこれからのプランを考えていた。心地よい断末魔の叫びが耳に響く。なんか嵌りそう。


 プランは、とりあえず盗賊から金を全部巻き上げて戦力の確保だな。どれくらい貯め込んでいるか分からないが、もう数体はブライを増やせるだろう。

 そのあとは、泊まるところ……というより拠点の確保だな。町で宿でもとるか。

 でも、そうなるとブライたちはどうしようか……もう一回金貨に戻すみたいなことできないのかな?

 まあ、それは後で考えるか。


 そんで、世界征服するならまず国を一つくらいは落とさないといけないよな~。

 それだとやっぱりブライよりも一つ強い白金貨一枚のやつを召喚しときたいな~。

 金を集める方法か……働くしかないのか?

 いや、待てよ。ここは異世界だ。小説で良く出てくる冒険者ギルドみたいなのもあるんじゃないか?

 そこなら…………よし! いける! これに決めた!


 と握りこぶしを作ると、いつの間にか悲鳴は消えていた。

 ブライが倒されたか、盗賊がやられたか。

 俺は木の影から顔だけ出して洞窟を見る。

 …………あ、出てきた。

 ブライは返り血で薄汚れた銀が少し赤く染まっていた。

 よし、無事だったんだな。

 ブライは三体揃って歩いてくる。

 ところどころ凹んだり傷があるが、大きな損傷はない。なかなかやりよるな。


「よし、よくやった。ちなみに盗賊は全員生かしてあるか?」


 おそらく俺と共にいたブライが、がちゃっと頷く。

 そうか、ならまだ生かしておくか。俺も命までとられなかったし。

 まあ、俺から金をとったんだからあいつらの金は当然全部もらうけどな。

 俺はブライに命令を与える。


「これからお前たちは俺の側近になってもらう。俺を第一に優先して守れ。お前らの命にかえてもだ。ついでに荷物もだ」


 ブライたち三体はがちゃっと音を立てて頷く。

 よし、これで夜も安心して眠れるな。


「そんじゃ、盗賊のアジトに行くぞ。金目の物は全部掻っ攫って行くからな」


 俺はブライを前に二体、後ろに一体の陣形で進む。

 あ、そうだ。この世界って奴隷いるのかな?

 いるならこいつらを奴隷商人にでも売り払えばいくらか手に入るだろう。

 

 洞窟は高さ三m、幅五mほどの大きさだ。そして、中はすごい異臭がする。おそらく盗賊たちの匂いだろう。盗賊って体洗ったりしてなさそうだしな。

 異臭に我慢しながら奥へと進んでいくと呻く盗賊たちがいた。

 剣は無残にも折られ、腕も変な方向に曲がっているやつ、四肢をもがれて達磨のようになっているやつなど数人がいた。

 …………よし、いいつけはちゃんと守っていたらしいな。誰も殺していない。生死を彷徨っているのは生きているほうにカウントだ。

 俺はブライに振り向く。


「よくやった。誰も殺さずによく制圧した」


 ブライたちは恐縮ですと言わんばかりに肩身を縮める。

 そんじゃ、適当なやつに金庫の場所でも教えてもらうか。

 俺はすぐそこに転がっていた腕が変な方向に曲がっている男に声をかけた。


「ハロー、ご機嫌如何かな?」

「うぅ……うっ、うっ……」


 男は苦しくて息をするのも困難なようだ。これはやりすぎだな。さっきまでよし、とか言ってた俺がおかしい。四肢をもいだやつもあれだと出血多量で死ぬぞ。

 俺はブライに「治療出来るか? 最低限死なないように」というとがちゃっと頷き外へ出て行った。

 その間に俺は聞いておくか。


「それでさぁ、君たちの金ってどこに貯めてあるの?」

「うぅぅぅ…………」

「おい、答えろよ」


 (よわい)一七歳にして大人を恫喝。しかも本当に瀕死の状態まで追い込んで。

 前の世界では考えられなかったな。この世界ならではの常識か。

 と、思ってたらブライが帰ってきた。早かったな。

 俺は「死にそうなやつを助けてこい」と言ってブライに任せる。

 ブライは最初に四肢をもがれたやつのところにいくと薬草らしきものを傷口にかぶせた。すると、ポタポタ落ちてた血が止まった。おお、すごいな。でも、このままじゃ死ぬな。やっぱちょっとやりすぎだ。

 俺はもう一度盗賊に話しかける。


「あのさぁ、早く答えてくんない? 俺暇じゃないんだわ。早くしないと消すよ?」

「ぐぐぅ……悪魔め……」


 男は力を振り絞りそう言った。

 俺は男が俺の顔を見ているのを確認すると笑顔を作り、親指を下に向けた。


「OK,分かった。ブライ! ……やれ」


 そういうとブライは斧を振り上げ、男の首をちょんぱした。

 さて、次行くか。出来れば早く答えて欲しいな。これ以上数を減らすと奴隷に持っていけないんだよな。

 俺はどんどん盗賊たちに聞いていった。



次話投稿の前に管理ページを見たらお気に入り3件に評価までしてくださいました!

まだ全然書いていないのに評価してくださるなんて嬉しい限りです。

しかも評価が5:5という!

もう嬉しさが一周して頭がけつに減り込むくらい嬉しいです!

これからもよろしくお願いしますm(_ _)m

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