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第四十四話『精霊たちの全力』

今日は二話投稿しています。昨日投稿出来なかったので……

 スーラたちは少し話し合った後消滅している森のすぐ手前まで移動した。

 さきほどのあれ(・・)とはなんだろうか?

 俺が思案していると結構離れたスーラたちからものすごい突風が吹いた。

 俺は慌てて体勢を立て直すが周りの木々はピクリともしていない。時折バルダたちとの戦闘の余波で微妙に揺れるだけだ。

 な、なんだ?!

 俺は確かに突風を受けた気がした。でも周りの木々はそんなこと起こっていないかのようにまっすぐ立っている。

 スーラたちをもう一度見ると、薄い青紫色の靄が立ち上っていた。

 

「アヴァロン一体をあいつらの下に行かせろ。あと、全員障壁を展開だ」


 嫌な予感がした俺はアヴァロンに防御体勢を命令した。

 すると、茶色の精霊が両手を上に上げた。

 次の瞬間、青紫色の靄が一瞬膨張して直径十mほどの大岩が上空に打ち上げられた。

 すかさず緑の精霊が両手をバッ! と勢い良く上に上げると突風が起きたのか、風切り音がここまで聞こえて、大岩を更に上に押し上げた。

 ここで兵士たちもなにかを感じたようで精霊たちに注目し始めた。行動の早い者は既にこちらへ向かってきている。

 と、今度は黒の精霊が両手を上に上げ、一気に振り下ろした。

 すると、更地になっている地面が少し凹んで兵士たちが動かなくなった。いや、動けないのか? 

 なぜか俺の体が急に重くなった気がする。多分黒の精霊は重力を数倍にして動けなくさせたのだろう。もうちょい制御を確かにしてくれ。こっちにまで被害が……

 動けなくなった兵士たちに向かってすかさず白の精霊が両手を前に突き出した気がした。後姿だから良く分からないんだよ。

 すると、ブライを召喚するときよりも強い光りが辺りを埋め尽くす。

 

「っく!」


 強い光に慣れている俺でもクラッときた。普通の兵士がこれをくらったらしばらくは目が見えないだろう。

 俺は比較的早く目が見えるようになったので、どうなったのか見てみたら、川が出来ていた。

 いや、普通にスイ(青の精霊)が辺りを水浸しにしたのだろうけど。

 と、今度は黄の精霊が手を振るった。

 いつの間にか現れていた黒雲から黄色い閃光がはじき出された。

 それは一瞬にして地面に到達するやいなや水を伝い、兵士たちを感電させた。

 

「…………なんだこれ?」


 そう思うもつかの間。

 おそらく最後の見世物の大岩がとうとう落ちてきた。

 赤の精霊が手をそれにかざすと虎をかたどった炎が宙を駆け、大岩に纏わりついた。

 さながらそれは隕石――メテオ――のようだった。

 俺は隕石が衝突する一瞬雨に呆けから覚めて、アヴァロンに命令を下した。


「全員全力で障壁を展開しろ! すぐに……」

 

 全て言い終わる前に隕石は衝突した。

 音……いやもはや音ではなく空気を振るわせる振動が伝わる。

 なんとか障壁が間に合ったが、それでもこの強さ。

 アヴァロンは吹き飛ばされないように木に片腕を回していた。

 が、それは無意味だったようで爆風により木々がどんどん薙ぎ倒されていく。

 アヴァロンは大急ぎで木を降りた。飛び降りると爆風で飛ばされるからか、木を走るようにして降りた。

 下に行くとエイクたちのアヴァロンが土を掘り返して土豪? 穴倉? っぽいものを作って中に入っていた。アヴァロンは地上で全力で障壁を張っている。

 俺もすかさずそこに入る。

 俺が入るとすぐさまエイクたちは詰め寄ってくる。


「なぁ! あれなに!? すっっっごいでかい音が聞こえて、ブォオ! って風が来てアヴァロンさんがショウヘキ? を作ってくれなかったらどこかに飛んでいってたよ俺!」

「お兄ちゃんは大丈夫なの?! アヴァロンさん一体しかいなかったけど。こっちは何体もいたから平気だったよ。それよりも上にいるアヴァロンさんたちは大丈夫かな?」


 エイクは恐怖での興奮ではなく、好奇心での興奮をしながら俺に問い詰めてくる。

 プリルはまず俺の心配となかなか立場を分かってきたじゃないか。

 俺は無言でプリルの頭に手を置いた。

 出来たらほんの少し褒める。出来なかったら徹底的に怒る。大体一対九くらいの割合かな。

 すると、プリルは俯いてしまった。

 逆にエイクは拳骨で黙らせた。



 しばらく――といっても数秒だが――時間が経つと暴風はおさまった。

 俺は外に出る。しゃがんで頭が地面から出ないくらいの大きさだったのでひとっとびで出れた。

 外に出ると焼けるような空気が肺に入ってきた。

 思わずむせてしまう。 

 アヴァロンはボロボロになりながらも立っていた。だが既に魔力は枯渇したのか障壁は張られていない。

 そして周りを見た俺は絶句した。

 

 辺り一面が更地になっている。


 いや、一部だけ残っている部分があった。

 スーラたちがいた場所のすぐ後ろはまだ緑が残っていた。

 俺は出来るだけ空気を吸わないようにその森までダッシュで行った。

 アヴァロンに連れていってもらおうかと思ったが、この空気だ。熱くて触れないだろう。

 

 森につくやいなや俺は倒れこんで息をゼーゼーと吐き出した。

 森は更地と違って土も先ほどまでの森と同じだし、空気も外よりかは吸いやすい。

 俺がそこで両手両膝をついて息を整えていると横にドサッとなにかが倒れる音がした。


「はぁはぁ、兄貴、すごい、な。これ、兄貴が、やった、の?」


 息も絶え絶えに俺に問う。

 さすがにあんなに身軽なエイクでも無呼吸で全力疾走はきついか。

 俺は息も整ってきたので立ち上がり答える。


「違う。スーラたちに任せたらこうなった」


 あ、そういえばバルダたち……

 今現在アヴァロンは、八体いる。おそらくスーラたちの下にいた一体も無事だろう。

 てかアヴァロンの区別をつけるべきかな。なにか考えておこう。

 っと、そんなことよりこの状況だ。

 

「おーい! スーラ! こっちこい!」


 俺がそう叫ぶと森の奥からアヴァロンがスーラたちを抱えてやってきた。

 スーラたちは前のスイ(青の精霊)たちよりは元気そうだが、横になっている。


「発散しすぎて魔力枯渇しそうだったわ……この子たち張り切っちゃって」


 そう言ってスーラは力なく、ハハハ、と笑う。

 とりあえずやりすぎた罰として全員拳骨を…………と思ったが、俺が思いっきりとか言ったのが悪い、と感じてデコピンにしておいた。

 精霊たちは俺の弱いデコピンを受けて申し訳なさそうな顔をする。スーラは若干嬉しそうだったので拳骨したら痛そうにしながらも口が笑っていた。もう俺は突っ込まないぞ。

 とりあえずスイに、周りの空気をどうにかしろ、ときつそうな体に鞭を打ってどうにかさせた。

 スイは水蒸気を発生させて、周りの熱を奪っていった。

 俺も呼吸しやすくなったしこれでいいだろう。

 

 敵は跡形もなく消し飛んだし、後はこのまま城に突撃かと思ったんだが戦力が…………あ。

 俺はあることに気づいてアヴァロンに聞いてみた。


「バルダは?! それを見ていたアヴァロンはどうなった?!」

「バルダ、トモニアヴァロンハゼンメツデス」

(バルダ、共にアヴァロンは全滅です)


 俺はうなだれた。

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