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第四十一話『ドワーフだと……』

 山を登る。

 荷車はさすがに置いてきた。いくら木々が焼けてマシになったとはいえ、かなり凸凹だ。

 だから俺たちは山を登っていた。

 俺は、こんなの無理だろ……と呟いていたが、いざ登ってみると案外体がついていく。あ、忘れてたけどレベルの恩恵か? 前の世界ではお世辞にも運動神経がいいとは言えなかったからな。

 ふと、エイクとプリルのことを思い出し振り返る。ずっと無心で前を向いて歩いていたのですっかり忘れていた。

 俺が振り向いてエイクとプリルを見ると二人は涼しげな顔をしてハテナマークを浮かべた。

 

「兄貴、急にこっちを向いてどうしたんだ?」

「……いや、なんでもない」


 俺はまた前を向いて歩き始める。

 地面はまだ熱を持っており、汗が出てくる。

 なのにエイクたちは全く気にしないような素振(そぶ)りで付いてきていた。ちょっとショックだ。十歳の方が体力あるって……俺十七なんだけどな。

 ネガティブになるのは後にして、と自分に言い聞かせて歩く。

 地面は木の灰などでふわふわというか、ザクザクというかよくわからない感触を受けながら足を埋める。

 そのまま無言で進んでいく。




 やがて、壊れた柵の前まで来た。ここは中央あたりか。ところどころにブライが転がっている。こんなにやられてるのはここくらいだからな。

 俺は壊れた柵を潜り抜け、破壊された土壁を超えて奥へと進む。

 土壁を超えてやや高いところには、ところどころに松明が立っていて、その横には弓と先に布が巻きつけられた矢が置いてあった。

 ここから弓を射っていたんだな。

 俺はそれらを尻目にどんどん奥へと進んで行く。


 やがて傾斜がゆるやかなところに建物が見えた。

 灰色の石で出来た無骨な建物だ。

 無駄なものを一切つけていない、頑丈そうな建物。

 一瞬ただのでっかい直方体の石に見えるほどなにもない。

 申し訳程度に四角い窓と木の扉があった。

 俺はエイクとプリルとブライたちを少し離れたところで待機させ、アヴァロンを連れて中へ入る。ちなみに他のアヴァロン隊は、ブライは白金貨と金貨に戻し、アヴァロンは周りの偵察に行っている。敵の偵察兵とか伏兵とかを排除してもらっているのだ。

 

 アヴァロンと俺で扉に近づき、アヴァロンに開けさせる。

 俺はアヴァロンの後ろにいたが、開けた瞬間もわっと暑苦しい空気が身を包んだ。

 

「うげぇ……」


 すぐさま引き返したくなったが、ちゃんと確認しないといけないので黙って入る。

 中を覗いて見ると、ここが造幣所というのが分かった。

 扉は建物を長方形と見て、短い辺のところにあった。

 そこから入ると左右に炉と思わしき物が並んでいた。

 中には炉の扉を閉め忘れて轟々と燃え盛る炎が見えるものもある。この熱気はこれのせいか……

 炉の他に机なども各所の隣に置いてあり、机の上には型らしきものがあった。

 多分炉で金属を溶かして、型に流して固めるのだろう。でも、金属を入れるものはどうして……後で聞くか。


 そして真ん中の通路と思わしきスペースには小柄な、だがガッシリとした肉体を持ったモジャ髭共が縄で縛られていた。十名ほどだろうか。

 モジャ髭共は俺らを見ても顔色一つ変えずに堂々と座っていた。威圧感が半端ねぇ。

 俺はアヴァロンの横に立ち、縄で縛られているとはいえなにをするのか分からないので十mほど距離をとって話し始める。

 

「お前らが硬貨を作っていたやつらか?」

「そうだ! 俺らを捕らえてどうする!」

 

 比較的若い者が叫んだ。髭はダンディー程度で済むくらいの長さで渋い顔がこれまた似合っている。

 ああ、こういうの前にもあったな。若いやつが叫んで俺がしばいたやつ。今回は不用意に近づけないからしばけないけど。

 俺は、とりあえず黙れ、ときつく言った。

 俺が言ったからか、モジャ髭共は何も喋らない。てか堂々と座ったまま動いていない。自分の立場が分かっているのか分かっていないのか……

 

「とりあえずここの山は俺の物となった。お前らには働いてもらう」

「はっ! いきなりなにを言い出すんだ? ふざけるのもたいがぶへっ!」


 そろそろ我慢できん、と思ったらアヴァロンがビンタで黙らせていた。グッジョブ。

 最近エイクたちのせいで我慢強くなったからな。

 俺はなにもなかったかのようにもう一度言う。


「とりあえずここの山は俺の物となった。お前らには働いてもらう」

「…………わかったわい。だが、一つ条件を提示させてくれ」


 しばしの沈黙の後、他とは明らかに気配が違う爺さんが口を開いた。

 それにしてもこの状況で条件を提示させろとは……聞くだけ聞いて、無理、って言うのもいいな。


「いいぞ。言うだけ言ってみろ」

「わしらの女、子供たちを救って欲しいんじゃ」

「なんだ? お前らはビルス帝国に脅されていたのか」

「ああ、わしら『ドワーフ』の器用さを見てこの国はわしらを奴隷として働かせていた。それで万が一にでも反乱を起こさないように女、子供を人質にとりおった」


 ド、ドワーフ?! 確かに見た目そんな感じだよな。

 小さいながらガッチリとした体。もじゃもじゃの髭。うん、イメージぴったし。

 と、話が逸れそうだ。

 とりあえず俺はこいつらの女、子供を助ければいいんだな。

 受けようか、受けまいか…………よし。


「分かった。お前らが俺の奴隷として働くなら女、子供を助けてきてやる」

「本当か?! すまない!」


 ドワーフの長らしき者はまさか呑み込んでくれるなんて思ってなかったらしく非常に驚いた表情をした後地面に額をこすりつけた。

 まあ、元々一般人には手を出すなと言っているし、ついでに助けれそうだからな。


「ま、そいつらを助けれるかどうかはお前ら次第だけどな」

「っ! なにを! なにをすればよいのですか?!」


 俺がそう言うと長老は顔をバッと上げてじりじりとにじり寄ってくる。


「ええい! 近寄るな! お前らにはここで金貨を作ってもらう。今まで作ってきたんだろ? 最速で量産しろ。早くしないと間に合わなくなるぞ」


 俺がそう言うとドワーフたちはすぐさま動こうとして、縄に縛られていることを忘れていてこけた。

 俺はアヴァロンに、縄を切って来い、と指示を出す。

 縄を切られて自由になったドワーフたちは各炉に向かって走り出した。

 俺は、はぁ、とため息をついて呼び止める。


「おいおい! 金とか見る限りそこまでないだろう。そんなのじゃ一日で作り終えるんじゃないのか?」

「「「あっ……」」」


 ドワーフたちはやたらと興奮していたからか、周りが見えていないようだ。

 俺は再度ため息をついてアイテム袋を腰から外し、逆さにする。

 頭の中で、ボロ金貨全部、と言うとジャラジャラとボロボロになった金貨が床にばら撒かれた。

 

「これでしばらくは働き詰めに出来るな。これで……」


 と、言っている間にドワーフたちは両手に抱えるように金貨を持って行った。うん、とりあえず金貨が作れるようなので大丈夫だ。無視されたからなんだ、俺は我慢できる…………ふぅ。


 落ち着いた俺はこの暑苦しい建物から出ることにした。

 外で待っていたエイクたちは俺が出てくると不安そうにしていた顔をパッと明るくさせて走ってきた。

 

「兄貴ー!」「お兄ちゃーん!」


サッ


「ぶへっ!」「キャッ!」


 俺に抱きつこうとしてきたので俺はレベルでよくなった体の動きを最大限活かして一瞬で避けた。

 目の前から一瞬で俺が消えたことにより、エイクは俺の後ろにいるアヴァロンに盛大にぶつかった。プリルはやや後方を走っていたので先にぶつかったエイクがクッションになっていた。

 エイクは鼻を押さえながら俺を睨む。やっぱり立場ってものを……もう諦めるか。

 俺は、あいつらは子供だし一応俺の言うことを聞くので許すことにした。やっぱり器の大きな男は違うな。

 

 さて、精霊たちが俺にじゃれ付き始めたから一旦休むことにするか。

 ちょうど少し先のところに兵士たちの寝泊りしていたところがあるらしい。綺麗だったら今日はそこで寝るか。

 俺は山登りでいつの間にかパンパンになっている脚に鞭打って寝床まで歩いた。

 

 さて、どれくらいでビルス帝国は攻めてくるかな?










なんか最近異世界定番のエルフとか出ていない気がしたのでドワーフ登場!

ま、手先が器用だし子供達がとらわれていたら助けるついでに奴隷!


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