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第四十話『魔法妨害魔法』

遅くなった><

 俺は十分視認出来る距離から戦場を見ていた。

 木々でところどころ見えないところがあるが隙間から確認できる。

 と、身動きがとれなくなっているアブライの姿が見えた。赤いから目立つんだよな。

 そしてアブライがやっと動き出したかと思ったら山の中腹辺りから雨のように矢が降ってきた。

 しかも全てに‘火’がついている。

 あいつら森ごと焼き払う気か!

 矢の雨が動き始めたアブライたちを突き刺す。

 くそ、木が邪魔で全部は見れない。無事なのか?


 山は横幅が広い。その山の中腹に一直線になるように列を作っているのか矢が面白いように均一に降ってくる。しかもその全てに火がついていた。

 森は一気に燃え盛り、アブライたちを炎で包んでいく。ついでにやっと追いついたらしいアヴァロン隊の三つが巻き込まれた。

 あれ? あとの六つは?

 アヴァロン隊は三つしか見えておらず、それらしき影も見えない。

 そんなことを考えている間にも矢の雨は止まらず降り続ける。

 全く、どうするんだ?

 と考えているとブライがブライを持ち上げ始めた。

 味方の腰を掴み、頭上に上げて前進する。火のついた矢が掲げられたブライに当たって弾かれている。


 うん、これはあれだ。…………肉壁だ。

 いや、鎧だから肉壁じゃないか。

 なんて考えているうちにブライはどんどん進んでいく。敵が山なりに射っていた矢がどんどん水平になっていく。ブライが前進している証拠だな。

 ちなみにアブライはいつのまにか大木を切り倒してそれを盾にして前進していた。いや、木は燃えるから。お前ら脳筋か。

 心の中でつっこんでいると向こうもわらわらと兵士たちが出てきた。

 敵は一万だ。しかも手練れが結構いるという。

 敵は急ピッチで作ったと思われる、頑丈そうな柵の一部を壊すとぞろぞろと出てくる。

 ブライたちは結構接近しているらしく、矢の雨が止んできた。


 だんだん炎が燃え移る木をなくして自然に消火されていく。

 そして山の下腹部は真っ黒な焼け野原(野原?)となっていた。

 木がなくなり炎もなくなったのでブライたちを確認できる。

 ブライたちはすでに肉壁を解除しており、普通に走っている。半数ほどの鎧がすすやらで黒くなっている。

 敵は柵の前で陣取っている。

 だが、数は少なく約百ほどしかいない。

 対してこちらはアヴァロン隊三つなのでブライだけでも七百五十体いる。 しかも魔法を使える者が各隊に一人ずつ。

 相手がこの前のようなブライを倒すほどの猛者ばかりだとしたら少しやばいな。ま、アヴァロンと精霊たちがいればなんとかなるだろう。

 それに他の六つの隊も気になる。

 俺たちが目指している山の下腹部はすでに全て焼き払われている。隠れて行動なんて出来ないはずだ。本当にどこに行ったんだろう?

 

 と、そのとき敵が出ていない左端の柵の前で土が膨れ上がり、ブライの軍団が現れた。

 

「え?! なんで?!」


 そう驚いているとアヴァロンが目の前に来た。俺の護衛じゃないやつだ。

 アヴァロンは大事そうに両手でなにかを持っている。

 アヴァロンはそれを俺に差し出した。


「コノコガンバリマシタ。アトハマカセテクダサイ」

(この子頑張りました。後は任せてください)


 そう言って差し出している手を見ると、茶色と水色と白色の精霊が横たわっていた。

 俺は弱弱しく呼吸する精霊を優しく受け取る。


「大丈夫なんだろうな?」


 精霊たちは弱弱しくもニコと笑うとコクリと頷いた。

 俺はアヴァロンに視線を向ける。説明を求める、と言った感じで。


「マリョクギレカトオモワレマス」

(魔力切れかと思われます)

「あ~、なるほど」


 俺は納得した。

 多分こいつは土魔法で地面を掘ったりしていたのだろう。

 大穴を開けてブライたちを詰め込み、地中を移動させて、魔力が切れそうになると他の精霊が魔力を分け与える。

 魔力云々についてはよく分からないがきっとすごいことをしてきのだろう。


 そんなことを思っていると俺から見て左方向に現れたブライたちは柵を攻撃して壊している。壊れた柵から次々と中へ侵入していく。

 中央のやつらは早く加勢に行こうと次々にブライを屠っていく。

 うわ、絶対こっち来る前のやつらとはレベルが違うよ……なんかアヴァロンと一対一で戦っているやつもいるし。

 ちなみにすっかり忘れていたアブライは敵一人に対して三体ほどで渡り合っていた。敵さん強いな……

 

 と、ここで違和感に気づいた。

 魔法が一発も放たれていない。

 敵ももちろん、こちらも一発も撃っていない。

 魔法で援護射撃をしろと言っていたのに……なにをやっているんだ?


「おい、アヴァロンA。なぜ魔法を使っていない。多少は足しになるだろう」

「タダイマテキガ、マホウボウガイマホウ、ヲツカッテイルノデツカエマセン」

(ただいま敵が、魔法妨害魔法、を使っているので使えません)


 な、なんだと……そんな便利な魔法があるのか……まさに魔法使い殺しだな。

 ということは精霊たちは役立たずだな。いてもアヴァロンの守る対象が増えるだけだ。撤退させよう。もちろんバレないように。魔法使いが撤退したのを見つかって魔法妨害魔法を解除されて集中砲火とかしゃれにならん。

 




 しばらくしてスーラたちが戻ってきた。

 全員が煤やらで所々黒くなっている。まあ、あの炎の中にいればな。

 体が弱いからか、すでにふらふらとした足取り(浮いているが)でこちらへと来ていた。


 戦況は大分傾いてきた。左側はすでに内部の占領を完了していて、右側へと侵攻している。

 中央も、結構な被害を出しつつも着実に敵の数を減らしていた。てか本当に強いなあいつら。こんなのがビルス帝国にごろごろいたら敵わんぞ。

 ちょっと心配なのは負けると悟られて施設やらを壊されることだな。

 

 俺は戻ってきたスーラたちに視線を戻すと、不満そうに頬を膨らませていた。


「なんなのよあいつら! 魔法妨害魔法なんてずっこい(ずるい)魔法使っちゃって! スイが魔力切れを起こしていたから消せなかった(・・・・・・)じゃないの!」

「あ? お前らあれを消すこと出来るのか?」


 俺はスーラの言葉に反応して聞き返す。てかスイって誰だよ。

 魔力切れと名前からして水色の精霊だと思うが。

 スーラはプリプリと怒りながら続ける。あ~、ちなみに今もアヴァロンAが周りを警戒していて隙などありはしない。緊迫感がここら一帯を包んでいた。俺とスーラのところだけ例外だ。……なぜだ?


「スイが魔力切れを起こしてなければね! 同じ魔法妨害魔法を使って干渉させれば打ち消せるのに~!」

 

 へ~、それは良いこと聞いたな。

 魔法妨害魔法。使いどころはありそうだ。

 

 と、思っていたらいつの間にか喧騒がかき消えていた。終戦か?

 なんかこう…………緊張感というかそういうのがないな、俺。まあ、俺は安全なところで駒のように兵士を動かしていただけだしね。しかも途中からは放り出していたし。

 俺はいまいち釈然としないながらもアヴァロンAに、行くぞ、と言って進み始めた。

 

 











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