第三十八話『やっと山道を抜けた』
長い数日間の旅が一区切りつくな~。
俺はまだ遠くにあるこの山道の出口を見て思った。
エイクもプリルもスーラたちも、やっとだ~! とはしゃいでいた。
確かにここ数日間なにもない山道をただ呆然と進んでいたもんな。かくいう俺も退屈すぎてそろそろ爆発しそうだった。多分この山吹き飛ばせとかマイトスに命令するかもしれない。
ま、ギリギリ出口は間に合ったようだが。
「お兄ちゃん今からどこに行くの?」
出口が近づいてきてようやくこの閉鎖的な空間から抜け出せるからか、プリルはやや興奮気味に聞いてきた。
そういえばこいつらは辺境の国の更に辺境に住んでいたようなやつらだからな。他の国に行くとか考えもしなかったんだろう。
あっちでは見ない食べ物とかあるかも、と心を躍らせているのかもしれない。
もしそうだとしたら残念だったな。今から俺たちはその国に喧嘩を売りに行くんだ。てかもう売ったし。
俺はプリルのほうを向いて喋った。
「とりあえずここを抜けたら偵察に行ったアヴァロンを待つ。進むのはそこからだ」
俺がそう言うと若干テンション下がり気味で、そっか……と呟いた。
それからはみんな無言で出口を見つめていた。
目の前には森が広がっていた。
山道の出入り口を中心に約百mほどの半円を描くように木々が囲っている。
とりあえず俺は出入り口から出て、まっすぐ進み、森と出入り口の中間辺りで荷車を止めさせた。
「アヴァロンA、偵察に行ったやつらはどうなった?」
そう問うた次の瞬間、森の中からなにかが飛び出してきた。
そしてそれはまっすぐ俺に向かってくる。
ものすごい速さだ。
俺はすぐさまどんな攻撃が来ても避けれるように身構える。
が、それは俺の目の前で止まった。
「ホウコクシマス。コウカヲツクッテイルトコロハココカラホクトウニススンダトコロデス」
(報告します。硬貨を作っているところはここからホクトウに進んだところです)
今来た一本道がちょうど南だ。ノンスールは南の端の辺境にあったわけだ。
俺は頷くと、戦力は? と問うた。
「アマリチカクデハミレナカッタノデスガオソラクイチマンハコエテイタトオモイマス」
(あまり近くで見れなかったのですがおそらく一万は超えていたと思います)
「一万!?」
なんだよそれ、前より増えているじゃないか。
しかもアヴァロンは続けて、相当な手練れがかなり混じっている、と言った。軽く絶望中。
まさかあの戦闘の時金で兵士を作っているのがバレたのか?!
…………ま、あんな草原のど真ん中でマイトスを召喚したら光とかでみんな注目するだろうしな。
俺は今の金を確認する。
アヴァロン十体=ノンスール白金貨十枚
マイトス一体=ノンスール白金貨十枚
アイテム袋の中身=ノンスール白金貨三十一枚+ノンスール金貨・銀貨・銅貨多数+ビルス金貨五十枚
う~ん、これで行けるだろうか。
ついでに精霊たちも戦力に加えるか。
そうだな、この感じだともう一体マイトスを召喚して白金貨二十一枚。
それで全部ブライにすると二千二百体。
アヴァロン一体あたり二百二十体。
そしてそれに精霊かマイトスが一人ずつ付く。
……うん、いい感じじゃないか?
ブライがアヴァロンの指揮の下動いて、後ろからは魔法を撃っていく。
精霊とマイトスの弱点の身体能力は敵を近づかせないことで解消。ブライの敵わない敵は魔法で撃破。
一応軍隊っぽくなってるかな? ゲーム感覚で行ったから現実ではどうなることやら……
と、いろいろ不安になることもあったが俺は行くことにする。
「よし、そことりに行くぞ」
深い思慮から抜け出し、みんなに向かって言う。
精霊たちには、今回はお前らにも暴れてもらうからな、と言っておいた。なぜか精霊たちは喜んでいた。こいつら戦闘狂か?
「この子たちあなたの役に立てることが嬉しいのよ」
スーラの言葉を、ふ~ん、と聞き流し俺は荷車を引かせる。
森へと入り、荷車の乗り心地が最悪のものとなった。
たまらず俺は、止めろ、と言うと荷車から降りて歩くことにした。あのままじゃケツが悲惨なことになる。
エイクたちも俺が降りるところを見ると我先にと降りた。よっぽど痛かったんだな。
スーラたちは相変わらず空中に浮いている。ふわふわと俺の周りを飛んでいて鬱陶しく感じるようになってきた。スーラ限定で。
荷車は引き続きアヴァロンAにひいてもらう。荷車には結構な量の食料が置いてあるからな。他のアヴァロンに持たせてもいいのだが、そうなると動けるアヴァロンの数が減ってしまう。
ということで俺らは歩いて森の中を進んでいた。
木の根などに引っかかり、荷車がガンッと音を立てながら何度もジャンプする。もう壊れそうだな……
そんな心配をしながら歩いて五日。
本当に退屈だった。無心で歩き続けた。
もう食料なんて置いてアヴァロンに担いでもらって走ってもらおうかと思った。食料は現地調達か略奪で。
まあ、リスクが大きいから止めたけど。
そんな感じでようやく森を抜けたときはすごいテンションになっていた。
「うっしゃ! 金山盗り行くぞ!」
「「「おー!」」」
エイクとプリルとスーラが俺に合わせて返事をする。こいつらも退屈だったんだな。
本当ならビルス帝国に行っていろいろ満喫したいところだが……召喚がバレてる時点で俺の顔もバレてると思うしな……
出来るだけ民間人には手を出さないようにしてまたアヴァロンに任せよう。戦力が分散しそうだがそこはビルス帝国の金で補おう。幸いアブライは強いしな。
森を抜けた俺らは足取り軽く歩いていた。
森の外は荒野だった。
ぽつぽつとなにかの影が見える。おそらく魔物だろう。
遠くには山がある。遠くと言っても地平線のギリギリに見えるとかではない。そこそこ近い。
山は木々が生い茂りこの荒野とは全く違った姿を見せている。
ふむ、荒野はこの森と向こうの山の間に出来ているのか。
左右を見ると森は円のように丸くなっており、遠くの山も円のようになっていた。
不思議なこっちゃ、と思いながらアヴァロンについていく。
ここからは凸凹の少ない荒野なので荷車に乗って移動した。
アヴァロンたちはこれからの戦いに備えてか武器の手入れっぽいことをしていた。
その光景がなぜか喜々としていた感じがしたんだが……
スーラたちもうきうきしながら俺の周りをせわしなく飛びまわっていた。
鬱陶しいのでハエ叩きの要領で叩き落とした。もちろんスーラのみ。
そして進むこと数時間。
ようやく目的の山が見えてきた。
アヴァロンが言っていた硬貨を作っているところはここだろう。
なるほど、山で銅や銀などを掘ってその場で加工するのか。
確かにそのほうがいいな。加工した硬貨なら持ち運びしやすいしな。
山に近づくにつれて足元の緑が多くなってきた頃。
俺は今までのことを思いだしていた。
ここ数日間……いや、十数日間溜まりに溜まった鬱憤全部吐き出させてもらうぜ!
ここまで暇な日が続いたせいでストレスはかなりのものとなっていた。
なのでここは敵さんの兵士一万を血祭りに上げて少しでもストレスを解消しようと思ったのだ。
敵を嘲り、愚弄し、弄んだ挙句に無残に殺す。最高じゃないか! 早く泣き叫びながら俺に許しを請う姿を見たいものだ。
魔王でも言わなさそうなことを思いながら俺はアイテム袋の中に手を入れた。
なんか物語の間? みたいなのって難しいですね。
なぜか淡々としたものになってしまい、余計につまらなくなってしまいます…………
ま、これからはビルス帝国との前面戦争ですww
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