第三十七話『精霊たちの力』
ずっと変わらない景色にだんだん飽きた。
やはり国を分断するほどの山脈と言うのは長いな。
前の世界は飛行機とか車ですぐに移動できたからな。歩きだとものすごい長く感じる。
暇すぎるこの時間。なにかを考えるのも面倒になってきて俺は穴が空いたりしてボロボロになった金貨を見つめていた。
真ん中に穴が空いたやつや、くしゃっと折れているやつ、ところどころに穴が空いてもはや原型を留めいていないやつ。いろんな金貨があった。
俺はそれをアイテム袋から次々に取り出しては仕舞っていた。
「はぁ~、これ直せねぇかな……」
ボロボロの白金貨を見ながら俺は呟いた。
「直せないなら作ることは出来ないの?」
不意にプリルの声が耳に入る。
俺はプリルの声が聞こえたほうを向く。
俺と目が合うと首をかしげる。
直せないなら作る……国はどうやって金貨など作っているのか……
俺はずっとプリルの目を見ながら考える。
プリルがなにやらわたわたしているが気にしない。もう少しでなにかが思いつくんだ。
「そうだ! 金貨作ってるところとりにいこう!」
俺は唐突に叫んだ。
うつらうつらしていたエイクはびっくりしてひっくり返った。スーラたちは森に遊びに行っていたのだが何事かと降りてきた。
エイクは、イテテ、と後頭部を抑えながら起き上がる。
「兄貴どうしたんだ? 急に」
「いや、良いこと思いついたからな。山道を抜けたらちょっと彷徨うかもしれんぞ」
正直今ある戦力だけだと心もとない。
だから金貨を作っているところを襲って盗ればいいんだ。
そうしたらかなりの戦力が手に入るぞ。
もし盗ったあとに攻められたらそれこそ作った金貨を使いまくって向かい撃てばいい。ちょっとやそっとの攻撃じゃやられないくらいの戦力はもうあるからな。
「お兄ちゃんどうしたの?」
「ん? なにがだ?」
プリルが俺の顔を覗き込みながら言った。
「すっごい悪いこと考えてる人の顔をしてるよ?」
「うるさい」
「キャッ」
やかましいわ。
プリルは俺の拳骨を受けて縮こまった。
エイクが近寄り、意外に痛いよな。良く分かる、と慰めている。
それはそうと、決まったなら偵察かなにかした方がいいだろう。
俺は後ろで護衛についているアヴァロンに向き直る。
「おい、アヴァロンお前ら……ってうぉ!」
アヴァロンが増えていた。
多分国から呼び寄せたアヴァロンたちだろう。が、いつの間にかついてきていたのでびっくりしてしまった。
これでアヴァロンははれて十体となった。
さて、驚きはしたが改めて指示を出すか。
俺は顔を元に戻し、指示を出す。
「お前らのうち三体は先にここを抜けて金貨、白金貨を製造しているところを探して来い。ついでに戦力も調べれたら調べろ。だが、一番重要なのは敵に気づかれないことだ。無理して奥に入ろうとするな。分かったら行け」
アヴァロンたちはコクッと頷くとお互いを見合い、三体が頷いて走り出した。
この光景あれだな。無言の圧力だな。
俺らは相変わらずゆっくりとしたペースで進んでいく。
金貨を見ることをやめた俺はまた暇になり荷車の中で横になっていた。
残念ながら寝ることは出来そうにない。
と、俺の目の前にスーラが降り立った。
スーラは右足を左足の後ろに持っていき、両手を後ろで組んで退屈そうな顔で俺を見ていた。
「ねぇ、森に行くのも暇になっちゃった」
俺はボーっとスーラを見つめている。
そういえば俺は精霊を戦力として数えていなかったな。
実際どのくらい強いんだろうか。あまり精霊を危険に晒したくな……いや、そうでもないか。
うん、そうだ。確かに俺は精霊が好きだけど保護するほどお人好しじゃない。
スーラはちょくちょく、え? とか、何見てんのよ! とか言っているが無視だ。若干頬が赤く染まっている気がするが俺は見ていない。
俺はむくりと起き上がり人差し指を上に向けてこっちに来いというジェスチャーでチョイチョイと動かす。
スーラは何も反応を示さない俺に対してむくれっ面で飛んできた。
俺の目線と同じ高さになると俺は口を開いた。
「精霊って魔法が得意なんだろ? 何が出来る? 戦闘には使えそうか?」
俺がそう言うとスーラは先ほどのむくれっ面が嘘のように、パーッと笑顔になった。
ふと視界の端に動き回るものが見えたので視線を送ると他の精霊たちも両手を上げて喜んでいた。戦いに狩り出されるのがそんなに嬉しいか?
「すごいこと出来るわよ! 見ててね?」
スーラが超ご機嫌な様子で俺に向かって言う。まるで初めて逆上がりが出来るようになった子供みたいで微笑ましい。
ま、そんなのはすぐに消し飛んだけどね。
スーラがそう言って俺が頷くと進んでいる道とは反対の、今まで通ってきたほうの道へと向く。
徐に両手を突き出すと、えいっ! と可愛らしい声と共に地面が大きく抉られた。
全長百mは超えたな、と思うくらい長く地面が抉られている。
幸い壁には被害がなく、土砂崩れとかの心配はしなくてすみそうだ。
俺は無表情を決め込んでいたが、内心は何も考えれなかった。
え? なにあれ? あんなのが使えるならあのときのドラゴンとか倒せたんじゃね?
いろんなことを考えているとスーラがこっちに振り返った。
どう?! どう?! とすっごいキラキラした目で見つめられて俺は言葉を返せなかった。
俺は無言でスーラの頭を撫でた。
体長二、三十cmしかないため頭も小さい。軽く撫でてやる。
スーラは突然のことに硬直していた。
と、そのとき俺の目の前に他の精霊たちがわらわらと寄ってきた。
それぞれ自分を指差して自己主張をする。
俺はスーラから手を離し、なにを言っているんだ? といった顔をすると精霊たちは一斉に地面が抉られたほうに向かった。
「お兄ちゃん何やってるの?」
「そうだぜ兄貴! さっきのはなんなんだよ!? ブオォォオオ! ってすごかった!」
プリルとエイクが俺に聞く。
エイクはやたらと興奮しているな。ま、男の子だしな。
プリルはというと唯単に、何をしているか気になった、だけのようだ。
俺は、見とけば分かる、と曖昧な返事をして精霊たちを見る。
精霊たちはある程度荷車から離れるとこっちに向かって大きく手をブンブンと振っていた。あの小さい精霊をちゃんと見れる時点でそこまで遠くないのが分かる。
俺は肩辺りまで手を挙げて応じると精霊たちは一人を残して脇に逸れた。
ん? どうしたっていうん…………
残った赤い精霊はギュッと身を縮こませたと思ったら、突如赤い精霊の前に直径約二mほどの火の玉が出てきた。
そしてそれはどんどん数を増やしていく。十個、二十個、三十……もう数えるのしんどい。
俺はまだ増え続ける火の玉を見ていたら暑くなってきたので、止めてくれ! と叫んだ。
赤い精霊はニコニコした表情で俺の目の前までくると俺を見つめる。
俺の肩よりやや低い位置から見ているので上目遣いだ。ってそうじゃなくて、この高さは頭を撫でてくれってことか?
そう思った俺は赤い精霊の頭を撫でてやる。
赤い精霊は目を細めて気持ちよさそうにしている。
ふと視界の奥で大きく動く影が見えた。
俺がそちらに視線を移すと今度は青色の精霊がなにかをやるみたいだった。
俺は赤い精霊を撫でるのを止めてそちらを見る。
と、また突然青色の精霊の前に先ほどと同じような水の玉がでた。
だが、今回は違って直径二mくらいだったのがどんどん膨張していき、しまいには直径十mほどの水球になった。道幅ギリギリやないかい。
そしてまた俺が、止めてくれ! という声と共に止めてこちらに飛んできた。ちなみに水はそのまま下に落ちて行った。
目の前に来た青色の精霊は赤色の精霊と同じようにする。デジャブ……
こんな感じで残りの黄、緑、茶、白、黒の精霊も魔法? を使っては俺のところに来て頭を撫でられにくる。
俺は半ば放心状態で精霊たちを撫で続けた。
黄色は瞬時に黒雲をたちこませて落雷を落とした。
緑はスーラと同じように地面を更に深く抉った。
茶色は土を隆起させ、十mほどにもなる壁を作った。幅も、完全にフィットする感じで人っ子一人通れない。
白色は思った通り光魔法? だった。閃光と見間違うような光を発して次に俺らが見たのは大地から芽が生えている植物だ。何もなかった道に生命が現れた。
黒色も思った通り、闇っぽかった。黒い球体を出現させ近くにあった大岩を呑み込むと、球体が消えたあとには何も残らなかった。
それぞれ末恐ろしい能力持ってんな~。
これは戦力として十分活用できる。
俺がふふふと不敵に笑うとスーラたちは若干距離をとった。
ま、俺が胡坐をかいて座るとその上に乗ってくるんだけどね。和むな。
そんな感じで進むこと数時間。
ようやく出口らしきものが見えた。
「ポンポン展開が進んで面白い」
そう言ってくださっていた方がいたのですが、昨日今日と二話続けて全く進んでいませんね(;^_^A アセアセ・・・
次からはちゃんと進みます。
感想・アドバイスお待ちしております




