第三十六話『分け与える』
遅くなりました……
今回も長めです
俺は山道に入る前に鉄屑になったブライを集めさせた。
普通に戻すとぐちゃぐちゃになった金貨になる。再び召喚して元に戻すとか出来なかった。
そこで俺はあることを試した。
元ブライの鉄屑を五体分一箇所にまとめる。全て引っ付くように固めて。
そして俺は五体分で一枚の金貨にするのを思い浮かべる。
が、そんな都合のいいようにはいかず、ぐちゃぐちゃの金貨が五枚出来ただけだった。
小さく舌打ちをして山道へと入る。
ちなみに残った無事なブライは白金貨&金貨に戻してアイテム袋に入れた。マイトス一体とアヴァロン五体が護衛だ。
俺はごつごつした山道を荷車に乗って進んでいた。
時折小石などにぶつかり荷車が跳ねる。
その度に俺はケツを痛くする。いろいろ試したが無駄だった……
山道は一本道となっており、左右は高い崖に挟まれていた。崖と言っても、頑張れば登れそうだ。傾斜は六十度くらいか? ……頑張れば……
崖の上はうっそうと木々が生えており、崖から飛び出している葉はこちらを覗いているように見えた。
そしてその上にはどこまでも広がる青空。
俺は暇している時間も勿体なのでいつものように考え事をしていた。
今回敵はブライを少しずつだが削っていた。個々ではブライに劣っているが戦い方を工夫して削っていたようだ。
さすがに何も考えずに物量作戦で特攻は無謀すぎたか。
でもな~。戦略なんて知らないわな。せいぜい三国志のゲームを少しやっただけの知識しかない。
それに手持ちのカードが少なすぎる。
歩兵のブライ、その上のアヴァロン、遠距離攻撃のマイトス。
…………これでどうしろと?
マイトスは白金貨十枚とめちゃくちゃ金を食う。
確かに一体でもかなりの戦力になる。チラリと見えたが、あの氷山は数十人、いや百人以上の魔法使いらしき者たちが一斉に詠唱して出来ているものだった。
それをたった一体で打ち消すほどの魔法を使い、なお余力を持っていた。
ま、とりあえずは軍隊みたいに隊に分けてみるか。
アヴァロン一体に対してブライは……三百体くらいか? 本当に全く分からないからとりあえずはこれで様子見だ。
と、ここであることを思いだした。
アヴァロン来てねぇじゃん。
召喚制限が十五体と少ないのでアヴァロンを王国から五体引き上げさせるのを忘れていた。
「アヴァロンA、城にいるアヴァロンを早くここに来させろ」
アヴァロンAはコクッと頷くと荷車を引きながら俯いた。
少ししてまた顔を上げると前を見て歩く。
しばらく何も考えずに五感を研ぎ澄ませていた。最近やたらと五感が鋭くなった気がする。
上から匂ってくる木の葉の香り、荷車が出すガタガタと言う音以外の小鳥のさえずり、頬を撫でる風の流れ。
俺は目を閉じ、久しぶりに感じた気がする自然を堪能していた。
「……にき……きて! ……兄貴起きて!」
「ん?! お前……なんだエイク。敵襲でも来たか?」
俺は一瞬起こされた事に苛立ちを感じ、叱ろうかと思ったが踏みとどまり何が起こったのか聞き出す。
ところがエイクはニコニコとした顔を浮かべ口を開いた。
「そろそろ夜ご飯の時間だぞ!」
俺はそう言われて辺りが暗くなっていることに気づく。
ああ、いつの間にか寝ていたんだな。
ぼんやりした頭ではあまり考えることが出来ていなかった。
「ああ、そうだな」
そんなことで俺を起こしやがって、と怒る気も失せて俺はそう返事した。
そして俺は止まっている荷車から降りようとする。今日は野宿だ。さすがに国と国を分かつ山脈。なかなかでかい。
俺が荷車を降りようと立ちあがったところでエイクに手を掴まれる。
「ちょっと待って! 俺良いもの採って来たんだけどな~」
エイクは俺の手を掴み、俺と顔を合わせようとしないながらもチラッチラッと俺を見る。
これはあれか。子供が面白い物を見つけてそれを友達に言って散々もったいぶった挙句にしょうもない物を出すあれか。
俺はたいして期待せずに聞く。
「なんだ?」
「え~、知りたい? どうしよっかな~」
イラッときたので素で拳骨をお見舞いする。いつもは奴隷に対する力を使ってるからな。
エイクは、くぅっ! と言って頭を片手で抑えて蹲る。本当に最近奴隷と主人の関係を忘れているんじゃないかと思う。
そして上から更に言葉を投げかける。
「で、なんだ?」
「こ、これだよ兄貴!」
俺が再度問いただすとエイクはサッと後ろに回していた手を出す。
「ん? これは?」
差し出されたエイクの手には良く分からない物体が握られていた。
かすかに見えるのは丸くて青色をしたもの。なんとなく蜜柑を思い浮かべた。
すると、エイクの斜め後ろから声が聞こえた。
「それはね! ノンスール王国の近くで採れる『オレオの実』なの。とっても美味しいから食べて!」
暗くて顔など良く見えないが、声からしてかなり興奮しているようだった。
俺はとりあえずそれを手にとる。
でも、なにかよくわからない物を食べるほど俺は肝が座っていない。
俺はアヴァロンに、火を起こせ、と命令して待つこと数秒。
ポッとライターの火のような物が暗闇の中現れた。
暗闇をほのかに照らす。
人は光があると安心すると言うが、本当のようだ。その火を見てほんわりとする俺がいた。
と、その火はススッと移動していき、どこかへ向かう。
目で追っていくと、火の頭が潰れた。
明かりで照らされているのでその火の頭を潰しているのを見る。
カラッ、カン
「っ!」
俺はびっくりして音のした方へと振り返る。ちょうど真後ろの崖からだ。
音から察するに石が落ちてきたのだろう。
だが、俺はなにかがいる可能性を考え警戒する。豚王の時に警戒することの大切さを知ったからな。アヴァロンでも防げないものはある。
そのとき、俺の肩をトントンとなにかが叩いた。
俺は飛びあがり一瞬で距離をとる。
体が軽い……じゃなくて、俺は振り向いたからアヴァロンとは逆を向いていたはずだ。
そこに俺の後ろから肩を叩くということはアヴァロンたちを掻い潜ってきた証拠だ。しかも荷車に物音一つ立てずに乗って来た。
俺は暗闇の中視界にはもう頼らず、他の五感を研ぎ澄まして警戒する。ここは最近すごくなってきた五感に頼るしかない。
と、身構えたとき。
「アノ、サッキノオトハワタシノセイデス……」
(さっきの音は私のせいです……)
アヴァロンが答えた。
いつの間にか火はライターほどの大きさから普通の焚き火くらいの大きさまで大きくなっていた。
そしてその光に照らされたアヴァロンの腕には薪と思われる細い木々を抱えていた。
俺は警戒心を緩めて荷車のすぐ側にいるアヴァロンへと近づく。そこは先ほど俺がいたところの真後ろだ。
そして俺は無言でアヴァロンの持つ薪の中から比較的太い物を手にとりアヴァロンを殴る。思いっきり。
案の定薪はすぐ折れてしまう。
が、構わず俺は次々に薪を手にとり無言でアヴァロンの頭をはたく。
「アノ……ゴシュジンサマ?」
(あの……ご主人様?)
「…………はぁ。もういい。周りの警戒をしてろ」
俺の攻撃を意にも介さないアヴァロンを見て俺は諦めた。
そして俺は飛びあがったときに落とした果実を焚き火で照らされた荷車の中で探す。
見つかって手にとると荷車を降りて焚き火の周りへと移る。
少々夜は寒いためある程度の距離ならこれは思わず寝てしまいそうになるほど気持ちがいい。
俺は軽くまどろみながら果実に目をやる。
みたまんまの蜜柑だった。色が青という点を除けば。
「おい、これは食べれるのか?」
俺は俺についてきて左右にちょこんと座ったエイクとプリルにたずねる。
右のエイクを見やるとなにかを期待しているような目で俺を見ながら頷いた。
左のプリルに視線を移すとニコッと笑って頷く。
普通に言葉にして言えよ、と思う俺は心がないのか? 今俺は子供にすごい綺麗な瞳で見られているのに。
まあ、とりあえずあれだな。
「お前らこれを一口ずつ食え」
毒とかないか調べるために食わせる。
アヴァロンに食わせれたりしたらいいのだが、あいにく鎧だしな。
俺がそう言ってエイクにオレオの実を差し出すとエイクは、え? いいの? と不思議そうな顔をして聞いてきた。
なにを言っているんだ、と思いながらも、さっさと食え、と言ってグイッとオレオの実を押し付ける。
「あ、ありがとう! 兄貴!」
エイクはそう言うとオレオの実にかぶりついた。
あ、皮ごと食べれるのか。
俺はもぐもぐとオレオの実を食べるエイクを観察する。
ふむ、特におかしくなったところとかないな。
と、そこで俺はエイクの服が土で少し汚れていることに気がついた。擦り傷なんかもある。
もしかして崖を登ったのか? この山道は渓谷のように崖に挟まれ、他に道はない。そしてその道に木々は一切生えていなかった。
つまり、これを採って来たってことは崖を登ったってことだ。まあ、俺が寝ているときに道端に落ちてたっていう可能性もあるがな。
エイクが満足そうな顔で俺にオレオの実を渡してきた。
俺が受け取ると服をクイッと引っ張られた。
左に目を向けるとプリルは恥ずかしそうに俯きながらなにかを言おうとしていた。
そうか、エイクの美味しそうに食べる顔を見て自分も欲しくなったのか。
普段なら無視して食うとこだが、今回は違う。知らない食べ物だ。
もしかしたらエイクがたまたま抗体を持っているかもしれない。
ふとそう思った俺はプリルに無言でオレオの実を渡す。
差し出されたオレオの実と俺を交互に見るとパーッと顔を明るくさせ、オレオの実を受け取った。
ブチュッとオレオの実にかぶりつく。
もぐもぐと口を動かしている。
俺はエイクのときと同じように観察した。
プリルもエイクと同じように服が土で汚れていた。
「ありがとう!」
プリルが笑顔でそう言いながらオレオの実を渡してくる。
俺はエイクとプリルを見やり、なにも変わらぬ事を確認してから受け取り、かぶりついた。
食感は思った通り蜜柑だった。
柔らかい皮の部分をブチャッと噛み千切り、中の果実を味わう。
果実に歯が食い込むと果汁がプシャッと吹き出た。
口の中に濃厚な味が広がる。
俺はそのまま食いちぎり、もぐもぐと咀嚼する。
驚いたことに皮は苦くはなく、むしろ甘かった。これは子供も大好きな味だな。
俺は無言でそれを食べると荷車から食料を取り出し、プリルとエイクに与える。
このとき寝ていたスーラたちが起きてきた。
俺の口に近づくとスンスンと鼻をひくつかせ、あ! オレオの実食べたでしょ! と、騒いだ。
俺は、黙っとけ、と言うと共に、また食べたいからそのときな、と思いながら食料も食べていく。
それ以降、上からは森のざわめき、目の前からはパチパチと火が爆ぜる音、横からはもぐもぐと咀嚼する音だけが耳に入った。
さて、あと何日くらいでビルスに着くかな。
ちなみに翌日、アヴァロンAに、あのオレオの実はどうしたんだ? と聞くと、エイクとプリルが崖を登って採って来た、と言った。
俺はそれを聞いて、危ないから止めろ、と言っといた。
また食いたいのでそれはアヴァロンに採って来させることにした。
やばい、俺あの味にはまったかもしれない。
俺はアヴァロンに結構な数のオレオの実を採って来てもらい、荷車に乗せて進み始めた。
最近間に合わなくなってきて出来たら即投稿! って感じなので誤字などありましたら教えてくださるとありがたいですm(_ _)m
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