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第三十四話『召喚制限』

今日もちょい長め。4500文字

 俺は体を揺すられて起きる。

 目を開けるとプリルが視界に映る。

 軽く上体を起こし、周りを見渡すと、いつの間にか草原は抜けており、軽く木々が生い茂る場所に来ていた。少し遠くを見ると草原が見えることからあまり奥までは来てない様だ。

 アヴァロンは身を低くし、なにかから隠れるようにしゃがんでいた。

 なにか来たのだろうか? 

 そう思った俺はアヴァロンと同じく身を低くして出来るだけ荷車から体が見えないようにしながらアヴァロンの元まで移動する。

 チラッとエイクを見たのだが、定期的に胸を上下させなんとも気持ちよさそうな寝顔をしていた。起こさなくてもいいか。下手に騒がれたくないし。

 俺はアヴァロンに状況の説明を求めた。


「おい、アヴァロン。どうしたんだ?」


 アヴァロンは俺が来たのを待ってたかのように説明を始めた。


「オソラク『ビルステイコク』ノグンタイガヤマイリグチデヤエイシテイマス」

(おそらく『ビルス帝国』の軍隊が山の入り口で野営しています)


 そう言いながらアヴァロンは先ほど俺が見た草原の位置からやや右にずれたところを指差した。

 それにしてもよく見つからなかったな。さすがアヴァロンだ。

 俺はアヴァロンに、どうしますか、というような視線を受けて(目があるか分からないが)考え込む。

 今の俺の戦力は約白金貨四十一枚だ。ここにいるアヴァロン含めてな。

 こうなるとアヴァロン四十一体で…………いけるか?

 俺は敵の戦力を聞いてないのを思いだし、それを聞いてから判断しようと決めた。

 

「アヴァロン、敵戦力はどのくらいだ?」

「ヤクナナセンデス。マダフエツヅケテマス」

(約七千です。まだ増え続けてます)


 七千か。アヴァロンの力は並の兵士を基準にするとどれくらいなんだ?

 俺は聞くことにする。


「ちなみにあの兵士はお前一体でどれくらい相手できる?」

「アイテガレッペイデ、マホウツカイヲカンガエナイトスルトセンタオセルカドウカデス」

(相手が劣兵で、魔法使いを考えないとすると千倒せるかどうかくらいです)


 アヴァロン半端ないな。

 つまり今俺は約四万の歩兵を持っているのと同じってことか。

 アヴァロン一体で千。

 しかし、それはアヴァロン一体で暴れまくった場合に出来る屍の数。

 なら複数体で背後に気をつけたりしながら戦ったらどうなるんだ?


「アヴァロンがお前を合わせて十体いたらどうだ?」

「ソレナラムキズデカッテミセマス」

(それなら無傷で勝ってみせます)


 期待通りの良い返事が聞けた。

 俺はGOサインを出すことに決めた。

 アイテム袋を手に取り逆さにし、『白金貨十四枚』と念じる。

 荷車から身を乗り出し、地面に落とす。そしていつもの言葉。


「【ここにある白金貨全てと引き換えに我が忠実なる聖騎士を召喚する。いでよ! アヴァロン!】」


 と、ここで俺は失敗に気づく。

 光ったら敵にバレるかもしれないじゃん!

 慌ててももう遅い。白金貨は虚しくも神々しい光りを放つ。 

 チッ、まあどうせ戦うんだ。奇襲で万が一をなくそうとしたが、普通にやっても余裕で勝てる。

 まあ今回は余裕をもって十五体に増やしたが。

 そして光りがおさまってくる。

 しかし、そこには四体のアヴァロンしかいなかった。

 

「はぁ?」


 俺は思わずいつもの無表情を崩して驚いてるやら呆れてるやらよくわからない表情をしていたと思う。

 なんせ今から戦争だ! と息巻いて戦力補充したところほとんどが出なかったんだぞ。

 俺は白金貨がどうなったか見てみる。

 白金貨は十枚地面に転がっていた。

 どういうことだ?

 そう思ったときずっといるアヴァロンが推測をした。


「オソラクデスガショウカンニセイゲンガアルノデハ?」

(おそらくですが召還に制限があるのでは?)


 俺はアヴァロンの推測に、なるほど、と納得した。

 城に置いてきた十体とここにいる五体で十五体。おそらくこれが限界なのだろう。

 と、軍隊もこちらの光りで、何が起こった? と騒いでいた。


「おい! 偵察部隊ちょっと今の光りの原因を見て来い」

「了解! 行くぞ!」


 結構遠くなのだが、軍に指示を出すため大きな声を出しているからなんとか聞き取れた。

 と、馬に乗った数十の兵士がこっちに来た。

 多分森の入り口までは馬でそこからは歩くのだろう。

 ってそれどころじゃない。

 こっちは五体だ。相手を倒すには心もとない。

 そもそも相手にあのときの盗賊の親玉のようにアヴァロンを倒せるやつがいるかもしれん。いや、親玉はブライだけだけど、そういうこと。

 俺は考えるが思いつかない。

 あー! クソ! こうなったら一気に押しきってやる!

 俺は少しやけになりながら言葉を言う。こういうときに焦るのが俺の短所だな。


「【ここにある白金貨全てと引き換えに我が忠実なる騎士を召喚する。いでよ! ブライ!】」


 俺は白金貨十枚を全てブライに変えた。

 これがゲームと同じ感じならば強ければ強いほど制限が強くなり召喚できる数が少なくなるが、ブライなど初級兵士は結構な数を召還できるだろうと思って全部変えた。

 もちろん全部変えて千体のブライが召喚できるなんて思って‘いなかった’。

 うん、過去形。今見てるから。

 俺の目の前には森の入り口まではみ出しているブライの大群がところ狭いしと並んでいた。

 あまりの数に圧倒される俺。

 だが、森の入り口まではみ出しているので既に軍隊には知られてしまった。

 さあ、後戻りはできないぞ。

 俺は大声で指示を飛ばす。


「全員で山の麓で駐留している軍隊を壊滅させよ!」


 俺は手短にそれだけ伝える。

 がちゃっと頷く音が重なりかなりの大きさの音になり鼓膜を揺らす。

 昼過ぎの太陽に照らされその鈍い鋼色に乱反射する。

 俺は最後の一言を言う。


「行け!」


 そういうとブライは一斉に振り返り走り出した。

 俺はブライの走るスピードを見て目を見開いた。

 明らかに前より速くなっている。

 軍の偵察部隊は真っ先にブライによって血祭りに上げられる。

 ブライは死体となったやつらを容赦なく踏み潰しながら本隊へと向かう。

 うわ~、自分で命令しときながらなかなかエグイな。てか最初のブライは殺した兵士からいろいろ剥いでいたけど今回のブライはそういうことしないのか?

 と、後ろで、ふぁ~、と欠伸をしながらエイクが起きた。

 俺は振り返りエイクと目が合う。

 エイクはその寝ぼけ眼をこすり、俺はボーっと見て次に俺の後ろの様子を見て口を馬鹿みたいに開けていた。


「こ、こ、これ! どういうこと! 兄貴!」


 やたらと興奮した様子で俺に詰め寄るエイク。

 目がキラキラしていてまるで少年のようだ。って少年か。

 

「とりあえず離れろ。近いわ」


 俺がそういうとエイクは離れる。

 目がずっとキラキラしていてなんか心がもやっとする。


「どうしたのぉ~? ちょっとうるさい……」


 間延びした眠たそうな声でゆらゆらと浮いているスーラは今にも落ちそうなほどに浮遊が安定していない。

 それに比べて他の精霊たちはスーラが落ちないかと心配そうな顔をしている。

 と、スーラも俺の後ろの惨劇を見て眠気が一気に覚める。

 

「ど、ど、どういうこと?!」

 

 馬鹿みたいに……馬鹿が大口開けて驚いている。

 なんか面倒になった俺は、プリル全部説明しといて、と丸投げして前を向いた。プリルが、は、はい! とやたらやる気になっていたのが気になる。状況説明なんだからちゃんとしろよ。

 俺は残った五体のアヴァロンと対面する。


「よし、それじゃあお前らは俺たちの護衛な。いつものお前は荷車を引いて行け。よし行くぞ」


 俺がそう言うとアヴァロンは荷車を引いて、左右に二体ずつの配置で歩き始めた。

 後ろがやたらと騒がしいが気にしないことにする。






 森を出るとすっごい光景を見た。

 空にでっかい氷山があり、それが少しずつ剥がれて槍となりブライに突き刺さっていく。

 軍隊は既に半分ほど壊滅している。

 が、上からの攻撃で鉄の屑がいくらか横たわっていた。

 俺はその数を百ほど数えてからゆっくりと息を吐き出した。

 いかん、落ち着け俺。ブライ一体金貨一枚だ。俺の持ち金は腐るほどある。多少の犠牲はしょうがない。

 と、また上の氷山から氷が剥がれて十体ほどのブライに貫通した。


「俺の金どうしてくれとんじゃぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!!!!!」


 俺は怒り狂って、しかし先ほど落ち着けたからか冷静さも失っておらず叫んだ。

 叫んだ俺はキョトンとしているエイクたちを尻目にアイテム袋を取り出し逆さにして『白金貨十枚』と念じる。

 出てくると同時に言葉を放つ。


「【ここにある白金貨十枚と引き換えに我が忠実なる魔法騎士を召喚する。いでよ! マイトス!】」


 白金貨がアイテム袋からポロポロと落ちて、地面に落ちた瞬間に言葉を言い終え白金貨が光りを放つ。

 そして出てきたのは漆黒のローブを纏ったやや小柄な魔法騎士。

 今回このマイトスの力を試すのもいいと思い召喚した。

 こいつにあの氷山をなんとかしてもらう。まあ、ダメだったらアヴァロンに槍を投げてもらって粉砕とかやるつもりだが。

 俺は出てきたマイトスに命令を下す。


「あの頭上に浮かんでいる氷山をなんとかしろ」

「御意」

 

 マイトスは短く返事をすると右手に持った杖を上に掲げ詠唱と思わしき言葉を発する。


「我が操るは紅蓮の炎。全てを飲み込み全てを灰すら残さず消す炎。かたどるは竜。その壮大な姿を持って彼の者を飲み込め!

 【炎竜噛飲(ファイランバイク)!】」


 マイトスがそう唱えると杖の先が光り輝き、そこからなにかが現れる。

 それはあたり一帯を高熱で覆い、空を真っ赤に染める。

 杖から飛び出した炎の竜は胴体を空に幾重にも巡らせ、空を覆う。

 すっげー長いな。

 俺の感想である。

 まあ白金貨十枚も使ったんだからこれくらいは出来てもらわなきゃな。

 でもこれはすごい。城で見たチンケな魔法とは段違いだ。

 と、マイトスは竜に命令を下した。


「竜ヨ。アノ氷山ヲ噛ミ砕ケ!」

(竜よ。あの氷山を噛み砕け!)


 命令と同時に炎竜は氷山へとまっすぐに向かった。

 既に炎竜の発する熱で溶けかかっているところに炎竜が止めと言わんばかりに氷山を飲み込んだ。

 この壮大な景色を見て大口を開けて見ている馬鹿三人と可愛い七人が後ろにいる。

 さて、これで大丈夫だろう。

 

「マイトス、ご苦労炎竜をしまってもいいぞ」


 炎竜をしまうという表現が正しいか分からないが、そもそもどうやっているのか知らないのでそう言う。

 マイトスは、分カリマシタ、とやや片言がとれていない感じで返事をする。

 軍隊はこの光景を見て、勝てない、と悟ったのか隊長らしきものがここからでも分かるほどに顔をしかめながら、退却! と言って撤退し始めた。

 もちろんブライはそれを黙って逃すほど優しくはない。

 後ろから斬り付けて次々と殺していく。

 よし、あとはあの兵士たちが金を持っていないか剥ぎ取るだけだな。

 と、思っていたら殿を請け負ったのか数人の者がブライを退けていた。

 マイトスの詠唱のときなどずっとアヴァロンがゆっくりとした足取りで接近していたためその光景がよく見えた。

 と、ブライが一体倒れた。

 また倒れた。

 なに! ブライを倒せる実力者がいたか!

 普通に考えればいるのだろうが、相手の敗走を見て完全に勝った気でいた俺は驚いた。

 まあ驚くだけでなんともないけどね。

 

「アヴァロン、右前のお前でいいや。あそこでブライを鉄屑にしているやつらを瞬殺してこい」


 俺が命令したアヴァロンはコクッと頷くと走っていった。

 





 数分後。

 兵士は全て山道へと逃げ、山の麓には数百の鉄屑と数千の死体が転がっていた。




感想にあった召喚できる数を制限するを使わせてもらいました!

これでブライさんの出番が増える(かも)!

あと、詠唱とかって難しいですね(--;)


感想・アドバイスお待ちしておりますm(_ _)m

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