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第三十二話『旅立ち』

 ある日ある国に知らせが届いた。

 その知らせはすぐさま国王の下へと届く。


 薄暗い部屋。

 奥には社長室のように大きな机があり、手前にはソファーと思わしき物が長机を挟んで向かいあわせで置いてある。

 その部屋の扉の前には一人の老人が立っている。キリッとした顔つきで、年で白く染まった髪をオールバックで固めている。

 老人は一見誰もいないように見える部屋を見渡し、一言。


「天井。女王様お戯れはほどほどにしてください」

「ちぇ、バレちゃった」


 まだ幼さが残る声が聞こえたかと思うと上から人が落ちてきて奥の大きな机の上にふわりと着地した。

 真っ赤なセミロングの赤髪に本で見る王族が着るような煌びやかな服装。だが、どことなく攻撃的な雰囲気をかもしだしているその服はあまり貴族たちと会うときの格好としてはどうかと思うものだ。

 体は全体的に小柄。だが、その体から発せられるオーラは強者を思わせるものだった。

 老人は驚いた顔も、呆れた顔もせず淡々と届いた知らせを告げる。


「つい先ほど南の辺境にあるノンスール王国が何者かによって落とされました。数は極めて小規模。軍隊は壊滅。国王もおそらく死亡。しかし、新たな国王は未だに立っておりません」


 それを聞いた女王様はニヤッと楽しそうな笑みを浮かべる。

 まるで新しいおもちゃを見つけた子供のように。

 女王様は喜々とした調子で口を開く。


「へぇ~、おかしいね。それって国民による反乱とかじゃなくて? 違うならやっぱりおかしいよ。そいつの目的が分からない」


 でも……と女王様は続ける。


「私なら分かるな。多分そいつは強者を求めているんだろうね。でもそれでも疑問は残るね。強者を求めるならなんであんな辺境の地を選ぶんだろう? 

 ま、それはおいといて面白そうね。

 ちょうど今国の資源とか危機的状況だったんでしょ? そこ侵略しようよ。国王がいないならギルドにも金は渡っていないだろうし」


 女王様がそう一気にまくしたてると老人は初めて表情を崩し、呆れた表情をしてため息をつく。

 そして一言言う。


「つまるところ、女王様は国を落としたやつと戦いたいと」

「バレちゃった?」


 女王様は嘘がばれた子供のようにテヘッとして首肯した。

 老人はもう一度ため息をつくと喋りだした。


「でも資源が足りなくなってきたのは事実。荒れた土地を開墾するよりあそこ一帯を侵略したほうがいいのも事実。分かりました軍を出しましょう」

「やった!」


 女王様は両手をあげて喜ぶ。これが一国の王かと問われればいささか疑問に思う。

 老人は本日三度目のため息をつくと、では軍の編成などしてきます、と言って一礼して部屋を出て行った。

 部屋に残された女王様は自分が未だに机の上にいることに気がつき、降りて椅子に座る。

 この世界には珍しいふんわりとした座り心地の椅子に体を埋め、女王様は一人呟く。


「周りの国とは争うと私は無事でも国がやられるからな~。今回はノンスールだ。しかも軍隊は壊滅。久しぶりの戦争だわ。いや、これは虐殺かしら?」


 フフフ、と不敵に笑う女王様はこれから起こる出来事を想像してはまた笑うのだった。
















 宿屋を出た俺たちはずっと放置していた荷車に乗って町を進んでいた。

 荷車はアヴァロンが引いている。

 さて、少し今の戦力でも確認するか。

 今俺の護衛としてアヴァロンが一体=白金貨一枚。

 城で政治などをするアヴァロンが十体=白金貨十枚。

 しめて白金貨十一枚。

 ついでにアイテム袋に入っている金額は全部で『四千八百飛んで三万七千五百二十七キュール』だ。

 白金貨四十八枚に金貨が三枚。銀化が七十五枚に銅貨が二十七枚だ。

 全部持つとかなりの重さになるので普段はアイテム袋に入れている。


 と、いつの間にか門まで来ていたようだ。

 目の前には来た時と同じ大きな扉が開いている。

 そっか、兵士全員のびてるからいないのか。

 そう思った俺は門をくぐる。

 この門は来たときとは違って北の門だ。

 主人に聞いたら、ここから北に行けば『ビルス帝国』がある、と言っていたのでそれに従うことにした。

 アヴァロンで脅して確認をとったのだから大丈夫だ。

 ちなみに主人に、世界地図はないか? と聞いたら、地図なんて俺らみたいな一般人が持ってるわけないだろう、とのことだった。

 でも、冒険者時代のことである程度の地形は言えるそうだ。

 今からいくビルス帝国とここノンスール王国は高い山脈に阻まれているそうだ。

 道はある。だが、その道はとても大人数が通れるような広さじゃないため、大人数の移動が必要な戦争はあまりされていないようだ。確かに少数で小出しにしていたら出た瞬間に待ち伏せられて一掃されるからな。

 あと、ここノンスール王国は辺境の地らしい。

 最南端にあり、高い山脈で交流も制限されている。

 ここで、ギルドに守ってもらわなくてもいいんじゃね? と思ったが、ギルドが守るのは対人ではなく魔物からだそうだ。

 人がいない=魔物が繁殖しているそうだ。つまり最初に神に飛ばされたところはかなり危険だったわけだ。次会ったらクレームだ。


 閑話休題。


 俺らは門をくぐって荷車に揺られながらビルス帝国へ行くため、なにもない草原を進んで行く。

 ここ草原は定期的にギルドが魔物狩りを行っていてかなり安全らしい。

 春のように暖かい日差しを受け、時々吹く風が俺の長くなってきた髪を揺らす。……結構長いな。この世界に床屋があるなら行ってみるか。



 そんな感じでずっと変わらない景色を見たり、俺の膝の上とかでぐて~としている精霊を見て和んだり、ボーっとしていると夕暮れになっていた。

 俺らは野営の準備をする。

 とはいってもテントとかそういうのはないので雑魚寝だ。

 宿の主人にもらったシーツらしきものをかぶって眠りにつく。

 この日はやたらと眠かったため、すぐに眠りについた。





 そして翌日。

 俺は近くに人が来たことを直感で感じて目覚めた。










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