第二十八話『豚王を足蹴に』
豚王は俺のことを視認すると歯軋りを立てながら俺を睨みつける。
おーおー、その恨みがこもった目、いいね~。一般人ならその目だけで殺せそうだ。
俺と豚王との距離が十mほどとなった。
その時、もう物音一つしなくなった城にそよ風のような綺麗な声が響いた。
「おーい! お金持って来たよ~!」
チラッと大きな扉がある正式な入り口を見るとわずかに扉が開いており、その隙間からソフトボールほどの袋を両手でぶら下げながら飛んでくるスーラたちがいた。
重たい物を一生懸命持ち上げて運ぶ様はこの張り詰めた空気をわずかに和ませた。いや、和んだのは俺だけか?
それを見た俺は一旦立ち止まり、スーラたちがここまで来るのを待った。
スーラたちは俺の前まで来ると最後の力を振り絞り袋を胸元まで引き上げて突き出した。
腕がプルプルと震えていて面白い。
俺はこんな状況にも関わらず少しだけ何もせずに見ていた。
次第に精霊たちも俺が面白がって見ていることに気づいたようだ。手を一旦下げて、頬を膨らませムッとしていた。そんな感じで俺を睨んでいると思うのだが、正直可愛くてしょうがない。
俺はそろそろもらってやるか、と手を差し出した。
精霊たちはパッと明るい顔になり俺の掌に袋を乗せていく。
グッ、重いな。一個でこの重さかよ。
精霊たちは一人一つずつ持っているので持ち切れないなと瞬時に判断する。
「下に落としていいぞ」
俺がそう言うと精霊たちは袋を落とした。
そして、疲れた~、とでも言うように俺の肩や頭に乗って来た。八人全員乗ってきたので、窮屈じゃないか? と思ったがいいようだ。
まあ、これはこれで俺も嬉しいから許すか。
さて、中身を確認しようかな。
俺は右手に持っている袋の紐を解く。袋は巾着のようなものだ。
紐を解いて口を開けると、そこにはまばゆいばかりの金貨白金貨が……
「……ない?」
今俺の手の中にある巾着袋の中には、大量の銅貨の中に少し銀貨が混ざっている程度しかなかった。
俺は慌てて他の袋も調べるが全部同じような結果だった。
俺が唖然としているとスーラが答えた。
「私たち城の中を探し回ったけど、どこにも金貨とかがなくて……それでしょうがないからありったけの銀貨と銅貨を持ってきたの」
「……そうか、よくやったな」
これがブライなら、本当に探したんだろうな、くらい言うつもりだったが、精霊なら仕方ない。精霊は嘘をつかない。いや、ブライも嘘をつかないが……まあ、あれだな。うん。
俺は気を取り直して、未だに俺を睨み殺さんとする豚王に問う。
「おい、豚王。喋ることを許すから答えろ。余計な事を言うと首が飛ぶぞ」
俺はそう前置きをしてから喋りだす。
「なんで王国なのにこんなに金がないんだ?」
「ふん! 悪かったな貧乏国家で……っ!」
「余計なことを喋るなと言っただろう。次はないぞ」
余計なことを喋ったのでアヴァロンが首に槍をつきつける。
多少深く刺さり、血がポタポタと垂れる。
豚王は顔を青ざめさせてコクコクと頷く。
所詮は豚か。どうせこいつは親が王だったから順番的に王になったような屑王だったのだろう。
俺はアヴァロンに槍を降ろさせ、もう一度豚王に問う。
「なんで王国なのにこんなに金がないんだ?」
「ゆ、許してくれ! たの……ぅぅぅぅぅぅぅ!」
「何回言わせる気だ? 俺は短気だぞ? あまり怒らせるな」
アヴァロンの槍が豚王の足に槍を突き刺す。切断はしていない。
豚王は痛みでもがくが、アヴァロンに押さえつけられる。
同様に叫ぼうとするが、アヴァロンに口も押さえられ何も言えない。
俺はわずかにほくそ笑むともう一度問う。
「なんで王国なのにこんなに金がないんだ?」
「…………び、貧乏だ、だ、だからで、です」
「チッ」
豚王は必死に叫ばないように顔を痛みに歪めながらも答えた。
俺は、もう答えたか、と心の中で言いながら舌打ちをした。
それにしても貧乏だからか。
俺は続けて問うた。
「ここは近隣では一番小さな国なのか?」
「は、い。い、いつ侵略されてもお、おかしくないので、金の大半は冒険者ギルドにわ、渡して国を守ってもらっています」
ところどころで痛みを堪え切れずにつっかえるがなんとか言った。
俺も普通に聞き取れたので良しとしよう。
それにしてもここはそんなに小さな国だったのか。
…………よし決めたぞ。
「この国を拠点にするか」
ついでに俺が王様になろう、と言った。
周りにいるものは全員ポカンとしている。
正直政治とかわかんないけどそこは万能なアヴァロンに任せればいいだろう。
俺は特になにもせず、この国から金を巻き上げて他の国を侵略して行けばいいんだ。
俺はそう言う考えにいたったのでそう言ったのだ。
すると、豚王がわめきだした。
「こ、この国の王はわしだぞ! おぬしが王になれるわけが……っ!」
「だから俺の機嫌を損ねるなよ。豚」
またわめきだした豚にアヴァロンは槍を突き刺した。今度は逆の脚だ。
また痛みで叫ぼうとするが口を抑えられてなにも言えない。
目からは血涙でも出そうなほどに血走っている。
いい眺めだ。一国の王を足蹴に出来る日がこようとはな。
俺が優越感に浸っているとこの謁見の間に元気な声が響いた。
「兄貴ーーーー!!!!!!!!!」
狼風の風貌のエイクは銀色の髪をなびかせながら俺に向かって走ってくる。
そのすぐ後ろからはプリルが短めのブラウン色の髪を左右に揺らしながらエイクと同じように走ってくる。
その後ろからもぞくぞくとチビ共が走ってくる。
一番後ろではアヴァロンがやり遂げた感を出しながら立っていた。
ふと、耳に呪文のように何度も呟く声が聞こえた。
そしてエイクが俺との距離五mになろうとしたとき。
俺の体に激痛が走った。
感想・アドバイスお待ちしておりますm(_ _)m
(最近特に書くことなくなってきたな。いや、書かなくてもいいんだが)




