第二十六話『ドラゴンの報酬はいかに』
「はい! お持ちしました!」
受付はゼェゼェと息を切らしながら俺が座っている机の上に、金の入った袋をドン! と置いた。
残り時間十二秒。ギリギリだったな。
「お疲れ。そんじゃ」
俺は金が入った袋を持って席を立ち、扉へ向かう。後ろで、少し待ってください! と聞こえるが無視だ。
俺は袋をチラリと見る。
袋があまり膨らんでいないな。
俺は歩きながら袋の中身をチェックする。
「おお!」
俺は思わず顔を綻ばせた。
中には白金貨が数枚入っていた。
確か白金貨一枚で……百万キュールじゃねぇか!
俺は歓喜しながら外へ出る。
ドラゴンはすでに撤去されており、ブライ総勢約二十体が並んで待っていた。
後ろにはアヴァロンがついてきている。
よし、早く行くか。
俺は冷たく、ドスのきいた声で呟いた。
今の俺はさきほどまでの感情が嘘のように消えていた。
「おい、アヴァロン。俺を肩に担いで宿まで全力で行け。あ、俺が耐えれる速度で全力な」
アヴァロンはコクッと頷くと地面を蹴る。
慣性の法則により、俺の体は置いていかれそうになったがなんとか踏ん張った。
ちなみにブライたちと精霊たちは頑張って早く追いつけと言っておいた。
ほんの少し時間が経つと宿屋の前にいた。
またも慣性の法則により前に放り出されようとするが、今度はアヴァロンが受け止めてくれた。
俺は降ろしてもらうとすぐに宿の扉を開ける。
「おい……なんだこれは?」
宿の中はすごい惨状だった。
食堂と併用していたロビーはバラバラになった机と椅子が散らばっており、ところどころに焦げた後や水がまかれていた。
そして二階へ上がる階段の前にはボロ雑巾のようになった主人の姿があった。
俺は早歩きで主人の元へと行く。
「おい、主人。これはどういうことだ?」
俺は片膝をつき、主人に問う。
主人は、うぅ、と呻きこちらを見る。
俺の姿を確認すると申し訳なさそうな顔をして答えた。
「すまねぇ。国のやつらが、子供らを、連れてったよ……何度もぶたれて痛そうにして、俺も助けようとしたんだが……すまねぇ……」
掠れるような声でなんとかそれだけ声を出した。
そうか国のやつらがチビ共を……
俺の中でなにかが膨れ上がってくる。
俺は主人に、分かった教えてくれてサンキュ、と言うと立ち上がる。
と、同時に外からがちゃがちゃとブライたちの音がした。人間の着る鎧とは音が違うからよくわかる。
俺は扉に向かって歩く。
ああ、今夜は血に染まりそうだな。
俺はそんなことを考えながら宿を出る。
そこにはちょうど走ってきたブライと精霊たちがいた。
みんな俺を見るなりピタッと動きを止めた。なんとなくこいつらが恐怖しているのが分かる。
俺はそれを気にせず声を出した。
「今日はいい天気だな。ほどよく雲が出ていて月明かりを時々遮る」
俺は両手を広げて上を見た。
良く分からない。良く分からないけどこうでもしないと俺の中の溢れる気持ちが爆発しそうなんだ。
俺が視線をブライと精霊たちに戻すと、全員顔が恐怖に染まっていた。いや、ブライに表情はないのだがそんな気がした。
俺は続ける。
「でもなぁ、こんないい夜にとんでもないことしたやつらがいるんだよぉ」
自分でも変な喋り方をしていると分かる。
でも、そう言う言葉がどんどん口から出てくる。
「今夜はさぁ、血に染まりそうだなぁ」
俺がそういうと精霊のレッドとブルーが口から泡をふいて落ちた。
俺はそいつらに近づく。なぜか精霊やブライたちは俺から距離を置く。
俺は落ちたレッドとブルーを掌に乗せる。
「ほらぁ、起きないと。今から戦争だよぉ」
俺がそう言って二人の顔をペチペチと叩くと二人共目を覚ます。
二人は俺を見るなり、後ずさり空へと飛び立ち逃げる。
俺はそれをただ黙って見ている。
そして俺はさきほどと一転して低く、冷たい声で命令した。
「今夜中にこの国を落とせ。チビ共が連れ去られた。まあ、ちょうどいい。そろそろ国落としをしようとしていたんだ。抵抗するやつは殺しても構わない。ただ、掃除が面倒になるから気絶させたほうがいいぞ」
俺が喋っているとだんだんとブライたちの顔が歓喜に満ち溢れた顔になっている気がした。顔なんてないためあくまで気がしただけだ。
「分かったなら行け。国を血祭りに上げろ」
ブライたちは頷いて斧を地面にガンッ! と打ち付けた。やる気は十分のようだ。
そして走っていくブライたち。精霊たちは未だに残っている。
ちょうどよかったのでこいつらには違う命令を出す。
「おい、スーラ。お前らは全員で手分けしてでもまとまってでもなんでもいいから国の金庫とかから金を持ってこい。宝石とかはいらない。金貨か白金貨を持てるだけ持ってこい。分かったなら一刻でも早く集めてこい」
「わ、わかりました!」
スーラはそういうと精霊たちになにか言い聞かせ飛んで行った。
残ったのは俺とアヴァロンだ。
アヴァロンはまるで自分も戦争にいきたいかのようにうずうずしていた。
「お前戦争行きたいか?」
「イエ、タダワタシノオシエゴタチヲタスケタイデス」
(いえ、ただ私の教え子たちを助けたいだけです)
「そうか、なら少し待っとけよ」
俺はさっきもらった白金貨を前にぶちまける。
白銀の硬貨が月の光を受けて怪しく光る。
俺はいつもの言葉を唱える。
「【ここにある白金貨全てと引き換えに、我が忠実なる聖騎士を召喚する。いでよ! アヴァロン!】」
薄暗い大通りを真っ白な光が包む。
光がおさまると目の前に月の光を受けて怪しく光るアヴァロンがいた。
総勢八体。なかなかの数だな。
俺はそれぞれに命令を下す。
「よし、アヴァロン。いつも俺の護衛をしていた褒美だ。絶対チビ共を奪ってこい。失敗は許さん」
俺についていたアヴァロンは嬉しそうな雰囲気を出すと一瞬で姿が見えなくなった。
よし、次はこいつらか。
「お前らは、六体は城攻め。二体は俺の護衛をしろ。さっき言ったが抵抗するやつは殺しても構わん。ただ、後始末が面倒だぞ。気絶させるいいな。分かったら行け」
そう言うと同時に俺は両端にいたアヴァロンを指差して、お前らが俺の護衛、と言った。
アヴァロンたちはコクッと頷いて俺の両隣に来た。
残りの六体のアヴァロンたちは城へ向かって走っていった。
この国ってなんとも攻めやすい形しているんだろう。
城を真ん中に、そこから東西南北に大通りが設置してあり、直接門につながっている。
俺はそんなことを考えながらアヴァロンに肩に乗せるよう指示した。
一体のアヴァロンが俺を担いだところで、俺が耐えれるくらいの速度であまり急がなくてもいいから城へ運べ、と命令した。
それを聞いたアヴァロンはコクッと頷き走り出した。
風を切るほどの速さで、気持ちがいい。
俺は城にいると思われる国王を睨みつけんばかりに城を睨んで城へと向かった。
そろそろ一段落できそうですね~(*^-^)
国落としが終わったら次はなにをさせようかな?
国落しでは主人公の顔は知られないのでそのまま冒険者として各国を回って内部から攻め落とすとか……ま、それだと同じような展開になりそうなのでいろいろ考えます(*^-^)
では、感想・アドバイスお待ちしておりますm(_ _)m




