第十二話『聖騎士登場!』
俺は洞窟手前の草むらに身を隠していた。
チビ共は俺の後ろにぴったりういてきている。みんなまだ恐怖が残っているが大分安心しているようだった。
俺はいつもそばにいるブライ四体に指示を出す。ちなみに残りの八体は少し離れたところで待機している。
「よし、今から盗賊のアジトに攻め込むぞ。
洞窟の入り口に入ったらまず一体は入り口で見張りをしろ。盗賊が帰ってきたら全部の仲間に念話で知らせろ。出来るだろ?」
ブライはがちゃっと頷き肯定する。
「そんで、入ったらまず金がある場所を探せ。道が別れていたら一つの道につき二体一組で進め。道中に盗賊がいたら問答無用で殺せ。ただ、ボスっぽいやつは殺すな。地獄を味合わせる。
あと、俺たちの護衛は三体とする。死んでも守れよ。
金を見つけたら全員に伝えて俺を呼べ。攻めながら戦力を増やす。
以上だ。多分大丈夫だ。行くぞ、いいな?」
チビ共とブライは頷く。
俺は「行くぞ」と小さく、だがちゃんと聞こえるくらいの声量で言って飛び出した。
もちろん俺の前には二体のブライ、後ろには一体いる。俺が一番前だったら死んじゃうだろ?
草むらからもブライが飛び出してきて俺の前で合流する。
ブライは八体が一番前で、二体が俺の目の前で、一体がチビ共の後ろで走っている。
そして、洞窟の中へ入った。
洞窟の中はひんやりとしていた。幅が五mはあるので結構広い。
後ろのブライはいいつけどおり入り口でクルっと反転して見張りにつく。
そして入った俺らはそのまま突き進む。だんだんと悪臭で鼻が曲がっていく。多分盗賊の匂いだろう。あいつら風呂とか入らないもんな(小説の中ではそうだった)。
と、進んでいくと道が四つに別れていた。八体のブライは言いつけどおり二体一組になり穴に入っていく。
俺はもちろん分かれ道で待つ。ついていくと危なそうだし。
「うわ! なんだこいつら!」
「くそ! こいつらつえぇ!」
「なんだよこいつら。刃がとおらギャァァァアアア!!」
盗賊と思わしき者たちの悲鳴が聞こえる。
チビ共は相変わらずガクブルと震えている。そんなに怖いか?
こっちには痛みを感じなければ恐怖もないべらぼうに強い兵隊が一二体もいるんだぞ?
しかも常にそばにその兵隊が三体いる。
ここまでしてどこが怖い?
「おらぁ!」
「おし! 一体やったぞ!」
「さすが親方!」
え? なんだって?
「もういっちょぉぉぉぉおおおお!!!!」
「うっひょぉおお! さすがだぜ!」
「さっさと他のやつらも片しましょうぜ!」
足音がだんだん近づいてくる。
え? マジで? ブライ二体もやっちゃったの?
俺どうしようもねぇよ?
ちょ、チビ共震えるな。俺が不安になるだろ。
「お、おい、ブライ。二体やられたのか?」
ブライは重々しくがちゃっと頷いた。
ちょっとぉぉぉぉぉおおおおお!!!!!!!!
たかが盗賊って言ったやつ誰だよ! めっさ強いやついるじゃねぇか!
っとと、思わず取り乱してしまった。こういうときこそ落ち着かねば。
「おい、ブライ。もう金のある場所は見つけたか?」
ブライはがちゃがちゃと首を横に振る。
オーマイガッドゥ!
「すぐに違う穴に行ったブライを呼び戻せ」
なんてやっていると左端の穴から人影が出てきた。
「おいおい、俺らのアジトに乗り込んでくるやつだからどういうやつかと思ったが、ただのガキじゃねぇか」
身長二mほど、いかつい顔をして無精髭を生やしていて、スキンヘッド。筋骨隆々とした体つきは歴戦の戦士を思わせる傷痕が多数見えた。
いかにも盗賊という風のそいつは俺たちを見下ろしてそういった。
その視線は獲物を狙う肉食動物のごとく鋭いものだった。
「おい、そこの坊主。その鎧を操ってるのはお前か?」
俺を見てそいつは言ってくる。
低く、ドスの聞いた威圧するような声に足がすくむ。
だが、問いに答えないと襲い掛かりそうなので答える。
まずは時間稼ぎをしなければ。中に行った残りの六体のブライを集めて同時に攻撃すれば……
「そうだ。俺が召喚した」
「召喚? 練成の間違いじゃねぇか? 召喚魔法がお前みたいなやつに使えるわけがないだろう。しかも何体も同時になんてよぉ」
盗賊のボス的なやつは鼻で笑う。
よし、そのまま俺を馬鹿にでもしとけ。すぐにお前を殺してやる。
俺がそうやって睨んでいると急にボスは笑うのを止めた。
「まあ、魔法には違いねぇ。魔法使いは何するか分かったもんじゃねぇからな。さっさと殺すか」
ボスは右手を上げると盗賊がボスの後ろからワラワラと出てくる。
そして、ボス自身も手に持っていた両手剣を構えると、
「残念だったな坊主。死ね!」
一斉に斬りかかって来た。
俺は咄嗟にブライに指示を飛ばす。
「ブライ! 盗賊を殺せ! ボスは注意しろ! お前らでもやられるぞ!」
そう言ったところで一体のブライの上半身と下半身が二つに別れた。
そして、すぐさま残りの二体も真っ二つに切り裂かれる。一瞬だった。
俺は腰を抜かしてその場にへたりこんだ。
それを見てボスは大笑いをする。
「ハハハハ! なんだ坊主? お前ゴーレムしかつくれねぇのか? こりゃ傑作だ。確かにゴーレムは強かったが、俺の敵じゃねぇ」
俺は今どんな顔をしているのだろう。
もう考えることもしていない。こんなやつに勝てるわけがない。
「こんなやつならたいした脅威でもねぇ。ちょっと面白いことやってやるよ」
ボスはそういうとポケットからなにかを取り出し、俺に向かって投げつける。
俺はそれを体に受ける。ちょっと痛い。
体に当たったそれをとってみてみる。これは……
「グハハハ! 見たことねぇだろ?! そりゃあ白金貨だ! この前でかい商人を襲ったら持っていやがったんだよ! 一生で一度見れるか分からない大金だぞ?! よかったなぁ! 死ぬ間際にそんな大金を持ててよぉ! グハハハハハハ!」
「……ふふふふ……ふっははははははははは!!!!!」
「……あぁ?!」
俺が突然笑い出したことによりボスは顔をしかめる。
だが、すぐにまた馬鹿にしたような表情に戻ると、
「どうした?! 死ぬと決まってどうでもよくなったか?」
ボスは人をイラつかせるような表情で俺を見る。
俺は笑い声を少し抑えて答えてやる。
「ああ、そうだ。お前の死が決定したからな!」
そういうとボスはカチンと来たのか笑うのを止めた。
俺はそこで召喚の言葉を念じる。
「そうか、お前はよっぽど早く死にたいようだな。まあ、そりゃそうか。散々いたぶられてから死ぬよりサクッと死にたいよな。でも残念だ。お前は俺の機嫌を損ねた。だから、手を引きちぎって、脚を切り刻んで、最後脳をゆっくりと剣で切って殺してやるよ!!!!!!!!」
そう言ってボスは剣を構えた。
俺は正直足が笑って仕方なかったが、言葉を言った。
「【ここに白金貨一枚と引き換えに我が忠実なる聖騎士を召喚する。いでよ! アヴァロン!】」
俺が喋りだすとボスはなにかを感じ取ったのか襲い掛かってきた。
だが、これは俺の早口のほうが速かった。
白金貨が強く発光する。
ほんの数秒。俺は斬られた感触がないことからボスは攻撃に失敗したのだろう。よかったぁ。
光がおさまる。
光がおさまると目の前には二mほどの鎧がいた。
ブライとは違って白銀の鎧に包まれ、ところどころに黄金が張り付いている。
腰のあたりには、ふんどしのようなに模様がかかれた布がなびいている。
手には槍のようなものを持っていた。先は尖っていて、その少し手前にはハンマーのようになっている。
そしてなにより違うのが体型だ。
ブライはがっちりしていたが、アヴァロンはスレンダーだった。
そして、アヴァロンからはオーラのようなものが感じられる。
「な、なんだそいつは!」
ボスは突然現れたアヴァロンに驚いている。
でもなんで怯えたような顔をしているんだ?
まあ、いい。こいつなら余裕で殺せそうだ。
「アヴァロン、こいつらを殺せ。だが、ボスだけ生かせ。だけど四肢を折るくらいはやっていいぞ」
アヴァロンはコクリと頷く。鎧なのにほとんど音がしなかった。
と、アヴァロンが頷いた次の瞬間、目の前からアヴァロンは消えていた。
え? と思って振り向いたら後ろに回りこんでいた盗賊たちが血祭りに上げられていた。血と内臓があたりにぶちまかれる。一瞬にして洞窟内が血生臭くなった。
ボスはというと怯えて上手く体が動かないようだ。
だが、キッと顔を引き締めたと思ったら、
「『我が炎の槍は敵を貫き灰にする』
【フレイムスピア】!」
なにかを早口で言うとボスの周りに五本ほど燃え盛る炎の槍が現れた。おお! 攻撃魔法か! 今まで魔法なんてあの盗賊が使ったガスバーナーしかなかったからな。ちょい感動。
そして、ボスは手を挙げて…………俺目掛けて思いっきり振り下ろした。
「アヴァロン! 俺を守れ!」
そう言うと目の前の空間が少し歪んだ。
そして、炎の槍がその空間が歪んだ場所にくるとガンッ! と硬いものにぶつかったかのような音がして炎の槍は消えた。
これって障壁ってやつか? アヴァロンは魔法まで使えるのか! 万能だな~。ブライとアヴァロンの差ってどれくらいなんだ?
ボスが「え?」と呆けているとボスの後ろにアヴァロンが現れた。
アヴァロンは鎧にも関わらず、ほとんど音を立てずに移動できる。しかも移動スピードが尋常じゃないほど速い。
ボスはアヴァロンに両太ももを蹴られて関節が一つずつ増えた。
「ギャアアァァァァアアア!!!!!」
ボスが痛みで泣き叫ぶ。
ククク、いい眺めだ。やはりこういう光景が見たかったんだな俺は。
さて、こいつが俺の所有物を使えなくしたやつだな。どう処刑してやろうか。




