第九話『村を出発目指すは王国』
あれから俺らは森で狩りをして(主にブライが)食料として熊や、果実を村から持ってきた荷車に乗せ、王国軍が来たであろう道を進んでいた。荷車は新たにブライを二体出して引かせた。かなり重そうだったからだ。
斥候みたいなのは王国軍にいなかったし、ブライは一人残らず止めをさした、と伝えてきたので王国軍がつぶされた情報はまだいってないだろう。
それならば五十人もの奴隷を持った俺はただのどっかの坊ちゃんと思われるかもしれん。
……いや、こんなみずぼらしい格好じゃ無理があるか。
それにまず身分証明みたいなのも提示しないといけないのかな?
くそ、面倒だ。ついてから考えよう。
夕暮れ時。太陽が地平線に半分以上埋まり、空がオレンジ色から闇へと変わるころ。地平線の彼方まで広がる大草原で野宿をすることになった。
見渡す限り本当に何もない。遠くにかろうじて山が見えるくらいだ。
あの山に向かって歩けば俺の目指す王国があるらしい。
村を出て、多分五時間くらいは歩いたのではないだろうか。
ずっと無言で歩き続け、気づいたら見渡す限り大草原にいた。
「ご主人様。今日はここで野宿ですか?」
奴隷が聞いてくる。
子供のことを心配していたこの男はなぜか俺にちょくちょく話しかけてくる。
返事は全部首を振るだけで済ましたがな。
そして、今回聞いてきたのもこの男だ。
「ああ、待て。
ブライ、お前らは夜でも目が……ってあるのか知らんが、暗くても敵の位置とか分かるのか?」
夜寝ているときに襲撃にあったりしたらたまらない。
ここは隠れるところも障害物もない。盗賊が馬にでも乗ってきたらまず逃げられない。
そこでブライまでもが敵が見えず、戦えないといったらジ・エンドだ。
だが、心配は杞憂だったようで指でOKサインを作る。
…………なんかこいつも馴れ馴れしくなったな。まあ、ちゃんと働いてくれるなら多少は許すか。
「おい、今日はもう歩かない。ここで野宿だ」
「はい、わかりました。えっと……」
男が分かったと言ったにも関わらず、なにか言いたそうにしている。
「言うことがあるなら言え。こういう中途半端なのは嫌いだ。腕引きちぎるぞ」
「は、はい! 俺の名前はフライトって言います」
「ああ。……で?」
そういえば俺こいつらの名前知らなかったな。
ずっと奴隷で統一していた。
「ですから、ご主人様に呼ばれるときは名前が言いと思いまして……」
「別に気づけばなんでもいいだろう。気が向いたら呼んでやる」
男は明らかに俺よりも年上だ。それに体格だって比べるのが恥ずかしいくらい違う。
なのに俺の方が立場が上だ。奴隷ってそういうもんだしな。
ちょっと優越感に浸りながら俺はブライを召喚して指示を飛ばす。
「【ここにある金すべてと引き換えに我が忠実なる騎士を召喚する。いでよ! ブライ!】
…………よし、全部でちゃんと一二体いるな。それじゃあ、お前らは夜の間見張りをしろ。敵が近づいてきたら捕らえて置け。無理だったら殺してかまわん。奴隷と俺を囲むように丸く円になって配置につけ。以上だ、行け」
俺はいろいろ指示を出したら奴隷に向きなおった。
奴隷を数えてみる。子供が七人、大人が五二人だった。老人はいない。食い扶持を減らすために働けない老人は追い出す、みたいなのを聞いた事があるが、そういうことだろう。
子供は七人とも疲れてそれぞれ母親らしき人にもたれかかってる。
俺は奴隷たちの前に立って喋ろうとする。すると、奴隷たちは話すのを止めて俺に視線を送る。
人の前に立ったことのない俺はちょっとビクッとしたが、すでに暗くなっていたので気づかれなかっただろう。くそ、なんでこんなとこでぼっちの宿命が……
ってそれはどうでもいいとして、俺は喋りだす。相手は奴隷なのだから俺は偉そうにしていればいいだけだ。態度のでかさは自信がある。
「おい、今日はここで野宿ってことは聞いてるな。各々勝手に荷車から食料を取り出して食べろ。ただ、道のことを考えろよ。大草原には食料になりそうな動物も植物もいなかった。つまり、それがなくなれば飢えるぞ」
奴隷は顔を強張らせて聞いている。ってかそれくらい俺に言われなくても分かってるだろ。
でも、よし。念には念をだ。これくらい言っておけばバクバク食うこともないだろう。
俺は続ける。
「だが、あまりに食わなくて歩けない、となったら置いていく。だからある程度はちゃんと食べろ。それは各自まかせた。ちなみに俺優先だからな。お前らが食いすぎて少なくなったら全部俺の分にするからな」
俺はそう言うと「以上。疲れを明日に残すなよ」と言って食料を取りに行く。
りんごのような果実を二つ手にとり、奴隷とは外れたところに座る。
俺は足を伸ばし、片手を後ろにつき、片手でりんごを持っていた。一個は太ももの上に置いている。
俺はりんごみたいなのをかじる。シャリッと音がして果汁が滴る。
味もりんごそのものだった。だが、味わいは断然こっちの方が上だ。
果肉は、ほどよく硬くなっており、それを噛み砕くと口の中に甘みが一瞬で広がる。そして、噛めば噛むほど果汁が溢れ、まるで濃厚なりんごジュースのように口の中を潤す。
しかも、それは噛んでも噛んでも味が消えることはなかった。それどころかますます味が深くなっているようだった。
俺はそれをあえて飲み込む。これだけ濃厚なのだからちょっとくどいかな、と思っていたのだが噛み砕かれたりんごらしきものは、するりと喉を通り、食道を通り、胃へとストンと落ちた。
しばらく口に残るほのかな味を楽しんでいた。
そして、俺は二口目と食を進めた。
強い朝の日差しを浴びて、目が覚める。
俺はむっくりと起きて周りを見る。
奴隷は子供以外全員起きて体を動かしていた。
俺は奴隷に「今日は歩きまくって王国まで一気に行くつもりだからちゃんと飯食っとけよ」と言って昨日と同じ果実を手にとった。
俺は歩きながらりんご(仮)を食べ、行き先の方向にいるブライに話しかけた。
「おい、夜なにかあったか?」
ブライは首を横にがちゃがちゃと振る。よし、なにもないな。
俺はさっさとりんご(仮)を食べ終わって「歩くぞ」と言った。
「すいません」
俺が行く先に振り返ったとき、後ろから女の声が聞こえた。
俺は振り返らず「なんだ?」と問う。
「その、子供がトイレと言っているのですが……」
へぇ~、こっちにもトイレって単語あるんだ。
てか、トイレか。見渡す限り草原だしな。そこらへんで、はねてくるしかないだろう。
「少し遠くでしてこい。ブライ、こいつの護衛をしろ」
ブライはビシッと敬礼をして立ち去った。
なんかふざけてる気がするのは俺だけか?
そして俺は待たずにそのまま歩く。
陣形は昨日と同じだ。前後左右に二体のブライを配置。俺のそばに二体のブライを配置、荷馬車に二体配置だ。まあ、俺の護衛から一体は子供の護衛に行っているが。
この陣形で俺らはずっと歩き続けた。奴隷も次第に何も喋らなくなっていった。
太陽が真上まで昇り終え、徐々に西へ傾いていく頃。
遠くに森らしきものが見えた。
よし、この大草原をようやく抜けたか。
そういえば王国軍はどうやってきたんだ? ここに来るまで特に野宿したあとは見当たらなかった。
ま、そんなのどうでもいいか。皆殺しにしたから関係ねぇや。
とりあえず俺はあの森目指して進むことにした。山はちょっと逸れるがまあいいだろう。食料も追加で欲しいところだからな。何日かかるか分からないし。って朝言ってることと矛盾してるな。どうでもいいか。
「おい、今からあの遠くに見える森を目指すぞ。食料の確保のためだ」
奴隷は全員で頷く。
みんな疲労のいろが濃い。特に子供は大人におぶってもらっている。
チッ、子供のせいで進めないとか冗談じゃねぇぞ。
俺はいつの間にか帰ってきていたブライに新しく命令をする。
「おい、子供たちを荷車にでも乗せてこい。食べた食料の重さよりは軽いから大丈夫だろう。無理だったらお前も荷車を引いてこい」
ブライはビシッと敬礼して後ろに歩いていった。やっぱりふざけてないか? こいつ。
まあ、いい。これで心配はないだろう。大人は気合で頑張らせればいい。子供みたいに駄々をこねるなんてことしないだろうからな。最悪ブライを使って脅せばいい。
後ろで「ありがとうございます」とか聞こえるがどうでもいい。子供は仕事とか覚えやすいと聞いた事があるからな。ここでつぶれてもらっちゃ困る。
俺は前を向いたまま歩き続ける。
ちゃくちゃくと増えていく総合P…………嬉しくてニヤニヤが止まりません!ww
いや~、本当に嬉しいですね~。嬉しいのでもう投稿しちゃいます!
本当はここから一日一話にしようと思っていたのですが、もう我慢出来ませんねw
このペースだと絶対執筆が間に合わず、三日に一回の更新とかになってしまいそうです(T_T)
でも、俺は頑張って行きますので応援よろしくお願いしますm(_ _)m(ずうずうしいですかねw)




