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閑話一その①『突然現れた者』

初めての閑話。

閑話って難しいですね(;^_^A アセアセ・・・

 いつもどおり農作業しているときにそいつは来た。

 七体の奇妙な鎧を纏った者たちを従えて。

 比較的村の外側にある農場で作業していた俺はそいつらを見つけたとき、やばい、と感覚的に思った。

 俺はすぐさま村の住民に、家に入れ! と警告して回った。

 俺は外からなにか来たときにそれを村の住民に伝える役目を担っていたからだ。

 村長は俺の慌てぶりを見て声をかけてきた。


「フライトよ、なぜそんなに慌てておる。魔物でも来たか?」


 俺はそう言われて立ち止まる。

 だが、心は立ち止まっておらず無意識にその場で足踏みをしていた。

 俺は早口に伝える。


「魔物じゃねぇ! なんか、こう……やばいんだ! 俺の勘が言っている! 早く子供たちを家の中に!」

「落ち着け」


 村長はそう言うと俺の頭に拳骨をかました。

 俺は、イテッ、と小さく言い少しだけ頭が冷えた。

 

「周りを見ろ。やばいと言われても何がやばいのかわからない。詳細に伝えろ」


 俺は周りを見る。

 村の住民全てが俺と村長を囲むようにして集まっていた。

 すでに子供たちも確保してある。

 俺は一旦深呼吸して話しだす。


「人相は良く分からなかったが、俺らと同じ麻の服とズボンを着ていた。だけど、俺らと違って袖が肩からちょっとしかなかったし、ズボンも多分膝より上までしかなかった」

「そんな情報どうでもいい」


 俺は村長に一言で切り捨てられまだ慌てているんだと思った。

 確かに今はそいつの服装なんてどうでもいい。

 俺は伝えるべきことを整理して言う。


「その者は七体の奇妙な鎧を纏った者たちを従えていた」

「従えていた? お前にはそう見えたのか?」

「ああ」


 俺は首肯した。

 あの者は後ろと斜め前に鎧を配置し、自分を守るような陣形をとっていたことからそう思った。

 逆に捕らえられてるとも考えられなくはないが、なんとなくあの者は余裕の雰囲気を出していたことからそれはないと思った。


「とにかく嫌な感じがするんだ。早く家の中に入ってくれ!」


 俺がもう一度そう叫ぶとみんな急いで近くの家に入った。

 俺も近くの家に入り、武装をする。

 武装と言っても入った家にあった棒などを持っただけだ。

 俺たちはそうして息を潜めてあの者が来るのを待った。









「あ~! 宿屋どころか村人一人いねぇじゃねぇか!」


 鎧のがちゃがちゃと言う音以外の音が聞こえた。いや、音じゃなくて声なのだが。

 俺は窓の隅から外を覗く。

 その者は男だった。

 服装は俺が遠くから見たものと同じ。

 髪は肩まではかからないが、結構な長さだった。前髪がやや目にかかっている。

 全体的に細身の体つきをしていた。あんな体つきのやつは農村じゃいないぞ。全員農業で働きづめだから多少なりともいい体つきになるから。

 

 と、男は一つの家の前に立った。

 そしてノックをする。

 確かあの家には一人しか入っていなかった気がする……

 ノックをして男は腕を組んで待っていた。

 そしてほんの数秒後。男は、


「おせぇよ!」


 そう言いながら扉を蹴破った。

 扉の向こうにはメルが立っていた。

 男は低く、脅すような声で喋りかけたところで俺は飛び出した。


「もう我慢できねぇ! こいつを殺るぞ!」


 俺がそう言って窓から飛び出すと他の家からも続々と人が出てきた。 

 被害が出る前に殺やらなければ俺たちが殺られる。

 俺らはそれぞれの武器を手に、そいつに襲いかかった。

 だが、男はなぜか落胆したようにため息をついた。


(なにため息なんてついていやがる。こっちは総勢三十名はいるんだぜ。鎧を着てようがお構いなしだ!)


 そして男がなにかを言うと五体の鎧が俺らに向かって走ってきた。

 俺は真っ先に飛びかかり、手に持った棒を叩きつけた。

 もちろん棒なんかで傷をつけれるはずもない。

 だが、これはこいつの足を止めるのが目的だ。このあと、止まったこいつを押し倒して組み伏せる。その予定だった。

 しかし、鎧は全く速度を落とさず走ってきた。

 そして鎧は俺にビンタを食らわせる。

 俺の意識は脆い糸くずのようにぶつっと切れた。










 バシャッと冷たい水を頭からかけられて俺は目覚めた。

 滴る水を拭おうと手を動かして手が縛られていることに気がついた。周りを見ると村の全員が同じように後ろ手で縛り上げられていた。

 視線を前に移すと胡坐をかいて頬杖をつきながらつまらなそうにしているあの男がいた。

 男は皆の視線が集まったところで頬杖をつきながら喋り始めた。


「なあ、お前らは俺になんの恨みがあって襲い掛かってきたんだ?」

「お前が王国の人間だからだ!」


 一人の村の男が叫んだ。

 それを口火に村人が同じようなことを言い出した。俺もそれに乗っかって騒ぐ。

 男は立ち上がり、最初に叫んだと思われる場所に行くと蹴った。

 人がいてよくわからないが、ぐあ! と声が聞こえたので人が蹴られたんだろう。

 皆押し黙る。

 男はその場で立ったまま俺らを見渡しながら言う。


「王国の人間? 俺は違うぞ。ただの旅人だ。ただの旅人をお前らは襲ったんだぞ?」

「「「………………」」」


 皆叫ぶと蹴られると思ったのか黙っている。

 もちろんこいつが本当に旅人だと思ったわけじゃない。旅人ならなんでこんな辺境の中の更に辺境な地に脚を運ぶ? そういう物好きは聞いたことがない。

 俺らが喋らないことを見て男はまた口を開いた。


「だからそれ相応の対価を要求する。お前らは俺の命を奪おうとした。だからお前らの命をもらうってのもあるが……」


 お前らの命と言われて固唾を呑んだ。

 後ろにいる俺の娘は怖がって俺にぴったりと寄り添っている。

 かくいう俺も命と言われて恐怖した。

 なぜならそう言う男の前髪の隙間から見えた目に光がなかったからだ。

 あそこまで濁った目は見たことがない。

 奴隷に落ちたものがああ言う目をすると言う。

 あの男は殺ると言ったら殺るだろう。

 だけど、男は直接命を要求しなかった。


「この村にある有り金全部よこせ」

「ふざけるな! この村はどこよりも貧しい暮らしをしていて、今の生活だけでもいっぱいいっぱいなんだ!」


 まず、この村は金などほとんどない。

 こんな辺境には行商など来ない。

 そのため硬貨など必要ないのだ。

 たまに魔物が銀貨などを持っていることがあり、それを子供たちにプレゼントするくらいだ。

 だから、この村の有り金と言ったら銀貨数枚くらいしかない。

 となると、この男は村にある食料などを奪っていくだろう。

 そうなったら蓄えのない俺たちは餓死してしまう。

 直接命はとらなくても、間接的に命を奪うのと同じじゃないか。

 俺は思わず叫んでいた。

 男はうんうん頷いている。まさか同情してくれたのか?

 俺はそのとき男の目が濁っていることなどスポーンと抜けていた。あまりの恐怖に頭がよく働かないのだ。

 そして男は口を開いた。


「そんなの知るか」


 俺は唖然とした。

 俺がこんなに懇願しても無理なのか……

 俺は呆然と虚空を見つめていた。

 男がなにかを言って鎧が動いている気がしたが気にならなかった。

 



 しばらく呆然としているとがちゃがちゃと鎧の音が聞こえてきた。

 これは……


「おい、あれはなんだ?」

「……あれは王国の兵士ですじゃ。とうとうここも奴隷狩りに会うようですじゃ……」


 そうこれは俺たちが今まで一番恐れてきたことだった。

 奴隷狩り……国に貢献していない村などを襲い、その村人たちを奴隷化して強制的に国のために働かせる。

 俺たちは絶望した。

 多分この足音からして百ほどはいるだろう。

 そうこうしている間にも足音は次第に大きくなっていく。

 と、ここであの鎧たちが帰ってきた。

 一体の鎧が少しだけ入った袋を差し出す。

 男はそれを受け取り、舌打ちをすると袋を逆さにした。

 銀貨は地面に落ちる。

 男は落ちた銀貨を数える。数え終わると今度は自分の袋も逆さにする。

 大量の銀貨銅貨が出てきて最初の銀貨は埋まる。

 そして男がなにか呪文のようなものを唱えると銀貨銅貨が光り輝く。

 突然の光に目をやられる。くそっ、なんだ?!

 目が回復してきて先ほどの場所を見ると、一体鎧が増えていた。

 空いた口が塞がらず、目を見開いて驚く。

 

「この村は包囲した! 大人しく出てくれば痛い目に合わずに済むぞ! 出てこい!」


 厭らしい笑い声を含んだ王国の兵士が叫んだ。

 もう終わりか……

 先ほどまで驚いていた皆はこの声が聞こえて絶望した。

 空を見上げると黒雲が立ちこめ、俺らの命はもう終わりだと告げているように思った。

 だが、男だけは喜々とした雰囲気を纏っていた。

 俺らは絶望したままことの成り行きを見守っていた。






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