魔力がありすぎて瀕死な俺に魔剣がついてきた。
うう、体が重くて上手く動かせない。
腹周りについた肉が苦しくて、ズボンが今にもはち切れそうだ。
時は夏。
じりじりと照りつける太陽に、汗が滝のように顔を流れ落ちる。タオルで拭いても拭いても止めどがな い。もはや俺の体は、ハンカチで納まるような汗の量じゃないんだぜ。
LLサイズのシャツ、これまたLLサイズのズボン(腹肉が仕舞いきれてない)これでも高校生なんだ が、もはや40過ぎのおっさん体系である。
でもこれは俺のせいじゃねぇ!俺はメシや菓子を貪って、ゴロゴロ昼寝三昧なんてしてないし、むしろ 一汁三菜母さんが俺の体を気遣って三食栄養の偏りがない食生活をしている!
運動だって、ゴメス(犬・メス)の散歩を毎日一時間以上している。
ああ、そんな俺がデブなんて……今まさに体がはち切れそうになっているなんて……
言っとくけど、言葉のあやじゃないからな!今、まさに、体がはじけ飛んで死にそうなんだ!!
怨むぜ、俺の魔力!
誰かぁ~頼む!!いますぐ俺の魔力吸ってくれ~~~~~~~~~~~
俺の住む世界では、魔力というものが普通に存在している。人は魔力を帯びて生れてきて、その魔力 を使って、テレビをみたり、料理をしたり、掃除をしたり、電車が動いたりしている。一昔前は、電力 っていうやつが魔力の代わりをしていたらしいけど、その技術は失われてしまった。その時を境に、人 間は魔力を帯びるようになったらしい。
魔力は生きていくうえで一番大切なんだよな。何をするにしても魔力は必要不可欠だし。たまに、原 因不明で魔力が全くない状態の人間が生まれてくる。ちょっと前までは魔力無しの人間は、国で保護さ れていたけど、そういった人用に魔力電池なるものが発売されてから普通の生活が送れるようになって きたし。よかったよね、魔力無し人間たちは。
俺はその逆で、身の丈に合ってないほど魔力が強力で今にも体が弾けそうなくらいだんですけど!い くら使っても使っても無尽蔵に湧きでてくるこの忌々しい力。魔力電池会社で、魔力補給員としてアル バイトを毎日してたけど、それでも苦しい。体が魔力の膨張に耐えられなくて、俺デブ。更に耐えきれ なくなると、そのまま風船が割れるみたいに、俺は死ぬらしい………嫌だぁ!そんな死に方!この体型 のせいで、彼女だってまだいないのに!!
有り余る魔力のせいで、立ったまま一瞬気絶していたらしい。その姿を、サラリーマン風の超美形天 使が嫌そうな顔をしながら、「ちっ、この醜いブタが」って言ったの聞こえたよ!天使のくせにこえぇ ぇ!!慈愛の心が全く感じられないよ!明らかに具合が悪そうなんだから、介抱しようよ。
俺の住んでいる世界は、魔族とか神族とか獣族とか天使etc…様々な種族が共存している。まだ電力 が存在していたころは、普通に俺達人間しか住んでいなかったらしい。でも魔族戦争の時に、界と界の 堺が薄くなって、互いの世界を行き来できるようになったとか。行き成り魔王が、この世界は今日から 俺様のな!といって、人間を皆殺しにしようとしたんだけど、様々な思惑が絡んで色々な種族がこちら の世界に来て、魔族討伐のパーティーを組んだんだって。歴史の勉強の受け売りだけど。で、なんやか んやで魔王とその眷属の封印に成功!しかし、半分以上の人間と文化が失われてしまい、戦争の後遺症 なのか、それ以降人間は魔力を持つようになったんだと。怨むぜ魔王!
ああもうダメっぽい。この近くに公園があるから、その木陰にいって休まないと俺死ぬ。花壇とは樹 に魔力吸わせよう。最近この付近で、食人花とかが発生してるから気をつけて!ってさっき張り紙見た けどそれって俺のせい?花に魔力あげすぎ??
気が付いたらまたしても気絶していたらしい。今度は、昏倒したようでジメジメとした地面に顔面か らこんにちわしたみたいだ。鼻血が出ている。
それにしても、この鬱蒼とした森?はなんだ?公園にこんなところあったっけ?あれ、もしかして樹 に魔力食わせ過ぎた??重い体を引きずるように起こして周りを見たけど、見覚えがないところだ。は っ、として財布を探す。ある。よかった、デブ狩りにあってその辺にころがされたわけじゃないらしい 。とにかくここに長居するのはまずい気がする。立ち上がろうと、傍にあった手頃な石の塊を支えにし て立ちあがる。この巨体のせいで、立ち上がるのも一苦労なんだよ。と、体重を乗せすぎたのか石が傾 いてしまった。
《人間よ……》
な、なにか聞こえたような?気のせい気のせい!ハハハッ、俺ホラー見すぎだろ。
《人間よ……汝、我と契約し……》
ハハッー。オレハナニモキコエナイヨ。
《己が願いを叶えるか?》
あー聞こえちゃった!今はっきり聞こえちゃった!これ絶対やばいやつだ、と思うのに勝手に願いが 浮かんでしまう。俺の願いなんて、生まれた時から一つしかない。誰か、この魔力を吸ってくれ!
俺今日は気絶デーなのか。気が付いたら家に戻っていた。しかもちゃんと自分の部屋のベットで寝て いた。あの鬱蒼とした森で変な声を聞いた後のことが思い出せない。あれからどうしたんだっけ?俺は どうやって家に帰ってきたんだ?
体を起こそうとして、右手に違和感を覚えた。何か握っているような……そっと布団をめくって確認 してみると、なんと古びた剣を握っていた。中世の絵画で、騎士が持っているような剣だ。は?なぜ剣 が?えっ??俺銃刀法違反?誰も殺してないよな、血、ついてないし。
一瞬でそんなことが頭の中を駆け巡ると、また怪しげな声がどこからともなく聞こえてきた。
《初めましてぇ~ご主人様!》
「は?」
《ここですぅ。アナタの手の中にいる私ですぅ》
めっちゃさっきと違う声。威厳たっぷりの爺さん声だったのに、ロリメイド声になってるし!逆に怪 しいわ!もしかして、この剣か?!
《はいですぅ♪私は~、ご主人様と契約したぁ~、魔剣ですぅ♪》
「は?!いつ契約とやらをした?というか意味分からん!お前はなんだ?」
《ですからぁ~私は魔剣ですぅ!魔族戦争で、魔王様にお仕えしていた魔剣ですぅ!》
なんでもいいけど、こいつのしゃべり方めっちゃウザい!なんでさっきと声が違う?!っていうか俺 が契約しただと?なんで魔王の剣が俺と契約することになるんだ…(泣)
《何で声が違うのかぁ?それはぁ、私が恋する乙女♪だからでぇす!ご主人様ラブ!》
《私はぁ、あの石の下にぃ、封印されていたのですぅ。で、ご主人様に目覚めさせられたっていう か~私って、持つ人の魔力を2倍にすることができるじゃないですか、あ、普通に話しますね。い つの世も私を手にして魔力を倍にしたい野郎ばっかりだったけど、あんたが初めてだったんだよ。 魔力なんていらねーって言ったのは。だから俺はあんたを選んだんだ。》
人間、驚くことがあると逆に冷静になりますよね。ええ。まず魔剣よ、お前はジジイなのかロリなの か、そもそも男なのか女なのか、どうなんだい?って、そうじゃねぇぇぇぇっ!えっなんだって?この 剣と契約した奴は、持ってる魔力が、に、2倍になるだと?!これ以上俺にどうしろと?!今でさえ死 にそうなのに、これ以上とか……(男泣き)
がっくりうなだれて泣く俺を見て魔剣が嬉しそうにする
《そんなに喜んでいただけて光栄ですぅ♪私~初恋なので、何があっても、ぜ~ったい離れません から、覚悟して下さいね!》
魔剣よ、俺は今にも死にそうだよ。
誰か、俺の有り余る魔力を吸ってください!今ならなんとタダ!あなたの街、いや国の魔力を俺が支 えますよ!もしかしたら、世界征服も夢じゃないかも♪
お願いだから魔王でも天使長でもいいから、誰かたすけてくださーーーーーーーーーい!
このあと本当に復活した魔王に魔力を提供したり、通りすがりにブタ野郎と言った天使の彼が天使長 で、彼とも関わっていくことになるとは夢にも思わなかった。




