第十九話
あれから夜、叫び起き上がり頭を振る事は少なくなった。
まだ見なくなったとは言えないけど。
毎日が悪夢だった夜。
それよりはだいぶ楽になったのは確かだった。
『雛家行ってもいい?』
夜が楽になり初めてから数日のこと。
めぐがそう言った。
「いいよ。」
そう返事を返すまでに時間がかかった。
怖いな。
めぐの前で発作起きたらどうしよう。
約束した日まで少し落ち着かなかった。
『やっほー。』
めぐは夕方に雛の家にきた。
いつもの笑顔。
不安だったのが少しだけ安らいだ気がした。
『懐かしいー☆』
めぐは周りをキョロキョロ見回して懐かしそうにしている。
『今日学校は?』
――ドキンッ――
「あっ…。めぐ今何してるの?仕事?」
ははは…
と少し笑いかける。
『話しずらすなぁ!前もそれで聞けてないんだから。』
肩をバシッと叩かれる。
ばれてたか…。
「行ってないよ。行けないんだ。」
『…?』
「私精神病みたい。」
笑っているけど、少し泣きそう。
『精神病?何でそうなったわけ?』
今まであったことすべてを話した。
泣きそうになってもこらえて。
めぐは静かに全部聞き入れてくれた。
「ははは…。私弱いよね。ひくしょ?」
全てを話して沈黙をやぶったのは私。
病気を理解してもらおうなんて思ってないし、言って可哀相と思われたくて言ったわけでもない。
ただめぐには全部言っても大丈夫な気がした。
昔からの付き合い。
どんな友達よりも大好きだったから。
『ひかないよ。それにそうなったからって雛が弱いわけでもないし。』
「私…周りが羨ましいんだ。普通に遊んだり、飲んだりできて。」
『でも遊んだり、飲んだりする事が楽しいことでもないんだよ。そんなんこれからだってできるんだから。今は体治さないと。』
めぐは近くに座り雛の頭を撫でる。
中学の時いつも雛が悩んだりしている時は傍に居てくれた。
泣いても笑っても怒っても。
いつも一緒だったな。
「ありがと。」
めぐはそれ以上は深く聞かなかった。
その日めぐは家に泊まる事になった。
寝る時もお風呂も一緒。
懐かしい。
『雛の横に寝るの久々だなぁー!』
「そうだね。」
めぐの隣は何故だか落ち着く。
二人で昔の話し等をして笑い明かした。
次の日
『また来るね』
と言ってめぐは昼頃に帰っていった。
とても晴々した気持ち。
不安もたくさんだったけど楽しかったと感じたのは久しぶりだった。
「ママ!今日ね…」
母が帰ってきてすぐに小さい子供みたいにめぐの話しをした。
そんな話しをしてるだけで楽しい。
母は『良かったね。』と話しを笑いながら聞いてくれた。




